第21話 戦いの狼煙

意外な事だったけど。

よく考えてみたら確かにそんな気配はしたな。

そう思いながら俺は恥じらう春香。

そして柔和な顔をしている雄一を見る。


「で。どうするんだ。お前は。...マジに春香と付き合うのか」

「付き合うかはコイツ次第だな。どう返事をくれるか」

「今は何も応えれないよ!?」

「じゃあ無理だ」

「そうだな」

「ちょっと待って!私が悪いみたいになっているんだけど!」


そんな感じで大慌てになる春香。

俺は苦笑しながらお菓子を持って来る。

すると美里が「あの」と手を挙げた。

それから聞いてくる。


「...いつから知り合いなの?2人は」

「ああ俺と春香?そうだな。赤ちゃんの頃からな」

「まさかそんな奴に告白されるって思わなかったけど」

「そ、そうなんだね」


驚く美里。

俺はその姿を見ながら「コイツらは生まれた時から幼馴染なのさ」と肩を竦める。

それから俺は雄一を見る。

雄一は笑みを浮かべながら「そうだな」と返事をする。


「...生まれた時っていうか宇宙でもう出会っている」

「恥ずかしいっての!!!!!」

「ハハハ。恥ずかしいか?春香」

「当たり前でしょう!!!!!」


そんな感じで言い合う2人。

俺はその姿に苦笑しながらジュースを飲んでいると美里が「良いなぁ」と呟いた。

その言葉に「?」を浮かべながら美里を見る。

そして美里は「...生まれた時からって事は全部知っているって事だよね?羨ましいな。そうやってお互いを知り合っているの」と少しだけ寂しげに言う。

すると雄一が「何を言っているんだ?美里ちゃん。こんなのは愛の重さだ。どれだけ相手を愛しているかによるよ」ととんでもない理屈を述べた。


「アンタ本当に...」

「おっと。俺は加減しないぞ。そこら辺はな」

「...も、もう」


そして生真面目な顔で美里に教えを伝える。

美里は目を丸くしながら話を聞きながらクスクスと笑っていた。

少しは和んだ様だな。

思いながら雄一を見る。


「俺は嘘偽りない本音を述べているから」

「...雄一。もう止めてやってくれ。春香が悶絶している」

「春香が悶絶している?何で?」

「鈍感かな?」


俺は苦笑いを浮かべながらパッキーを食べる雄一を見る。

そして「やれやれ」と言う。

すると春香が「ねえ。雄一」と赤くなりながら話す。

それから「私の何処が好きなの」と静かに聞いた。

雄一は即刻答えた。


「全部」

「そ、そう...」

「俺は...前まで告白されたりしていたけど。全てお前と付き合う為に断った」

「...そ、そうなんだ」

「そもそも春香以外の女に興味はない」

「も、もう良い。分かったから」


そう言いながら真っ赤になる春香。

そんな姿を見ていると電話が掛かってきた。

それは...アイツ。

つまり恵理子だった。

俺は「?」を浮かべて電話に出る。


「もしもし」

『...もしもし。ゴメン』

「お前が何を言いたいかは分かる。...それも覚悟の上で電話してきている事もな」

『...私の父親が迷惑かけたね』

「あくまでお前のせいじゃない。だから思い悩むな」

『だけど...』

「...お前が重々感じているのは分かる。そっから足を引こうってのも分かる。...取り敢えず時間が解決するだろうと思う。こういうの」

『...だと良いけど』


そう言いながら沈黙する恵理子。

するとスマホを取られた。

それは雄一だ。

雄一はそのまま「気にすんな」と言う。


「...お前が何をしたいか。それを明確にして...歩み出したら良い。俺達は応援する」

『...東芝君...』

「...当初は嫌いだったよ。俺。アンタの事。だけど...今は仲間だって思っている。だから俺は考えた。その分...何か出来る事があったら」

『...今は無いよ。...有難う。感謝してる』


恵理子はそう言いながら鼻をすする。

俺はその言葉を聞きながら息を吸い込んで吐いた。

それから「恵理子。耐え時だ」と言った。

「俺達も頑張る。お前も...頑張れ」とも言いながらだ。


『うん。...今今は大丈夫』

「ああ。俺達の事は気にすんな。...何も起こって無い。寧ろそっちは大丈夫か?」

『...嫌がらせを受けている程度かな』

「...ネット民か」

『死ねとか書いてある』

「...どうするかだな」


警察に訴える?

しかし相手はマスコミだぞ。

どうなるのか...分からない...。

嫌なもんだな。

マスコミってのは...ガチに。


「でもそれって脅迫罪だよね?」

『そうなるね。その点は訴えれるかも』

「...弁護士とかの役割か...」


俺は...顎を撫でる。

それから考え込んでから溜息を盛大に吐いた。

どうするかだな...。

俺達だけじゃ無理な気がするし。

先生とか親に頼るか?

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