第2話 始まりの日

 高校生活の初日と言って良いのだろうか、数日前に入学式を終えた私は、入学式の日に車で通った道を自転車で進む。春の初めにしては暖かい気温というのか暑い気もしなくはないが春らしくない天気の様に感じるのは自転車を漕いでいるからだろう。

 私の通う高校は県内ではそこそこでかい学校法人グループの付属でいわゆる私立高校というところだ。別に勉強ができなくて泣く泣く私立高校に来たというわけでもやりたい部活があるわけでもなくただ先生に勧められ流されるまま受験した高校だ、そのため受験勉強もろくにしなかったがさすが私立と言えるのか見事合格し、こうして登校をしている。しかし、この高校は登校をする生徒のことを考えて作られているのだろうか、高校へと続く唯一の道は斜度が8%を超えるであろう激坂で電動自転車の恩恵を借りなければ学校へとたどり着くのも一苦労だろう。

 そんなことを考えながら坂の下の信号を渡る。もうすでにここまで来るのに一つ坂を超えている。町外れの高校に進学したのは失敗だっただろうか、こんな日々があと3年続くと考えると気が遠くなる。坂への不満を考えているうちに高校の校門が見えてきた、うちの高校は私立というだけあって金があるのか無駄に校舎が綺麗だ。このこの校舎を目当てに進学してきた奴もいるのだろうか。無駄な事ばかり考えながら校舎へ向かった。


「はあ〜」

 重たいため息を吐きながら決められた椅子に座る。初めての教室というのは慣れないモノだと考えながら周りを見回す。談笑するグループ、机で本を読む男子、今ついたのだろうか荷物を下ろす女子、みんな思い思いに過ごしている。談笑しているグループに関しては中学が一緒だったのかかなり仲が良さそうだ。早めに話せる人を探さないとすぐに輪ができちゃうかなと考えているとチャイムが鳴り先生が入ってきた。

「みんな〜席について〜」

先生の一声で談笑をしていたグループや廊下にいた生徒も席についた。

「このクラスの担任になりました、、、、、、

        、、、、、、、、では以上で1時間目を終わりとします。」

 先生の合図とともに皆動き出す。初日の1時間目だったため簡単な自己紹介と説明で終わった。一人ずつ自己紹介をして行ったがこういうのは何回やってもなれる気がしない、人の前に立ったりするのに抵抗はないが話すのはなんだかこそばゆい、自己紹介がぎこちなくなかっただろうか、、、、。 

 今日はこれから身体測定と簡単な校内案内をかねた部活動紹介がある。私は特に何かをやりたくてこの高校に来たわけではないため適当な部活に入り幽霊部員として3年間を乗り越えようと思いながら先ほどの授業でもらった部活動紹介パンフレットに目をとうしていると奇妙なページが目に入る。

「軽音部?」

ぼそっと声に出す。目にしているページはとても部活動勧誘を目的としている様には見えないまがまがしいデザインだった。勧誘できるかはともかくインパクトは絶大だろうと思っているとふいに声がかけられた。

「あなたも軽音楽部に興味があるの?」

声の方に首を傾けるとそこには独特の雰囲気を纏った女子が立っていた。

「えっ、、、あ、、、」

いきなりのことで言葉に詰まっていると。

「それ、軽音楽部の勧誘のページでしょ?私も入る気なんだー、、、なんかそのポスターは去年の先輩が残したモノらしくて今年は部員がいなくて今年度の新入部員がいないとなくなっちゃうらしいんだよね。」

どこから仕入れたのかわからない詳しすぎる情報に驚きつつ適当に返事をする。

「そうなんだー、私は別に入ろうと思ってるわけじゃないから、、、」

私は頷ききつつ入部を否定する。

「へー、なんだ〜仲間ができると思ったのに〜」

そう言って目の前の女子は残念がった。これが花奏との初めての会話だっただろう。

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