第8話 驚愕の真実


 しかし、事態は、急激に変わっていく。



 それは、髪の毛がボサボサで、身なりも見るからに貧しそうな25歳ぐらいの女性が、大阪府警の交番に、相談しに来た事から、この事件は、大きく動き始めたのだ。



 その若い女性は、いわいるシングル・マザーで、自分と2歳前後の子供を抱えていたため、仕事にも満足に行けず、シングル・マザー故か、実家にも相談できず、自殺の名所とされる、大阪港の港の当たりをウロウロしていたところ、と、ある中年の男性に声をかけられた事がキッカケだったと言うのだ。



 その男は言った。



「お母さん、二人で、ここに、飛び込み自殺するつもりでしょうが、そのお子さんは、この私らが、責任をもって預かります。ここに、現金10万円もあります。別に、10万円で、その子を売ってくれとは、言いません。要は、こちら側で面倒を見ると言っているのですよ」



 そう言って、その男性は、名刺を出した。



 名刺には、「NPO法人 この世から子供達を救う会 代表:太田裕二」とあった。現金10万円は大金だし、この子が一時的にいなくなれば、仕事にも行けるのである。で、ついついその子供を、その男に預けたと言う。



 それから、2日後、例の「万博記念公園」の白骨事件があった。



 最初は、まさかその事件と、自分の預けた子供が関係があるとは、露にも思わなかったらしいのだが、日を追う毎に、何故か胸騒ぎがし、ついにそのNPO法人に、我が子の安否確認の電話をしたのだが、何と、その電話番号は、「現在、使われていません」と言われ、初めて、ビックリして、交番に駆け込んだと言うのだ。



 で、大阪府警の中でも捜査一課は幼児の年齢や身長が「万博記念公園」で発見された幼児の人骨に似ているため、念のため、のDNA鑑定と、交番に駆け込んだ女性とのDNA鑑定をしたところ、見事(?)に、一致。



 ここで、急激に、事態は、動き出したのだ。



 しかも、何と、その港には、こには、防犯カメラがほとんど無かった。彼女の証言のみでの犯人象だが、これがまた、実に、非常に難解だったのだ……。



 何故なら、その女性は、若干知能が低く、詳しい事はほとんど覚えていないと言うのである。また、相手の男は、マスク・サングラス・帽子等をかぶっていたし、身長がどのぐらいかも、全く、証言出来なかったのだ。



 で、例の名刺であるが、極普通に市販されている名刺ソフトと名刺カード、プリンターも有名なE社製であった。



 もっと悪い事に、名刺から指紋が検出されなかった事だ。



 これは、極簡単なやり方があって、木製ボンドを、指紋のあるところに塗り込んで、渇くと、指紋は消えてしまうのである。



 あるいは、手袋をしてたかであるが、それも、当該女性は、全く覚えていないのだから、捜査のしようが無いではないか?



 これでは、モンタージュ写真も何も一切作れない無い。



 一体、この男性は、誰なのか?



 ここが、最大の問題だ!!!



 しかし、私には、フト、ある男性が思い浮かんだ。……それは、決して、あってはならない人物なのだが、よくよく、考えてみると、一番、この私の事を知っている人物なのだ。



 この私が、小説を書いている事も知っているし、私のペンネーム「立花 優」も知っているし、下手な小説を、「カクヨム」に投稿している事も知っている。この私の全てを知っている人物なのだ。



 だが、最大の問題は、もしその人物が、真犯人だとすると、その動機は、一体、何なのか?



 遺産相続か?確かに、私の父親の実家は、この長男の私と母親が引き続き住んでいるが、それに該当する相当金額を、遺産分割協議の時に、上乗せして分けているのだ。



 では、骨董品の相続か?これにしても、本物もあれば贋作もあるらしいが、私ら素人には見分けが付かないので、約30品ほどある骨董品は、くじ引きで平等に分けた筈だ。こんな事を言ったら、亡き父に申し訳ないのだが、私の目から見ても、高額な本物の骨董品は、ほとんど、無かったように思える。



 しかし、私が、唯一、懸念した事がある。



 その人物、つまり私の次の下の弟には、高校時代、精神的におかしくなり、通院歴がある事だ。



 この次男のみが、高卒で、大学も出ていない。現在は、大阪に住んで、中小企業か何かで事務員だったか、営業員だったかをしていると聞いてはいるが、当然、結婚もしていない。……つまり、どちらかと言えば、変人に近いのである。いや、ハッキリ言えば変人そのものだ。



 私は、かって次男が通院していた医者に、直接、会いに行ってみる事にした。果たして、カルテは残っていなかったが、その医者は、次男の事を覚えていて、



「ハッキリとした事は言えませんが、敢えて言えば、境界型人格障害ではないかと思っていました」と、証言したのだ。



 そのような病名で、あのような異常な事件を起こす事は、普通は、あり得無い筈だ。



 私は、自分の推理を、三男の甥っ子に言ってみた。



 すると、何と、あのインチキ動画を作った甥っ子も、全く、同じ事を考えていたと言う。二人の意見が完全に一致したのだ。私は、年賀状でやり取りしている住所から、次男の住所を、甥っ子に教えた。そこで、何らかの証拠が見つかれば、これは、自分の家族に犯罪者が出る事になってしまうが、そうも言ってられないだろう。



 甥っ子は、即、行動を開始。



 この甥っ子は、自分だとバレないように変装し、私の次男が住んでいるとされる借家の車庫に、足を、踏み入れたと言う。



 そこで、甥っ子が見た物とは、正に、完全なる証拠物品だった。刃物と、大きな鍋と、小型のガスボンベ式のコンロであった。



 甥っ子は、その内の大きな鍋の底に残っていた肉片らしきものを、ピンセットでつまみ出し、ラップで厳重に包み込み、大阪府警に持ち込んだ。



 さて、ここで、この話は、終わらせてもらう事にしよう。これから起きる事は、皆さんの想像の通りであるからだ。



 ただ一言、間違い無く、「万博記念公園」での人骨のDNAと一緒だった事だけは、ここに記しておきたい。



 そして、最大の問題のその動機なのだが、小さい時から、学校の成績や学歴(私は大卒)において、この私に、異常な程の敵意を持っていたと言うのだが、私個人的には、やはり精神的に、どこかに狂っていたのであろう……と、そう考えているのだ。             


                   了

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