3話
3話
あれから私たちはしばらくの間談笑を続けていたよ。
「でね、この子が花咲カレンちゃんっていてね、普段はゲームの実況配信をしてるんだけど歌配信もやることもあってねビブラートが上手なの」
家で一人の時は何をしてたのかって話題になって、最近Utubeで見ている配信者のことを二人に話していた。
BARを手伝っていたこともあって基本的に歌配信を聞いている。その中で個人的にうまいなって思った人を男女関係なく登録していて最近ライブ配信も見るようになった。
「へえ~、あなた。この絵動いてますよ」
「ふむ……こういうものもあるんだな」
今二人に紹介しているものはVtuberといって2Dや3Dのアバターを使って配信する人たちのことだ。
今までは手伝いの時間に丁度かぶっていて見たことなかったんだけど結構面白かったから二人にも教えてみることにした。
プロロロロ!!
「私が出てくるね」
そんな中今の世の中スマートフォンが流行って今はかかってくることの少ない固定電話が鳴ったので二人のどっちが動いても私的に問題があるので代わりに出るために席を立った。
「はい。くろ……違った橋野です」
『羽川急便の○○です。お荷物のお知らせなのですが今日の午前で届く予定だったものが経った今入荷いたしましたので……』
この辺の配達の担当をしている私も知っているお兄さんの声だったので少し身体が強張ったけれど相手はお仕事をしてるんだと体に言い聞かせて勤めて冷静にふるまい二人に荷物と時間の確認して返事をする。
「はい。大丈夫です。よろしくお願いします」
『分かりました。それでは明日の18時ごろお届けに参ります。お疲れ様、夢歌ちゃん』
相手もお店の常連で私の事情を知っているのでこちらに気遣って対応してくれたみたい。電話を終えて二人の元に戻ると急に体の力が抜ける。
「そういえば白夜の車の部品を頼んていたんだったな」
「お疲れ様夢歌ちゃん。しっかり受け答え出来ていたわよ」
「うん。面と向かってはまだ無理だけど電話越しなら何とかって感じかな?」
「ふむ……」
「おじいちゃん?」
私とおばあちゃんのやり取りを見て何かを考えこむおじいちゃん。その視線の先には私のスマートフォンに映っているのはさっきと違う動画でVtuberの花咲カレンちゃんが事務所の同期の川崎キュウリちゃんと賢索ググルくん、あとは酢酸カミンくんと一緒にゲームをしている姿だった。
「夢歌よ。これって実際に会って話してるわけじゃないんだよな?」
「う?うん。これは通話アプリで会話してる感じだよ?」
おじいちゃんが突然考え込み少し張り詰めた感じにちょっとしどろもどろになりながらもしっかり聞かれた内容に私は答えた。
「店にまた立ちたいんだよな?」
「もちろん!じゃなきゃこうやっておじいちゃんに協力してもらってないよ?」
「しかし、わしがこれ以上付き合っても成果は得られんだろう?これならいけるんじゃないか?」
お爺ちゃんの指さす先には今も楽しくゲームをしているVtuberのみんながいた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ってことがあったんだけど、お姉ちゃんはどう思う?」
「……いいんじゃないかしら?」
その日の深夜、お店が終わるころにおじいちゃんたちに送ってもらった私は店仕舞いを手伝いながらおじいちゃんに言われたこと……私がVtuberになって接客をしたらどうだという提案をお姉ちゃんに相談したら即座に賛同の声が返ってきた。
「そ、即答だね?」
「電話対応が大丈夫ならオフコラボじゃなければ大丈夫でしょ?それに……やっぱりね事情は分かっていてもお客さんから聞こえてくるのよ。夢ちゃんの声が聴こえないことが寂しいって声がね?」
「え?」
お店の状況を聞いても私を気遣ってか大丈夫としか言ってくれなかったお姉ちゃんが唐突に始めた店の状況説明に驚くも聞き逃さないように聞き耳をとがらせるとお店の雰囲気は少し暗くなったらしい。
理由は単純で、幼いころから娘同然に見てきたこの片割れである私が店に出れなくなったこと。
一見いつもと変わりないようには見えるがお客さんたち(特に常連さんたち)もどこか空回りしているように見えるそうだ。
「それに、私もなんか慣れなくて最近ミスばっかりしちゃうの。しっかりしなきゃって思っているんだけどね?
それに小さいころからボイトレ頑張ってきたのにその歌声をここだけのものにするのは容姿も相まって勿体ないなって常連さんたちと話してたからいいチャンスかもしれないなって」
「お姉ちゃん……」
その後にお姉ちゃんが零してくれた弱音と常連さんたちの本音にどうしようか迷っていた気持ちも消えたよ。
でもね
「決めたよ!私やってみる。お店にも貢献してみるから」
Vtuberになるなら容姿はあんまり関係ないよお姉ちゃん。
こちらはVtuberと楽しめるカラオケBARです @yumeria_akira
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