第50話


 バルネラの素材を使い防具を作ってもらうためにはある程度時間が必要ということだったので、俺はまず一日しっかりと休息を取ることにした。


 それが終わったらとりあえず、イメージトレーニングをしながらどうすれば完勝できるかを考え始めた。


 当然ながら、以前言っていたように裸一貫でバルネラに挑むつもりはない。

 一度戦ってその強さを理解しているからこそ、あれを相手に出来合いの防具で挑もうとなどとは思えなかった。


 完勝……そう、裏守護者に挑戦するには、バルネラ相手に完勝する必要がある。

 知の絶える……つまりは一本目の光の柱が消える前にバルネラを倒すには、相手に何もさせずに勝たなければならない。


 あの光の柱は時間経過で消えていくので、まずはとにかく倒すまでの時間を短縮する必要がある。

 となると光柱やマグマに戻って回復されるのも可能な限り減らさなければならないだろう。 何度か戦って時間感覚を確かめる必要もあるだろうが、恐らく相当タイトな時間管理が必要になるはずだ。


 戦闘時間を少しでも長くするためには、あの水球の乱反射攻撃もなんとかする必要がある。 最低でもあの光線の攻撃を防ぎ、可能であればそもそもあの攻撃自体を阻害して光柱に宿る光を減らさずに済ませてしまいたい。

 そちらの方は、ミーシャがなんとかできるらしい。

 彼女ができると言ったのだ、俺はそれを信じることにしよう。


 ここまでたくさんのことをしようとするとなると、流石に俺とミーシャだけでは手が回りきらない。

 なので俺はスミス工房の伝手を使い、様々な道具を取り揃えることにした。


 ウェステリア工房からも声がかかった。

 面白いことに、俺がバルネラを討伐するほどの人間だから大きく割引までしてくれるようだ。

 まあ、当然ながら断ったがな。

 人の足下見て商売をする人間は、あまり好きではない。


 とりあえず用意してもらったのは、バルネラの動きを阻害するための網や、目くらましをさせるための発光弾などだ。


 最初の真っ向からのぶつかり合いを戦闘とするのなら、これから行うのは狩りだ。

 麻痺や睡眠、毒やマジックアイテム。

 使えるものはなんでも使って、バルネラを圧殺する。


 まず最初にできあがったのは、バルネラの革を使って作った革鎧だった。

 装備が揃った段階で、試作品のアイテムを使いながら二度目の討伐に挑む。


 俺が道具類の用意を済ませている間に、ミーシャはあの水球対策にも無事成功した。

 彼女はバルネラが浮かび上がらせる水球の制御を奪い、それを自身の水魔法にしてバルネラに射出することができるようになったのだ!


 おかげであの乱反射攻撃を使われることなく、その分の時間を稼ぐことができるようになった。


 ちなみに二度目の討伐は、ある程度の時間短縮はできたがやはり五本の柱が消えて凶暴化するところまでいってしまった。


 回復されるととにかくロスになる。

 可能であれば最初の一撃で足を叩き切るか、トリモチでも使って強引にその場に縫い付けてしまいたいところだ。


 二度目のバルネラ討伐が終わった時も、また宴になった。

 この街の人間は、本当に騒ぐのが好きだ。

 この調子だと俺がバルネラを倒しまくっても、その度に騒いでいそうである。

 だがこんな風にちやほやされるのを、悪くないと思う自分もいた。


 戦い以外のことも楽しめるようになったり、圧倒的に勝つための段取りを自分で整えたり……どうやら俺も、少しは丸くなったらしい。


 ちなみにバルネラの素材は使うものとその予備以外は全て売ることにした。

 かなり稀少な素材ということで、オークションが行われるらしい。

 一体いくらになるのか、今から楽しみだ。


 三度目の挑戦では、色々と毒と罠を試してみようか。

 両手で数えられるくらいまでには、光明が見えてくるといいのだが。

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『絶対王者』と呼ばれた男は、冒険者になって無双する~ しんこせい @shinnko

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