0 認知


 2024年、冬。

 妹が誕生日を迎えた。

 

「祝ってくれぇ、彼氏いないのよ、今年の冬ー!」


 そんなわけで少し離れたところで過ごしている私は、実家住まいの妹のもとに行くことにした。


 母と、妹と私、そして兄夫妻が預けにきていた姪っ子。私たちは4人でちょっとお高めのケーキを買って食卓を囲んだ。


 しかし話題は妹の愚痴となる。


「頼りにならねーほんと!」

「まぁ、ソウの束縛癖と噛み合う人って珍しいと思うしね」

「愛なんだけど」

「はは、しかしこんなこともあるんだね。あんた、結構すぐ彼氏作るじゃない」


 妹のソウは、姉の私からしても可愛い路線で顔が整っている。

 また、そのユーモアな性格もあり、正直、可愛がられる。出会いを求めれるとすぐ誰かしらと交際していた。


「結婚を前提に付き合いたいからね、今までとは違うのよ。でも結果、今年こんな寂しいことになってるのよ」


(祝いに来たのになんだその言われよう)


すぐ人の言葉に敏感になる私だったが、一息ついて落ち着いた。


「やっぱ遺伝よー。ダメ男選ぶ人の子はダメンズ選ぶんだってぇ」


 母に向かってめちゃくちゃなことを言い放つ。


(ワンオペさせてる父親アレの事、正論なんだけどもねぇ)


 姪っ子をあやしていた母は、急にくすくす笑い出しソウに言った。


「でも、お金では困ってないでしょ? 長期のスパンで考えたら愛よりも金よ、金」

「楽しく生きていくには愛よ! あとスペック」

父親アレも学力あるけど、結局はこんな感じよ。期待し続けるのは辛いものよ。だからこういう時は──」


 自分を磨くことを放棄してる私にとっては全く遠い内容に唖然とする。


 白熱した会話を展開する2人から姪っ子をそっと抱き上げあやしてみる。

 ぶよぶよな私の体に安心感を得たのか、すぐに熟睡してしまった。


「そういえば、じーちゃんとばーちゃん──ナルさんの方ね、あの人たちはデキ婚だったよね? じーちゃん死ぬまでめっちゃ仲悪かったけど」


 母方の祖父母の話を唐突に振ってみた。

 『愛』で結婚した人たちの一例になるかなーと思っての口出しだった。


 母は横槍を入れる私の悪い癖に顔を歪め、注意をしてからハッと思い出したように言い出した。


「そういえばお母さん──ナルさんの両親。あんたたちのひいばあちゃんも、恋愛結婚だったような」

「ほんと? どんなかんじなの?」

「イケメンだから結婚決めたって言ってた」


 母方の曽祖母は『温厚で上品な人だった』と聞いていたので、かなりびっくりした。


「なかなか、その、すごいね」


 言葉に詰まっているとソウが納得した様子で言葉を言う。


「なるほど、だから私は美しいのか」

「いや、残念ながら私たちは全くその要素ついでないわよ。のっぺりとしてるでしょう? ナルさんの顔立ちが、そうだったのよ」


 ナルさんの顔立ちは、とてもくっきりとした容姿だ。

 祖父のお葬式の時、若い頃の写真を見る機会があったので見てみたが、あの頃の日本人としてはとても珍しいタイプの美人さんだった。


「へぇ、そんなイケメンなんだ、ひいじいちゃん」

「まぁ、売れない旅役者だったらしいから」


 ソウはこの時点で話に興味を無くしたようで、スマホに目を向けてイヤホンで耳を塞いでいた。


 しかし物語好きな私としては、あまり関心を向けたことなかった彼らが気になり始めていた。


「ひいばあちゃん、たしかオヒメって名前やろ? ちょっと詳しく知りたいわ。あと、ひいじいちゃんについても知りたいわ」

「オヒメさんに関してなら、結構パワフルでハイカラさんだったから、人柄もエピソードも話せるけど」

「あら、ひいじいちゃんは結構大人しい人?」


 母は、うーんと唸り声を発しながら水を飲んだ。


「過去も、人柄も、聞いてないのよね。末っ子のナルさん生まれてから結構すぐ亡くなったのよ」


 この情報で、私の中の厨二病センサーが激しく音を鳴らす。


「ほう、名前は?」

「ツキさん」


 今になって新たに聞く曽祖母の人物像と、名前と死期以外何も情報がない曽祖父。


 とても楽しそうなネタだと興奮している最中、過去読んだ作品で、自分の先祖のお話を聞いて回ると言うものがあったなと思い出した。


「ちょっと詳しくいろいろ聞いていい?」


 その日は帰宅しなければならなかったので、後日、情報をもらうことにした。


 まずは、曽祖母の情報をもらったので、次回彼女の(特定されない範囲の)話を掲載していこうと思う。

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