最終話 「私に彼氏が出来なかった理由は・・・・・」

まだ頭の整理が自分の気持ちが分からない。

信二君からの想いを、信二君の目に映った私の姿を知ってもなお。

「あ、ああ」

気づいたら不細工な泣き顔を信二君に見せてしまった。

『理想』・・・私の理想は・・・・

「将来の夢はパティシエになることです!」「将来の夢はお姫様になる事です!」

あの頃の私たちは現実を知らない、夢の絵本の中で『理想』を思い描き生きてきた。

でも大きくなって初めて絵本から飛び出した時にみんなこう思う。

「現実は厳しい」と、そして私たちの描いた理想の自分はいつしか消える。

きっと恋愛も同じ、少女漫画に憧れていたあの時代はもう無い、どんなに恋愛に夢や理想を抱こうが、一度『恋』をすれば気づく。

「これが現実だ」という事に。

現実の恋なんて真っ暗だ。

「浮気」「思わせぶり」「別れ」「永遠なんてない」少女漫画で見た理想を微塵もなく砕いてくる。

私はまだ少女漫画の世界にいたのかもしれない。

『現実』を知るのが怖くて、踏み出していなかったのかもしれない。

頭の中のボヤがだんだんと消えていく、酸素をしっかり取り込み信二君の顔が良く映る。

信二君の顔は見たこともないくらいまっすぐだった。

 

「あなたを未知の世界に誘う人が現れます」

そろそろ私は夢から目を覚まさないと。

未知の世界に誘う人それはきっと誰でもない、目の前にいる信二君だ。

『恋』を知らなかった二十一年間。

どれだけ自分を磨いてきても消えなかった『コンプレックス』と今日ここでお別れしよう。

「運命の人」なんて存在しない、そんな甘い言葉は人を不幸にする。

妥協してでも、理想を捨ててでも人は踏み出さないと変われない。

分かっていたのに怖かった現実、もう目を背けたくない。

「信二君?」

「はい」

「私に『恋』を教えてくれる?こんな傲慢で醜い女に」

私はこの日理想を捨てた『恋』をする。

「教えます、ひかるさん」

私は信二君に抱きつく。

そしてキスを交わす。

「私に彼氏が出来なかった理由は・・・・・_

 

 

 

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私に彼氏が出来ない理由 @Waruiji

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