前世ルーレットの罠

夕日ゆうや

前世ルーレットの罠

「前世ルーレット?」

「ああ。そいつがオレら、現世での運に関わっているらしいぞ。相川あいかわ

「なるほど。それは興味深い論文だ」

 俺は北川きたがわの情報から、論文をネット経由で探す。

 あった。

 確かに前世ルーレットとある。

 しかし、これは罠かもしれない。

 俺たちは魂という精神の塊を、他の肉体に移す技術を確立してきた。

 前世というものは科学で解析されており、一時的に記憶を失うが、魂というソフトウェアを肉体というハードウェアに移植することが可能だ。

 その記憶を失っている間、何が起きているのかは分からなかった。

 だが、その前世ルーレットにより解明されたと言っても過言ではないだろう。

 そのルーレットでその人の運勢が決まる。

 これまたスピリチュアルな話だ。

 いずれにしても、この課題もいつかは科学で解き明かすことになるのだろう。

 それまで、俺たち科学者は死ねないな。


 爆破音が鳴り響き、俺は意識を失う。


『人の子よ。ルーレットを回しなさい』

「これか」

 俺は目の前にある背丈ほどのルーレットを回す。

 神と呼ばれる類いのものに薦められるがまま。

 ルーレットは『3』という数字で止まる。

『人の子よ。産まれなさい』

 俺はそこで記憶を失った。

 前世の記憶と一緒に。


 俺は加藤かとうヒロ。

 科学者でもなんでもない。




 前世ルーレットの結果が出ると記憶を失う。

 まさに罠であった。

 それが今では解明されつつある。


 さすが科学である。

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前世ルーレットの罠 夕日ゆうや @PT03wing

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