第6話魔人と黒猫、酒場にて

 国歌の歌詞を書き終えた魔人、酒場にて、黒猫と酒を酌み交わす


「いやいや、ご主人様、本当にお疲れさまでした」

と言って黒猫、満面の笑みで魔人のコップに自分のコップをチンとした

「黒猫よ、いつもいつも、私のそばでよく働いてくれている、感謝である」

と魔人が言うと、コップをチンと合わせた


魔人と黒猫のテーブルには、モリモリの海鮮や肉やサラダが並んでいる

魔人が黒猫にチキンを皿に取り分けてあげると、黒猫、涙を流す

「ああ、ご主人様、恐れ多いです

私、黒猫、ご主人様のおそばに仕えて、幸せです。ここで一曲」

というと、黒猫、バグパイプを取り出し、美しい曲を奏でる

「ぷぅ~、ぺ~、ぴぴ、ぺぇ~♬」

それを聞くと魔人は満面の笑顔で黒猫に言う

「黒猫よ、まぁ、まずは飲んで食べて、楽しもうではないか」

黒猫、軽く一曲奏でると、チキンをモグモグ、美味しそうに食べる


魔人はエビのサラダを食べつつ、しみじみと今までの自分を回想した

以前は戦乱の世だったこの世界、魔人は人間たちがどうしたら争いを辞めるか、

真剣に考えた

長年生きてきた魔人は、ほとほと武力で物事を解決しようとする人間に愛想を

尽かすところまで行きそうだった


魔人は熟考した。そして、ある結論を得た

「そうだ、詩で人々の心を温かくし、戦乱の世を終わらせるのだ」

魔人は世界中を旅した。その途中で出会ったのが、黒猫である

二人で、戦乱の世を歌い歩いた


いくさとは、虚しいもの


戦いは全てを焼き尽くし、残すものは人々の憎しみだけ


ああ、皆よ、よく聴くがいい


天の嘆き、大地の苦しみの声を


悲しむ者の叫びは、我々の魂を揺さぶるのだ


そう、一度立ち止まって争いをやめるのだ


平和の先にあるのは、生きる希望


闇から逃れるすべは、憎しみから解き放たれることのみ


いづれ敵は味方となり、世界は光につつまれようぞ


こうやって詩的魔人は詩を歌うことによって、人々に希望を与えた

この国の国王はそんな魔人に感動し、列国に平和を呼びかけ、戦乱は終わりを告げた


国王は魔人を宮廷に招待し、そこでのお抱え詩人とした

魔人は人々に詩を贈り届け、魔人は王の絶大なる信頼を勝ち取った


と言っても普段の魔人はな~んもしないで、ぽーっと、詩をつぶやくだけであるが


黒猫、今まで魔人とともに歩んできた道を思い起こし、ちょっとうるっとした

魔人はそんな黒猫にウインクすると、ビールを美味しそうに飲むのだった











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

詩的魔人の優雅な生活 ポンポコ @ad1245ad

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ