1章
西日が落ち暗闇が訪れる頃に僕は生まれたらしい。記憶の中にある最初の家族の思い出は温かく幸せなものだった。父・ハミルトンはもの静かではあったが人一倍家族の事を大切に想っているように思えた。息子の誕生日には食事に連れに行ったり不器用ながらに具材が大きな料理を作ってくれた事もあった。妻の誕生日の時には分かりやすく気合が入っているのを子どもながらにおかしさ半分で眺めていた。クッキー1つ焦がしてしまうような父が焦げ目の丁度よい手作りパイを作って妻にプレゼントしたのだ。
「ここまでしなくていいのに」
言葉とは裏腹に両の手のひらを口に当て深く感動しているように見えた。瞳に涙を溜める母をこの時初めて見た。
「…別に。後でせがまれても困るし」
頭を掻きながら遠くを見つめる父の首筋は赤くなっていた。
「全く素直じゃないんだから」
軽くため息を尽き嬉しそうにフォークでパイを食べる母を見て思う。僕にも笑顔にしたい人が現れるだろうか。
陽光にいる 変な元小娘 @pipiyh
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