第4話無法都市

  パトカーが何度も往復をしている。どうやらあっちで殺人と強盗と強姦と放火と爆破がいっぺんに起きたらしい。

 さてさて何十人死んだかな?

 その後大きな爆風が俺たちの背中を襲う。少し体が押されて髪かなびく。


  この都市を一言でいうなら”表裏一体"だ。顔を上げないと全体が見えない高層ビルや、一軒家ぐらい大きい落書きだらけのスクリーンがある。

 それだけ見ればとても賑やかな都市だが―――


「金を···金をくれ」

「死ね! ゴミ共が!」


「死ね死ね死ね! 警察共が!!」

「暴徒共が死ね!!」


 ――その反面は、汚れと垢で出来たゴミ溜のようなスラム街が都市の四分の一を占めている。

 そんな希望と絶望で彩られ、欲望と憤怒で盛り付けられた都市がこの別名「廃墟の黄金郷」



「全く、相変わらず謳歌都市は物騒ね。このマールみたいに規律正しく生きられないのかしら? そう思わない? 暁」

「へいへい、そんなこと言うのなら捕縛に協力してこいよ。換金はこっちでやっとくから」

「嫌よ、あんたそのまま持ち逃げするでしょうが。それにあんな犯人殺したって一円にもならないんだから魔法の無駄よ」


  ⋯なんと薄情な! まぁ⋯俺も犯人がこっちに走ってきても見て見ぬふりして換金所に行くんだがね。


 それはそうと、皆さんお待ちかね【教えて! 暁先生】のお時間だ!

 今回は謳歌都市について説明するぞ!


 この日本は今四つの都市で構成されている。


「魔法都市」⋯首都ともいえる。まぁだいたいここにいれば安全だ。蘇生装置もあるし死なせて貰えないぞ!


「謳歌都市」⋯ある意味面白い場所。犯罪や闇組織などが日中バンバン殺しあっている。指名手配もよくここに来るので金を稼ぎたいのならここだな。


「廃材都市」⋯俺も行ったことがないが、この世の終わりの景色らしい。迫害されたエルフや魔族が取り仕切り、こちらとの境界になっている。進入禁止区域だが、どうしても金が欲しい時はここで稼いでいる俺がいる、最初の一文は建前です。


「黄金都市」⋯ここだけはダメ。金持ちの道楽だ。どこに行っても高級香水の匂いしかしない。俺には合わなかった。強盗などもあるらしいが即射殺されるので成功率は低いな。


  以上この四つを持って日本は構成されている。

 今の時代が令和だが⋯一つ前の平成って時代は人殺しがダメだったらしい。今じゃ考えられんな。一日百件殺人がなければ少な! って思えるほどだ。

 まぁその殺されているほぼほぼがエルフや魔族なんだけどね。

 あいつらどれだけ殺しても、増えてるからハッスルしてるんだろうね。精力剤でも飲んでるのかな?


 まぁこちらからしたら金が貰えるから増えて欲しいんだけどさ。


 それに今回が多分超過無しだからな⋯なんの事って? それはまぁ、おっ、そんなこと言ってたら換金所に到着だ。ではGO!


 ◇◇◇◇


「はぁ!!? な⋯⋯なんでよ! そんな事ってないわよ!」


  換金所に入り、マールが死体を換金所に送ったところだが、まぁ俺の予想通りだったか。

 換金所がエルフや魔族を受け入れる理由は主に金持ちの道楽に渡す為だ。剥製やホルマリン漬け、生け捕りなら奴隷としての使役もあるな。

 つまりは原型がなきゃダメ、分かるだろ? マールは氷柱でエルフの体を貫いた⋯つまりは


「なんで三万なのよ! 貫いたのは謝るけど⋯もう少し貰っても」

「マールさんは何度もここで換金をしてくれるお得意様です。なので買い取っているんですよ? 本来なら豚の餌にしかならない死体を誰が引き取りますか? それとも? 学園に通報して欲しいんですか?」

「────ッ、それは⋯」


  見ろ、傑作だ! あんだけ余裕ぶって「換金してくるわ(キラッ)」ってやってた奴が今はもう涙目になっている。

 こんな道楽は他にはあるまいよ。あーおもしれぇ、あの顔が見たかったから換金所に行かしたんだけどな。

 因みに行っとくけど俺はマールのことを気に入っている、嫌よ嫌よも好きのうちって奴だな。


 その時─────


「きゃあ! 何爆発! 換金所でしょここ!」


  いきなり換金所の入口が爆発した。爆発を見た感じ携帯爆弾か? 魔法を使わないなんて古臭いな。つまりこいつらはエルフじゃない、日本人だ。

 久しぶりに見るレジスタンスだな。


「てめぇら! 俺らは日本解放戦線の人間だ! 全員投降してもらう! 人質として使わせてもらう! 大人しく――」


「うるさい! 死ね!!」


  おっと怒りのあまり、マールがレジスタンスを氷漬けにしてしまった。これは怖い。巻き添えを食らう前に俺も行動しますか――


「さてと、行くか!」


  武器はとりあえず、そこに落ちてた拳銃でいいだろ。渋谷じゃ道を歩いていたら、金より拳銃が落ちている。そんな国だ。

  はい、頭を撃ち抜きましょう。足が凍ってるから動かなくて当てやすいよ。せめてもの慈悲で脳幹を撃ち抜き楽に殺してやる。



「て、てめぇ! こんな事をして! 日本人の誇りはねぇのか!」


  うーん誇りね? そもそも時代が時代だからな。平和な時代があったなんて信じられないけど、それでも――


「⋯無いですね。時代がもっていっちゃいました」



 俺は回し蹴りでリーダーを地面にたたきつけてから、拳銃で頭を撃ち抜く。

 リーダーとやらの目は死んでいる。それにしても時代遅れだな。倫理観がない? そりゃ褒め言葉だ。街の人を見るとわかる。


「いやー、最近のレジスタンスにしては、迫力があったな。久しぶりに殺されるかと思ったよ!」

「ほんとよね。死ぬ時って痛いけど、それでしか味わえない気持ちがあるから私もたまに、自殺しちゃうの! 癖になるわよ!」


  神様がこれを見たら、どう思うのか? 泣き喚くか頭を抱えるか。まぁなんにせよこれが現状だ。そして――


「警察だ! 魔法都市生徒のマールとクスノキ! 貴様らを殺人の容疑で"処刑"する! 撃ち方よーい!!」


  勢いよく来た警察は俺とマールに向けて銃口を向ける。

 嫌だなー死ぬのは。まぁ明日には復活できるが、それでも死ぬのは嫌だ。だって銃弾が当たると痛いし。


  因みにさっきのレジスタンスは犯罪者なので、明日刑務所で復活する。

 まぁいわゆる喧嘩両成敗って奴だな。マールも抵抗して無いし。


「さてと、散々な一日だったわ。明日また会いましょう。じゃあさよなら暁」


  そう言ってマールの体には大量の銃弾がうちつける。この銃弾は特別製なので、たとえ魔法で防御しようと簡単に貫通するだろう。


 身体中が蜂の巣になったマールは何も言わずそのまま地面に倒れた。


「次! 撃ち方よーい!」


  次は俺ですか。そういえば明日映画に行きたいなと思ってたな。いつからだっけ――あっちょ、まだ考えてあばばばば!!!


  こうして俺達の一日が終わった。生まれてから未だに謎なのだが、"この生活が悪くない"と思っている俺がいる事に、いつか分かる日が来るのだろうか?

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滅ぶ世界での3種族クインテット物語 @yuno1109

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