第2話

「ゆめちゃん。大丈夫かい?無理しなくていいんだよ?」

「うん。せっかくおじいちゃんにも協力してもらってるんだから少しでも成果出したい」

「そう……あなたじゃあお願いしますね?」


 声をかけてくれた妙齢の女性に私は少し緊張した様子で返事をした。

 お日様はもう沈んでいていつもならお店でお客さんの相手をしている時間帯、わたしが今いるのはお姉ちゃんの母型の両親……おじいちゃんとおばあちゃんの家でこの人がおばあちゃんだよ。

 私がお店に立てなくなったとき一人家にいるのはよくないと思ったらしいお姉ちゃんが二人に事情を話しお世話になっている。

 両親が亡くなって私たちの親権を持ってくれた二人は、何かと気を使ってくれて私の言い出した訓練に付き合ってくれているんだ。


「では失礼するな」


 そうして入ってきた厳格そうな男性の声に少し体が強張っちゃったけどおばあちゃんが優しく肩に手を置いて大丈夫と声をかけてくれる。

 入ってきた男性……おじいちゃんは部屋に入ると私の正面の座椅子に腰掛けた。

 そしてしばらくの間そのままの状態で時間が過ぎる。


「……大丈夫みたい」


 深呼吸をして力を抜いた私が発したその声と共に部屋の住人全員の緊張が解けた。


「ゆめちゃん……よく頑張りましたね」

「まだ、おじいちゃんだけだよ?それに声を聞いた時に強張っちゃったし……おばあちゃんがいないと多分無理」

「最初はいると認識しただけでもダメでしたからね。私がいるとはいえ一緒に話せるようになったなら大きな一歩ですよ」

「そうだな。夢歌のせいではないが、わしも今まで可愛がっていた孫と一緒の空間にいることすら出来ないのはきついところがあった。だからこうやって同じ空間にいれるだけでもうれしいぞ」


 そういう二人に少し申し訳ない気持ちになるが、こうしてまた一緒の空間にいれるようになったの私もうれしいので素直に喜んでおこう。

 そうして私たちはそのまましばらく談笑を続けることになった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 両親が亡くなった後周りの力も借りながらカラオケBAR【まどろみ】をお姉ちゃんと二人で維持してきた私は今年の春に晴れて高校生になりその生活を謳歌していた。

 新しい友達もできたし幼いころから行ってきたボイトレを行ってきた成果が出たのか合唱部からの勧誘されたりもしたんだ。

 お店の手伝いがあるからそれについては断ったけど最初は中学でお店に入ろうとしていた私はなんだかんだ言って楽しい高校生活を送っていたけどそれも長くは続かなかったんだ。


 それは夏休みの出校日、普段一緒に帰っている子たちは用事があって一人で帰ることになった時の事。

 いきなり虚ろな目をした男の人がママの名前を呼びながら襲い掛かってきたの。

 抵抗をしたけど前世とは違うこの身体では男を振り払うことが出来ず体を縛られ車に乗せられちゃったんだ。

 男の家に着くと乱暴に家の中につれられて服を引きはがされそうになったところで私を連れ込む様子を回りの住民に目撃されていたらしく家に突入されてあっけなく捕まった。


 その後、現場での私は興奮状態だったらしく婦警さんたちの頑張りで多少落ち着きを取り戻し外に出た時に話を聞いてすっ飛んできたお姉ちゃんたちと合流してようやく落ち着くことが出来たらしい。




 ―――――問題はその後だったんだ。




 もともと男だったこともあって同性の男に襲われるという嫌悪感、そして女として異性居の男に襲われる恐怖心、その二つが同時に襲い掛かって来て少し話を聞こうとした男性警察官が近づいてきただけでも恐慌状態に陥ってしまったらしい。


 その事情徴収を何とか終え2~3日休んだ後、私は店に復帰しようとしたのだけど常連のお客さんが入ってきた瞬間体が勝手に震えだしてしまい呼吸が出来なくなってしまった。

 その様子にお姉ちゃんや女性陣がすぐに気づきその場は事なきを得たんだけど、私は呆然としていた。

 なんせ、つい先日まで一緒に笑いあっていたお店の常連客ですら私にとって恐怖の対象になってしまっていたのだ。

 その後無理にでも店を手伝おうとしたけど同じ症状が起きて失敗、ならば厨房をと思ったけど物を運ぶとき扉が開いたときカラオケの間奏中にマイクで肥大化した合いの手が聞こえてきた時に体がこわばってしまい皿を落としてしまった。

 火を取り扱っている場面でなかったのが幸いだったがこのような状態では到底厨房にもいることは不可能だった。


 そうして店に立つことのできなくなった私は家事やネットで行って時間を潰すしかなくなった。

 次第に知り合いすら恐怖対象に入れてしまう自分に嫌悪感を抱くようになった私は無意識に包丁を見つめていることが増えていった。

 もちろん自傷する気は無いので気づいて首を振る私だったけどある時その様子をお姉ちゃんに見られて思いっきり怒られた。

 その時にやっとお姉ちゃんに心情を話すことが出来て気付いてあげられなくてごめんねって謝られた。

 そうして私はおじいちゃんの家にお世話になることが決まった



◆◆◆


……こういう描写苦手かもしれません

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