銀の月

入江 涼子

第1話

  私は侯爵家の長女もとい、一人娘として生まれた。


 婚約者は一段上である公爵家の息子だ。名前をナハト・ディルクルムという。年齢は私よりも四歳上で二十四歳だ。今日も、私の邸に来てはお茶を共にしている。


「ルーナ、君は表情があまり動かないな。そんな事では公爵夫人としてやっていけないぞ」


「……あなたに言われたくないわ、ナハト様」


「ふん、俺も君と婚約するのはお断りだったんだがな。父がごり押しするから、仕方なく承諾したまでだ」


 売り言葉に買い言葉だ。私はため息をつきたくなるのを堪えた。いつも、顔を合わせたらこんな感じだ。ナハト様は顔こそいいが、性格は傲慢で自己中心的だった。しかも、私のような冷たくて無愛想な女は好みではないらしい。私も、好きでこんなきつい顔立ちで生まれたわけではないが。それでも、面と向かって言われるのはなかなかにきついものだ。


「ナハト様、ちょっと気分が悪くなりました。もう、中に入るわね」


「はっ、どうせ仮病だろ。見てれば分かる」


「あら、私の顔を見るのは嫌なのでは?」


 つい、嫌味を言ってしまった。慌てて、口を噤むが。もう、遅かったみたいだ。


「……ルーナ、言って良い事と悪い事があるのは理解しているよな?」


「え、ええ。理解しているわ」


「なら、俺は帰らせてもらう。貴様のような女といたって腹が立つだけだ!」


 とうとう、ナハト様はガゼボの椅子から荒々しく立ち上がる。そのまま、足音を大きく立てながら、帰ってしまった。私は一人で見送ったのだった。


 翌日、いつもの時間にナハト様は来なかった。やはり、かなり怒らせてしまったらしい。さて、どうしたものか。私はこのまま、婚約解消してしまってもいいかと思った。ナハト様は私に冷たい態度だし。ずっと、今の状態が続くのは真っ平だ。なら、婚約解消してオールドミスとなり、田舎の小さな邸で静かに余生を過ごすか。家庭教師としてやっていくのも有りかな。色々と考えてしまうのだった。


 さらに、翌日もナハト様は来ない。私はとうとう、父に執務室へと呼び出された。傍らには母もいる。二人とも、心配そうな表情だ。


「……ルーナ、ナハト君が来ないが。何かあったのか?」


「はあ、ナハト様とは口論になってしまいまして」


「な、彼と口論だと?」


「ナハト様は私のこの顔が気に入らないようで、それが素で口論になりました」


「ふむ、ルーナの顔がな。まあ、女性にしてはきつい目つきはしているが。だからと言って、わざわざあげへつらうとは」


 父は深くため息をついた。母も驚いたような表情だ。


「……ナハト様は酷い事を言うわね、ルーナに非はないのに」


「まあ、私はもう言われ慣れていますけど」


「あなたは怒ってもいいのよ、さすがに直接言うのはマナーに反するわ」


 母の言葉に確かにとは思う。父も頷く。


「……ルーナ、何なら。お前も二十歳だ、ナハト君とは婚約を解消するか?」


「はい、私もそれについて考えていたところです。解消できるなら、願ったり叶ったりと言えますね」


「旦那様、解消したら。ルーナは傷持ちと言われて、まともな縁談は来なくなりますよ?」


「本人が乗り気になっているんだ、止める事はできまい。仕方ないと思うがな」


「わたくしは心配です」


 何やら、両親が言い合っているが。私は聞き流す事にした。執務室の絨毯に視線を落とした。


 あれから、半月が過ぎた。トントン拍子にナハト様もとい、ディルクルム公爵子息とは婚約解消がなされた。私は晴れて自由の身だ。かなり、嬉しくなったのは言うまでもない。が、新しい婚約者を母が探すと言って息巻いている。私はしばらく、静かに平穏に過ごしたいからと言ってはみたが。聞き入れてはもらえなかった。仕方なく、お見合いに臨んだ。


「ルーナ、今日はお見合いの日よ。気合いを入れないとね!」


「母上、私は独り身も覚悟していました。お見合いは不要だと思いますけど」  


「もう、そんな消極的では駄目よ。ほら、お見合い相手の方も素敵な男性かもしれないしね」


 母は気を取り直すように言った。私は困惑した。そうこうする内に、お見合い相手の子息が来たらしい。家令が知らせにやって来た。


「……奥様、お嬢様。アウローラ公爵様とご子息のイリオス様がお越しになりました」


「そう、わかったわ。今から行きます」


 家令に答えると、母は先にサロンを出た。私も後を追いかけた。


 廊下に出て、速足でエントランスに向かう。サロンは一階にあるから、正直助かるが。エントランスにたどり着くと、既に父も客人を出迎えていた。


「あ、ルーナ。来たのね」


「はい」


 私が母の近くに行くと、男性が二人並んでいる。左側は初老と思しき方で恐らく、アウローラ公爵閣下だろう。右側はまだ若くて私より、二歳くらいは上と思われる。たぶん、ご子息のイリオス様だろうか。黒髪に紫の瞳の美男である元婚約者とは違い、明るい白金の髪に淡い碧の瞳の美男だ。元婚約者であるナハトが月のようなら、イリオス様は太陽のようなと表現できる。


「……こちらがアリアネル侯爵のご息女かね?」


「はい、私の娘で名をルーナと申します」


「初めまして、ルーナ・アリアネルです。以後、お見知り置きを」


 私は腰を落として、カーテシーをした。アウローラ公爵閣下は穏やかに笑いながら、言った。


「ルーナ嬢、頭を上げなさい。王宮でもないしな、楽にしてくれて構わないよ」


「……分かりました、閣下」


「ふむ、侯爵。立ち話も何だから、場所を変えよう」


「そうですね、では。応接室に行きましょう」


「さ、行こう。イリオス」


「分かりました、父上」


 五人で応接室に向かう。私はイリオス様の声を聞いて驚く。低いながらに穏やかな感じだったからだ。ナハトは高めで神経質な感じだったから、余計にだが。それでも足は止めなかった。


 応接室にて、しばらくは親同士で歓談していた。けど、一時間も経たない内に私とイリオス様だけが残される。一気に緊張が高まってしまい、何を言ったらいいのかも分からない。


「……ルーナ嬢、その。外にでも出ませんか?」


「……はい、温室はいかがでしょう」


「あ、いいですね。行きましょうか」


 言葉少なにしながらも、私はイリオス様と応接室を出た。邸の奥にある温室に二人で向かう。イリオス様はゆっくりと歩きながら、話しかけてきた。


「ルーナ嬢、そんなに緊張しなくてもいいですよ。私はあなたと年も変わらないですし」


「はあ」


「あ、私は今年で二十一歳になりますが。ルーナ嬢は私より、一歳下だとは聞きました」


「……確かにそうです」


「……すみません、女性に年齢は訊かないのが常識でしたね」


 イリオス様は眉を八の字に下げた。私は一気に肩の力が抜けるのが分かる。


「いえ、私は気にしていません。むしろ、気を使わせてしまいましたね」


「良かった、そう言ってもらえて。では、ルーナ嬢。温室はこちらでしたか?」


「はい、今の季節だと。春の花が綺麗ですから、それでお誘いしたんです」


 私は笑いながら、イリオス様を温室の一角に案内した。そこには満開に咲いたクレマチスやライラック、ガーベラなどがある。どれも華やかだ。


「へえ、いろんな種類の花々が植えられていますね」


「はい、母が好きで。私も世話を手伝う事があります」


「そうなんですね、私も花を育てていますが。こちら程には華やかさや種類が多くはないかな」


 ポツポツと話しながら、温室を回る。本当に我が家の温室に植えてある植物は結構、巷では有名だとか専属メイドの子が教えてくれたか。その後もイリオス様と二人で花々を眺めながら、歓談した。


 夕方になり、イリオス様はアウローラ公爵閣下と帰って行った。明日も我が家に来ると約束した上でだが。両親は思いの外、距離が縮まった私達を見てホクホク顔だ。


「……ルーナ、イリオス様とはどうだったの?」


「はあ、まずまずだったと思います」


「ふうん、そう。まあ、イリオス様には気に入られたみたいね」


 母は爆弾発言をかました。私は目を開いたが、聞かない振りをする。さっさと自室に引き上げた。


 翌日、イリオス様は約束した通りの時刻にやって来た。だが、父君たる公爵閣下はいない。当たり前ではあるが。


「やあ、来ましたよ。ルーナ嬢」


「ようこそ、イリオス様。よくぞ、いらっしゃいました」


「昨日に約束しましたしね」


 イリオス様はにこやかに笑う。私も自然と、笑顔を浮かべていたらしい。


「……ルーナ嬢、正式に婚約を認めると父上が言っていましたよ。近い内に婚約証書を王宮に提出する予定です」


「はあ、結構急ぎますね」


「私も嫡男ですから、父上は早めに婚姻をしてほしいと言っていますね」


 それもそうかと思う。けど、何故に傷持ちの侯爵令嬢たる私との婚約を受け入れてくれたのか?ふと、そんな考えが頭をもたげる。


「あの、イリオス様。まだ、初対面に近いあなたに訊くのも何ですけど。何故、私との婚約を決めたのですか?」


「……あなたとの婚約ですか?」


「はい、世間で言ったら。私は傷物になります、しかも適齢期を過ぎていますし。あなたなら、もっと条件の良い方との縁談が望めたはずです」


「ルーナ嬢、私は軽い女性不信になっていましてね。今まで、お見合いしてきた女性方は私の肩書きや外見しか見て来なかったんです。しかも、ある女性に至っては勝手に夜這いまでしてきて。それのせいで縁談を断り続けていました」


「……イリオス様」


 私は何かを言おうとしたが、全く出てこない。無言でいるしかなかった。


「ルーナ嬢、また温室に行きましょう。ゆっくりと話したいですし」


「はい」


 私は頷いて、イリオス様と二人で昨日のように温室へ向かう。ゆっくりと歩いたのだった。


 イリオス様はそれ以上、昔の事は話さなかった。ただ、取り留めのない会話を交わす。気を利かせたメイドが紅茶やお菓子を用意してくれた。カウチに座り、テーブルにあるカップに手を伸ばす。ゆっくりと味わいながらも互いに踏み込まないでいた。

 メイドはすぐに退出して、また二人きりになる。


「ルーナ嬢、詳しい事はまた話せる時が来たらしたいと思います。それは約束します」


「分かりました、イリオス様がいいと思った時で構いません」


「ありがとうございます、ルーナ嬢」


 イリオス様は笑いながら言った。それからはお茶を飲みながら、また歓談した。


 ゆっくりと年月は過ぎ、イリオス様と婚約してから半年が経っている。季節は四月から十月になり、秋真っ盛りになっていた。


「ルーナ、もう君と婚約してから半年が過ぎたね。そろそろ、父上からは婚姻をするように言われているんだが」


「え、そうなの?」


「ああ、一応は一年以内に式を挙げろと催促されていたんだ。君に早めに嫁入りしてほしいと言っていて」


 イリオス様はそう言って、気まずそうにする。私は既に彼が十年程前に母君を亡くしているのを知っていた。まあ、女主人が早めに来てくれた方が良いと公爵閣下は思っているらしい。


「それはそうね、分かった。私も式に向けて、母上と相談しないと」


「そうしてくれると有難いよ、アクセサリー類は私から贈らせてくれ」


「ええ、明日にでもドレスの注文を考えるわ」


 二人で今後について、詰めた。気がついたら、夕方になっていた。

 イリオス様はソファーから立ち上がり、帰る旨を告げる。


「ルーナ、私は帰るよ。また、明日だね」


「ええ、気をつけてね」


 そのまま、イリオス様はサロンから出て行こうとした。だが、何故かこちらを振り返る。


「……あの?」


「ルーナ、ちょっとこっちに来て」


「分かったわ」


 頷いて、言われたように彼に近づく。イリオス様はさらに距離を詰めた。肩や背中に腕を彼は回す。軽く抱きしめられて驚きを隠せない。


「え、イリオス様?!」


「ルーナ、私は前の婚約者のナハト殿が許せない。かなり、君にはきつく当たっていたと聞いた」


「聞いたのね、私はその。ナハト様と婚約解消した後は生涯独身も考えていたの。けど、母上には凄く反対されたわ」


「だろうな、もし君が修道院にでも行っていたら。私は好きでもない女性と婚約する羽目になっていたろうな」


「イリオス様、私は……」


「ルーナ、私は今でも不安だ。君が心変わりしないかと冷や冷やしているよ」


 イリオス様はそう言って、腕の力を強めた。私は顔に熱が集まるのが分かったのだった。


 初めて、抱きしめられた日から三日後にイリオス様が大事な話があると手紙を送ってきた。内容はこうだ。


 <ルーナへ


 元気にしているかな?


 今日に、我が邸に来てもらいたいんだ。


 大事な話をしたいからな。


 それでは。


 敬愛するルーナへ


 イリオス・アウローラ>


 私はもしや、半年前に約束した事か?と思い当たる。すぐに、ペンや便せんを用意した。返事を書く。


 <イリオス様へ


 お手紙、読みました。


 昼間の二の刻頃にお伺いします。


 それでは。


 敬愛する婚約者様へ


 ルーナ・アリアネル>


 便せんを折り畳み、封筒に入れた。蝋燭を取り、封筒の裏に垂らす。さらに、指輪の刻印を捺して、封蝋をした。壁際に控えていたメイドのララに預けた。


「すぐに、イリオス様に届けて。お願いね」


「分かりました、お預かりします」


 ララはそう言って、退出した。家令に手渡しに行ったのだった。


 手早く、お化粧やヘアセットを直して馬車に乗り込む。ちなみに、メイドのララも一緒だ。確か、我がアリアネル侯爵邸からアウローラ公爵邸までは三時間程は掛かる。今は朝方の十の刻だから、何とか約束の時間までには間に合うはずだ。そう思っていると、ゆっくりと馬車が走り出したのだった。


 三時間が過ぎてアウローラ公爵邸に着いた。時刻も、昼の一の刻になっている。馬車が停まり、御者が扉を開けたりと準備をした。扉が開かれると先にララが降りた。次に私が手助けされながら、降りる。門前にはイリオス様や家令らしき男性、メイドがいて出迎えてくれた。


「……ようこそ、ルーナ」


「お出迎えをありがとう、イリオス様」


「いや、呼び出したのは私だからな。さ、早く中へ」


 私は頷いて、アウローラ公爵邸に足を踏み入れた。


 早速、イリオス様自身の案内により、応接室に通される。ララは廊下で待機中だ。代わりに、公爵邸のメイドがお茶やお菓子の用意をしてくれた。それが終わると、メイドは退出する。私はなんとはなしにカップを取り、淹れられた紅茶を飲んだ。


「ルーナ、今日はわざわざ来てくれてありがとう。手紙は読んだよね?」


「ええ、確かに読んだわ。手紙には「大事な話がある」と、書いてあったけど。それに関係するものかしら?」


「そうだ、以前にも私が女性不信であった事は話したが。それについて、もっと詳しく説明したいと今になって思うようになってね」


「成程、だから。こちらに私を呼んだのね」


「……ああ、夜這いを無理にしてきた令嬢だが。彼女は私のかつての婚約者であった。名をリリーナと言ってね、とても愛らしい人だったよ」


 イリオス様はそう言って、痛みを堪えるような表情になった。私も居た堪れない気持ちになる。


「リリーナは私に対して、はっきりと好意を伝えてきていた。それは何度もね、けど。私はなかなかその気になれなくて。その内、彼女は私の煮え切らない態度に苛立ったのか。徐々に過激な行動を取るようになった。私に纏わりついたり、抱きついてきたりと。まあ、最初は適当にあしらっていたが。回数を重ねる内にそれも面倒になって、放置するようになった」


「はあ」


「リリーナと婚約してから、一年近くが経ったある日の夜だった。季節は寒い冬で雪が降っていたよ、それは今でも覚えている。私が寝室で休んでいたら、ふと人の気配がして目が覚めた。目を凝らしながら、確認すると。そこには寝間着姿のリリーナが寝室の隅に、佇んでいてね」


 イリオス様はリリーナ嬢に不審に思い、問いかける。「何故、こんな時刻にいるのか?」と。

 リリーナ嬢は涙ぐみながら、「イリオス様と一夜を過ごしたいのです」と切々と訴える。けど、イリオス様は冷たくバッサリと切り捨てた。

 そんなつもりなら、他を当たれと彼は言う。リリーナ嬢は怒り、イリオス様に近づく。けど、その前に彼はベッドから降りてリリーナ嬢を取り押さえた。


「……私はすぐに、家令や騎士を呼び出した。リリーナを地下牢に入れるように命じたんだが。彼女は悪びれる事なく、「イリオス様がはっきりしないのが悪いのよ!」とか言っていた。こうして、私は翌日には彼女と婚約破棄をした。以降は女性不信に陥ってしまったけど」


 長い顛末を聞いて、私は複雑な気持ちになった。イリオス様も口を噤む。彼はカップを取り、紅茶を飲んだ。


「……ルーナ、私は君の事は本当に好ましく思っているんだ。リリーナの一件以来、初めて結婚したいと思えた人だしね」


「……イリオス様」


「長々と悪かったね、もう夕刻だ。送って行くよ」


 イリオス様は立ち上がり、応接室から出ようとする。私は思わず、彼の袖を掴んだ。


「……ルーナ?」


「イリオス様、私は。あの、早めに婚姻式を挙げられないかしら?」


「え、いいのか?」


「うん、はっきりとあなたから気持ちを聞いたし。私も大好きよ、イリオス様」


「……ルーナ」


 イリオス様は感極まったらしく、私の手を取る。左手の薬指に軽くキスをされた。私は顔に熱が集まるのが分かったのだった。


 こうして、一ヶ月後に本当に婚姻式を私とイリオス様は挙げた。両親に義両親、イリオス様の弟君や妹君、親戚などそんなに賓客は多くなかったが。私にはそれで十分だ。賓客は皆、私やイリオス様を祝福してくれた。


 あれから、さらに一年が過ぎた。季節は十一月、初冬になっている。私とイリオス様には待望の子供が生まれていた。元気な男の子で名前をルイと言う。両親も義父母も目に入れても痛くないくらいに可愛がっていた。


「……あう」


「ルイ、今日も寒いわね」


 呼びかけると、ルイはキョトンとした。傍らには夫のイリオス様もいる。


「ルイ、ほら。そろそろ、休む時間だな」


「あー?」


 イリオス様が話し掛けるとルイは不思議そうにした。やはり、まだ生後三ヶ月くらいだし。それでも、首がしっかりとしてきてはいた。イリオス様は慎重にルイを抱き上げると、子供部屋に行った。窓を見やると、北風が強く吹き付ける。私はそれに目を細めた。パチパチとたき火が爆ぜる音にも耳を澄ませたのだった。


 しばらくして、イリオス様が戻ってきた。ルイを寝かせつけてくれたらしい。なかなかに助かる。


「ルーナ、ルイを寝かせてきたよ」


「ありがとう、私達もそろそろ休みましょう」


「そうだな、じゃあ。行こうか」


 イリオス様の言葉に頷いた。私は差し出された手に自身のそれを載せたのだった。


 ――True end――


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