第22話 蜜柑


それから2週間が経った。

テレビでは外国で大地震があったせいか私の父親のニュースが全然取り上げられなくなった。

まあそれもそうだろう。

時間が経つとはこういう事だ。

ただこの2週間で滅茶苦茶に苦労はした。


何を苦労したかといえば買い物とかだ。

私は困惑の中で外に出らなくてはいけなかったのでそれがとても苦労した。

ストレスで3キロも瘦せてしまった。

だけど何とか撒けた様だし。

私達の勝ちだろう。


因みに隆一達にも付き纏いは無くなったらしい。

2週間という時間が経った。

だけど私は今もまだ学校に行く気にならない。

まあそれはそうだろう。

こんな私だから。


「...」


私は1週間前から外出れないのもあり小説を打ち始めた。

小説はエッセイであり。

公開したりするつもりは無いが。

自己満足で書き殴っている。

私はスマホを見つめる。


「...」


こんな私だがお姉ちゃんは「行かなくて良いよ。無理して学校なんか」と言ってくれてから私を励ます。

しかしこんな形で良いのだろうかと思ってしまうが。

だけどお姉ちゃんに暫し甘える事にした。

本気で行く気にならないのだ。


「私も傲慢だな」


そんな事を言いながら私は窓から外を見る。

すると窓の外に小鳥が止まっているのに気が付いた。

私はその姿を見ながら柔和な顔をする。


それから顔をほころばせた。

そうしていると電話が掛かってきた。

飛び上がってしまう。


「...隆一?」


私は胸に手を添えて気持ちを落ち着かせながらそう呟く。

そして電話に出ると『おう』と声がした。

私は「隆一。どうしたの」と聞いてみると彼は『ああ。大丈夫かなって思って』と話をした。


「...少なくとも死んでは無いよ」

『そりゃ結構だ。...ああ。何が言いたいかといえば実はな。お前のクラス変更がようやっと認められた感じになってな』

「...!...そう...なんだ」

『ああ。...まあでも学校に来るかは本人次第だしな』

「...」

『俺から言えるのは無理はしない事だ』


そう声がする。

私はその言葉に柔和な顔をしながら窓の外の小鳥を見る。

「有難う。隆一」と言う。

すると隆一は『...お前が本当にやりたい時に来な。...俺達は待つよ』と話した。

私は「うん」と言う。


「ねぇ。隆一」

『何だ?』

「貴方は何故私を助けようと思ったの?私が...こんなだから?」

『さあな。お前に微かにだが芽生えた希望を抱いているのかもな。もしかしたら。ただよく分からん』


そう言いながら隆一は肩をすくめる様な反応を示す。

私はその反応をしているな、と考えながら苦笑をしつつ外の寄り添いあっている小鳥を見る。

そして私は立ち上がった。


「隆一。私は貴方を裏切った」

『いきなりどうした?』

「その分、罰は受けるつもり」

『...』

「その筈だった」

『ああ』

「...私は生きる事が最大の罰なのかもね」

『それがどういう意味かは分からん。だがお前はもう十分に罰は受けたと思う』


『だが生きる事で罰を受けている。まさにその通りだと思うぞ。お前はよく頑張っているよ。だけどイジメで死ぬ事は話が別だ』と彼は言う。

私はその言葉に「そうかな」と返事をした。


『あくまでお前はかなりの罰は受けていると思う。今がそうだろ?死ぬなよ』

「まあこれは天罰だって思う事もある。父親の件もね」

『...そうか』

「だけど貴方が皆が私を前向きにしてくれた。だから私はその思いに応えたい」

『そうか』


それから私はスマホを握りしめる。

すると隆一が『お前が頑張っている姿はよく分かる。裏切りもあるかと思ったがそれも無い。お前は頑張っているから偉いよ』と話してきた。

私は指が弛緩した。

そして私は「...そう言ってくれて有難いよ。私」には何もないから」と話した。

隆一は『まあお前がもうそんな事はしないなら人生は良い方向に傾くさ。...だから頑張れ』と言ってくる。


小鳥は相変わらず寄り添ったまま。

私の目の前に居る。

だけどさっきと違って気分が明るくなった。

本当にそれは奇跡の様に感じられた。


「...抗って抗って死ぬよ。私は」

『そうするならそうしてくれ。...全てはお前次第だから』

「...父親の件。本当にごめんなさい。...家族として謝る」

『お前が謝っても仕方が無いだろ。...親父さんは言っちゃ悪いが狂っていたから』

「...貴方が被害者になるって思わなかったから」

『警察も全力で止めてくれた。俺は被害が無いからそんなに心配しなくて良い』


そして隆一は『そろそろ授業が始まりそうだ。電話切る』と言ってくる。

私はその言葉に「有難う。隆一」と言ってから電話を切る。

その暗くなった画面を見てから私は立ち上がる。

それから私は外に出た。

近所を歩いていると...お婆さんがミカンを落として困っているというアニメみたいな事があった。

私は拾っているとお婆さんがそのミカンを1個くれた。


公園に来てからそのミカンを見る。

善意とは...何なのだろうか。

そう思いながら私は深呼吸してから空を見上げる。

善意...か。


深く考えるが...答えは出ない。

それから1分考え。

だけど今が答えなのだろう。

そう思えた気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自分の彼女が寝取られたので俺は失意のどん底に居たのだがそうしているととんでもない事になった アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ