第21話


空を飛んで迷宮暴発の起こった渋谷ダンジョンの近くまで来た涼太。ただ、目視するだけでわかる凄惨な被害に驚嘆の呟きを無意識に漏らしてしまう。


「う、そだ……ろ」


視界に広がるのは100を優に越えたたモンスター達。狼型のモンスターといった動物に近いモンスター達の中に化け物のようなモンスターが混じっている。1体1体が一つの都市を壊してしまいそうな怪物がいるせいで、周辺の建物は崩れ、目をよく凝らせば逃げ遅れた人々の死体がいくつもあった。

あまりの光景に一瞬躊躇して体を止めてしまったが、すぐにモンスターのいるところへと突っ込んでいく。


来る途中に持ってきた涼太の愛用武器である漆黒の手斧を片手に持ち周囲に魔力を放出する。

あまりの魔力の圧迫感に涼太の魔力を浴びたモンスター達が魔力の発生源である涼太の方向を向く。


よし、周囲のモンスターに俺の魔力が届いたなな。なら………!


固有異能 『物質の強制分解』


途端、涼太の魔力に当てられたモンスター達が次々に空気中へ煙のように消えていく。

ただ、有象無象とは違い明らかに化け物だと言えるようなモンスターはなんてことのなさそうに生き残っていた。


『物質の強制分解』とは本来、このような規模の現象を起こすことができる異能ではなかった。なにより、異能は元来授かれるのは一つだけ。希に2つ授かる者もいるがその例は基本的に役に立たない異能が多い。しかし、以前涼太が見せた『調和による運動エネルギーの支配』、総称で『絶対的な運動エネルギーの支配』とさっき見せた『物質の強制分解』は扱い方によって極めて強力な異能となり、言葉で表すなら涼太は特異体質であった。『物質の強制分解』は魔力を含ませたもの限定で異能を直接関与させられるように調整したもので、涼太の他を寄せ付けない圧倒的な魔力技術の性能と、体に含まれる通常S級探索者の何十倍にもなる魔力量によって成立する戦いかたであった。


「さすがにきついなぁ……。それでも有象無象は全て消し去った。……あとは化け物だけか。」


残ったモンスターは3体。涼太は今回の迷宮暴発で発生したモンスターのうち7分の6近いモンスターを固有異能で消し去った。

ただ、残ったモンスターは全てが怪物。

1体はティガスターと呼ばれる、このダンジョンの極めて奥深くに潜む中国の竜のようなモンスター。

1体は今まで確認されたことのない、30m近い身長を持つワニが立っているような姿のモンスター。

最後の1体は、この3体の中でも1番ヤバそうな魔力を漂わせている人型の3mくらいの身長のモンスター。


「3体の内2体は大丈夫だろう……。問題は……あの人型か。」


人型と言っても顔はでこぼことしていて、肌は灰色。人型と区別しても良いのかというモンスターである。


周辺に逃げ遅れた人は……いないか…。

これなら暴れてもある程度は大丈夫そうだろう。


涼太は周辺に人がいないか魔力探知を広げる。周囲の500mの範囲には誰もいないことが確認できた涼太は戦闘態勢に入る。

遠くでS級探索者が消し損なったモンスターと戦っているが大丈夫だろうと安心して目の前の化け物達に強く目を見据え、いつでも斧を振れるように構えを取る。

探知した気配の中にヘリでこちらを撮っているような気配もしたがかなり離れているためこの際放置をする。


「ほら、来いよ。お前達は暴れたくてここまで出てきたんだろう?」


涼太が怪物達に向かって斧を3度振りかぶる。30mは離れているが3体のモンスターは各々でその場から立ち退く。

瞬間、3体がいたであろう場所が地面ごと大きく抉れる。涼太からの遠距離攻撃を避けたワニのようなモンスターはそのまま涼太へ向かって大きく接近する。そのスピードは踏み込んだことにより周囲が地割れを起こすほどであり、一般人であれば確実に捉えられないような速さで迫ってくる3体の中では一番巨大なワニ。

そんなモンスターも涼太からしてみれば、


「まだ遅いな。でっけえ腹ががら空きだぞ。」


ワニが踏み込んだタイミングで同じように踏み込みをし軽く跳んだ涼太は、ワニが来るであろう地点を予測してちょうど来たタイミングでワニ野郎のがら空きのお腹に斧を振る。

この時涼太は特殊な魔力技術や固有異能を使ったわけでもなく、素の身体能力でワニへ攻撃を仕掛けていた。

そのスピードは音速を軽く越えて最早人間とも思えない体捌きに空間から直接音が出たような振動で時間が止まったかのような錯覚が見ていた人を襲う。


涼太はワニが通りすぎたことによりそのまま地面に着地をする。


グチャ


気づけばワニのお腹の部分が綺麗になくなっていた。涼太はその攻撃だけで怪物と思われるモンスターを討ち取ってしまった。

あまりの早業により、涼太が着地してから音がなるという、正に音を置き去りにしたを現実に持ってきた涼太はあっけらかんとした様子でこう呟く。


「おら、かかってこいよ。こちとら精神的にかなり参ってるんだぞ。今倒せなかったら絶体に俺には勝てないぞ。」


圧倒的な実力と余裕により、その場の雰囲気を支配してしまう。身体能力、魔力技術、果てには固有異能まで超高水準で極まっており、誰にも追い付けないほどの強さを持つ涼太は歴代S級探索者の中で世界最強と呼ばれる程の実力を持っており、父親すら大きく越える力を持っていた。



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上級ダンジョンでピンチの美少女を救った結果 赤いねこ @nyansu1234

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