家の壁に「死ね!!」と書いた。

明鏡止水

第1話

なんかいっぱいいっぱいになった。


母に、もう買い物は止めなさいと言われた。


メルカリやAmazonなど、通販で届くものがいやらしい。


お金のことと宅配便の荷物が目につくのだろう。

この間渡した十万円じゃ、繕えない家族の歪な心理がそれぞれにある。


我慢できなくて前した時みたいに。

包丁をアイスピックを持つみたいに取っ手を掴んで。


壁にゴリゴリ、突き立てて穴を開ける。

壁は硬いのでいきなり突き刺すと危ない。


本当はガスガス刺したい。


それだけじゃおさまらなかった。


壁にかけられたカレンダーを外してその下の壁にマジックで「死ね!!」と書いた。


どうして「死ね」という言葉を選んだのかはわからない。

母に今すぐ死んで欲しいわけじゃない。


でも「うるさい」でも「ばか!!」でも「帰れ」でもなく、気持ちは「死ね!!」がいちばん、書いたら落ち着いた。よく昔の公園とかである落書きだ。

こんな気持ちで書くのかみんな。


むしゃくしゃではない。

いっぱいいっぱいで苦しくなって書いた。


「死ね!!」の壁紙の落書きはまたカレンダーを下げて隠した……。


メルカリでもう手に入りにくい画集を買ったり、雑誌の付録のみを買ったりしている。

行けなかったイベントのポストカード、小冊子も買っている。


他にも漫画の特装版の特典だけとか。


もう手に入らないからその特典だけで五千円くらいするけども、金額じゃない。

手に入る喜び。


一人暮らしで頑張っている人にはとても嫌な話かもしれない。


追い求めているものの愛おしさ。


金額じゃない。


プラスチックの扇子を買う日もあれば、過去の雑誌企画の応募者全員サービスの品々を手に入れる時もある。


すると、毎日のように荷物が届く。


自分じゃ買い物依存症ではないと思っている。


今欲しいのはとある展示会のフライヤーというチラシみたいなもの。何種類かあるので集めたい。


……父が建ててくれた立派な家の壁に死ね、とマジックで書いてしまった。


追い詰められると包丁で壁を掘る。


明鏡止水は、そんなことをする人です。


人の家は傷つけるのに、自分の部屋の雑貨やグッズを捨てられたり、勝手に物色されたら多分耐えられない。


金額だってちゃんと見てる。

さすがに六万するアクリルスタンドとか八万円のタペストリーとかは買わない。

金額もカード残高もきちんと見ている。


ちゃんと選んで欲しいものを買っている。

「買い物」をやめなさい、という神経が理解できない。

私は好きなものを追い求めていいはずだ。

先日十万円渡したけどまだ我が家は金欠らしい。


そもそも父と弟が遠出するのにお金がないというから昨日。一万円札を父親に渡した。

しかし、私も貯金ゼロ生活を始めたのでお金がない。

お昼代に使うというのでそれなら、と父に福沢諭吉さんをお渡ししたのだ。


しかし、父はどうやらコンビニで弟と自分の分の朝ごはんを買い、残りはチャージしてしまったらしい。


あげるつもりで渡せれば良かったが、こちらは返ってくるなら数千円でも返ってきて欲しかった。


職場で使う衣類を買ったら小銭しか残らなかったからだ。


父は「じゃあ五千円くらいは返す」と言ってくれたけれど。

そのお金は財布の紐を握っている母から父へと流れて私の元へくる……。


「えっ!! (父に一万円)あげなさいよ!!」


と、キレる母。


お金が関わると一気にヒステリックになる。

昔父に苦労させられたから嫌なのだろう。


私だって父に渡したお金はあげたいけれど、金欠だし頼まれたから渡しただけで、そこまで太っ腹じゃない。


もしかして、これからなのではないか。

私が買い物依存症になるのは母の対応にかかっているのではないだろうか。


とにかく、家の壁に「死ね!!」と書いた。


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家の壁に「死ね!!」と書いた。 明鏡止水 @miuraharuma30

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