第7話 戦いの終わりと解放された英雄

ユウが魔王をうち滅ぼし人類滅亡の危機を乗り越えてから1か月の月日が過ぎた。

魔物たちは魔王が倒されたことでそれぞれの領域へと戻り、時代の魔王を目指して魔物同士で殺しあっているらしい。


魔王討伐者であるユウはその後三日間目を覚ますことなく眠り続け、三日後目を覚ますと早々にルーとルーの家族が用意した婚姻の儀に駆り出されて結婚することとなった。

ユウは最後まで抵抗したが結局二人からの説得に論破できなかったらしい、もともとルーに対して好意的な感情を持っていたし、娘としてであっても愛情は持っていた。


また実際に三代目転生英雄として生きていた時に血のつながった娘と婚姻した経験などがあるユウは悩みに悩んだ末に結婚したのだ。


現在ユウは家族七人で暮らしていた家に彼の妻たちと共に暮らしている。

ユウ自身は王国を出た際家を売却したつもりでいたが、ハルト達が買い戻し使用人たちを雇って家の管理を行っていたのだ。


人魔戦争と後世呼ばれるようになるこの戦争以降、ユウの名前が歴史書に上がることはなく、今代ユウも剣姫シャル、アマゾネスの姫ポル、ルーの三人の妻と幸せな人生を送ったという。


長男のハルトは人魔戦争終了後も騎士団団長として人類の生存領域の拡大に尽力した。

元帝国と共和国があった場所は難民たちに任せ帝国共和国のない北の方角へと遠征し魔物の領域である森を破壊し王国国土を増やした。

増やすだけでなく城壁の拡大も行い、王国の国土は最大となった。

ハルトは王国からその功績を認められ王女と結婚し騎士の一族として長く王国を守り続けて歴史に名を残すこととなる。


長女マナは人魔戦争が終了後、魔術騎士団の団長職を辞すと魔術学園の学園長として後世に多くの魔法使いを生み出して始まりの魔法使いとして歴史に名を遺す。

私生活については弟弟子であるレオと結婚し、家事は弟弟子に生活を任せて魔法を研究する日々を過ごす。


次女ルーはユウと結婚後三人の子供を産み幸せに過ごす。

財務の仕事はユウと結婚した際にやめており、主婦として家を守る。

同じくユウと結婚した、剣姫シャルロットとアマゾネスの姫ポルは家事がさっぱりだった為役割を分担し末永く幸せに過ごす。


そして長きに渡る魔王と人類の戦争は終わり、転生英雄はその役割を終えたのだった。






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悲劇とは常に急に訪れるものだ、魔王を名乗る存在が人類に対して宣戦布告を行い、人類の未踏領域から多くの魔物を引き連れて人類へと攻撃を始めた。


人類は魔法銃と呼ばれる魔術の杖に代わる新しい技術を用いて魔王軍に対して抵抗するが魔法銃では下級の魔物にしか通用せず人間の国はその多くが魔王軍によって破壊された。

大小合わせて10を超えていた人族国家は残り3つまで減り。人口も6割が失われた。

もはや人類に打つ手はないのかと誰もが思ったその時、一人の青年が骨董品の剣を片手に戦場に立ち、魔王軍を打ち払ったのだ。


「諦めるな人類!魔王が表れたなら英雄もまた現れる、転生英雄ユウ、魔王をうち滅ぼす為に再臨した」

それは長い歴史の中で歴史書から消えた・・・・・・・・英雄の名前、魔王をうち滅ぼした人類の救世主の名前、人類は誰も知らなくても人類の守護者たちは決して忘れぬ名前


「ユウ様アマゾネスの一族この日のために力と技、伝承を受け継いでまいりました、どうぞ共に戦わせてくださいませ」


ユウのもとに集い名乗りを上げたのは古い時代に英雄と共に戦い英雄に代わり魔王の封印を見守った一族の娘たちだ。

この時代においては森の奥に住む原住民と侮られていた彼女達だが、彼女たちにとって現代の堕落した人間に何を言われても気にしていなかった、何故なら彼女たちはどれだけ時が立とうとも英雄の事も魔族との戦争も忘れなかった守護者の一族。

いつか再び魔王が復活した時再び戦うためにその為に鍛え続けた戦士の一族だ。


「ユウ様、獣人の一族この時のために牙と爪を研いでまいりました…!」

続けて現れたのは現代において亜人と呼ばれる獣の特徴を持つ一族。

彼等もまたユウが魔王と戦ったとき共に戦い魔王を打倒した後もアマゾネス同様に魔王と戦う為に力を蓄えてきた一族だ。

魔王が復活した今英雄の元に駆け付け共に戦う為に彼らは集ったのだ。


「ああ、君たちは僕のことを覚えているんだね、人の歴史の中では僕はもう名前も存在も残っていなかったから厳しい戦いになると思っていたんだが」


自分の元に来てくれた勝手の仲間の一族にユウは笑みを浮かべる。

人の世は進化した、だがそれは同時に魔王軍に対する侮りとなった。

銃についてもそうだ、魔王軍は事前に銃で倒せる程度の弱い魔物だけを人間の前へと進行させ人間に魔物の強度を現代の人間と変わらないと勘違いさせた。

もしもこれがなければ人類は対魔王軍用のもっと火力のある魔道銃を開発したかもしれないが、そうはさせなかったのだ……


「英雄よ、そんなものではなくこれを使え人は剣や槍を芸術品としてしか作っていないだが我らアマゾネスは今日まで技術を磨き続けてきた、英雄殿が最後に魔王を倒した時代に負けぬと自負しておる!」

アマゾネスの族長が一本の剣を差し出す、決して華美な装飾が施されているわけではないが実用性をとことん追求した剣だった。


「またれよアマゾネスの王よ、ユウ様には我らが宝剣を使っていただく!」

それは魔王軍が表れた北側からではなく南から現れた人族の軍勢からの声だった。

その声に人族の誰かが驚き声を上げる。


「王国軍だ、あの城壁の内にこもり決して他国との交流を行わないというあの王国軍が何故?!」

誰かが説明口調で叫ぶ、王国、それは最も古い時代から存在する国家であり、何重もの城壁に囲まれて外界との接触を拒む大国であった。

噂でしかないが最後に魔王が発生した1000年以上も前から城壁を拡張し鎖国していた国だという。


「転生英雄ユウ様、我ら王国軍ユウ様と共に戦う為にこの1200年魔王軍に備えておりました。どうか我らも共に戦わせてください」

魔法銃ではなく魔剣と魔槍で武装した騎士たちが一斉に膝をつく。


王国軍、獣人、アマゾネス魔王軍が現れる前は決して世界の表舞台に立たなかった者たちが今魔王軍の脅威に立ち向かうために再び表舞台へと姿を現し人類を守るためにその力を合わせるのだ。


「ではいこうか皆、なーに僕達なら勝てるさ」

受け取った王国軍の宝剣とアマゾネスの剣をそれぞれ片手ずつ持ち、天へと掲げる。

今再び魔王は現れ、英雄は再臨し歴史に再び英雄の名が刻まれるのだった……



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これにて完結となります。

全7話と短い話になりますが楽しんでいただけたなら幸いです。

もしよければ感想などで改善点等を教えていただけると嬉しいです。

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托卵英雄と子供たちはマイペース! @kagetusouya

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