第19話 ダーメ!

「カズヤ、全部打ったのすごいじゃん。」

道具を片付け、バッティングセンターを後にする。


「アイたんこそ、結構当たってたじゃん。やるね。さ、帰ろっか。」


「え、せっかく外に来たんだからもうちょっとデートしていこうよ。いつも家ばっかりだし。カラオケ行こう!カラオケ。」

久々に楽しそうなカズヤを見られた私はご機嫌だった。


「え、いいけど俺、歌わないよ?」


「なんでさ。歌ってよ。いつも湘南乃風とかかけてんじゃん。」


「そういう問題じゃなくて、歌うの恥ずかしいから…」


出たよ。はぁ。



「ねぇ、いつまで恥ずかしがってんの!?全部私に見せて欲しいんですけど。」



カラオケについて受付をする。

もう夜料金だ。

「カズヤ、フリードリンクでいい?」

「アイたん、飲みたければ飲んだら?俺は車あるし飲まないけど付き合うよ。」

「マジで?ありがと。じゃあ遠慮なく。」

私だけ飲んでも、カズヤもアルコール料金になっちゃうのに、なぜかカズヤは嬉しそうだ。



個室に入って早速、飲み物を注文した。

「テキーラサンライズで。」

「おれはメロンソーダで。」


空いていたのか、すぐにドリンクが運ばれてきた。

カズヤと付き合ってから久々の飲み。しかも今日は飲み放題だ。


私はグビグビと一気にお酒を飲み干し、2杯目はコークハイを注文した。


「アイたん、早っ。」

「ふふっ、酔いたい時のテキーラだよん♪カズヤ、チューしよ♪」

グラスを片手にカズヤの肩に手を回す。

「お酒くるよ。カメラ回ってるし。」

「いいからあ〜。」

私はカズヤに顔を近づける。


「あっ、ほらアイたん、曲入ったよ。」

「あっ、ほんとだ!」


私は受付台から借りてきたタンバリンをカズヤに渡し、マイクを手に取った。



『イェイイェイ♪シャナナナナナナ〜⭐︎』



久々のカラオケに久々の飲み放題。

テンションアゲアゲの私を横目に、カズヤはニヤニヤしながら言った。

「アイたん、今日なんでも好きなことしていいってゆったよね?」

「うん、どうぞご自由に。」

私はにっこりした。


「…じゃあ、今日は1日チューもエッチもしない。」


「はあっ!?!?」


「ふふふ…こわい顔。今日は絶対にしてあげないからね。」


「ちょ、待って?え、何で?」


「楽しいから。」

カズヤは相変わらずニヤニヤしている。


「何が!?なんにも楽しくないんですけど。え、まさかそれ決めてて、わざと飲ませたんじゃないでしょうね?」


「さあ、どうでしょう。」

カズヤはクスクスと笑っている。



カクテルが運ばれてきた。

テキーラはちびちびといきたいところだが、飲み放題と聞けばついつい一気飲みしてしまう。



「カズヤぁ。ちゅ〜は?」


「ダーメ。今日はおあずけでーす。」


「なんでなん?意味わからん。いじわる!いいよ、もう。じゃあカズヤも普通に歌ってもらうからね。」



私はカズヤのお気に入りの歌たちを連続で予約した。






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Downer〜アイカとカズヤの前日譚〜 タカナシ トーヤ @takanashi108

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