Last episode『この世界が生まれた理由-so five minutes ago-』
「ダメだ、全く書けん」
ある作家が机の前でボヤいていた。その作家は学生時代からノートやキーボードに
アイディアはある、やる気もある、仕事環境だって悪くない、体力作りは日課のランニングのおかげでたっぷりだ。しかし、書けないものは書けないのだ。
「またですか、先生? また書けないとかトンチキな事をしないでくださいよ?」
作家の同居人は、心底迷惑そうな口調で釘を刺した。
これに対し、作家の男は普段ならば気分を害したような
「そうだ、君は世界五分前仮説と言う思考
「え? 何ですか、急に? 世界五分前ナントカってのはそんなに大切な話なんですか?」
「ああ、大いにある。この世界は五分前に、その時点での状態で始まったと言う思考実験だ」
作家の同居人は、作家の男の言う突拍子の無い言葉に困惑の念を示した。
「何ですか、世界が五分前に始まったって……そもそも俺は生まれて五分どころじゃないですし、先生はもっと年上じゃないですか」
「君は他人の話を聞かないな! 世界は五分前、その状態で、始まった。これがこの思考実験のミソなんだ。つまり、
作家の男は同居人をバカにする様に、諭す様に説明した。
「つまり五分前に全てが、記憶とか
「ああ、そうなる。サイエンスフィクションやホラー作品、特にコズミックホラーなんかで度々用いられる手法でもある。新しいルールの基に宇宙を創る電話ボックス……自分を一般人だと思い込んでいる、記憶を伴って生まれて来たクローン人間……全ては邪神が見ている
作家の男の解説に、同居人は感心した様な様相で納得した様子を見せた。
「なるほど、世界五分前ナントカに関しては理解出来ました。それで、それがどうかしたのですか?」
「ああ、ボクはさっき気が付いたんだが、この世界は五分前に生まれた物だ」
* * *
ある作家が机の前で突っ伏してまどろんでいた。
彼は自分が突っ伏して
眠りから醒めた彼が最初に見たのは、何も書かれていない白紙の画面を示すコンピューターだった。
「ボクとした事が、アイディアが出なくて目を閉じて考え事をしているうちに居眠りしてしまったか……だが、お陰で良いアイディアが浮かんで来たぞ」
作家の男は眠っている内に思い浮かんだらしいアイディアで、作品をコンピューターに打ち込み始めた。
まるで現実とは思えない、夢の様な執筆スピードだった。
ほぼノンフィクション作家、気延誉津の探検譚 新渡戸レオノフ @LeoNitobeLeonov
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