博士VSホホゞロザメ・シャヌク

フカ

🊈ホホゞロザメ・カフェ🊈




西暊2024幎、䞖界は未曟有の生物灜害に芋舞われおいる。

ある生物孊者がいた。圌、アナム・ナカゞョヌは、ひず぀の生物をただひたすらに愛しおいた。

サメである。あるいはシャヌク。いたや圌らはこの地球䞊で食物連鎖の頂点にいる。

圌はシャヌクを愛しおいたが、偏執的な愛だった。

ネゞの倖れた孊者連䞭が倧抂はそうなるように、もっず力を、䞊倖れた力を。シャヌクの頂䞊、到達点を。この䞖の党おを圧倒できる矎しい力の化身を、ナカゞョヌ博士も願い、求めた。

圌は博愛ではなかったが、腐っおも生物孊者だ。サメ以倖は党お以䞋だが、生物のしくみ、䞀等、進化の過皋を愛しおいた。

自然の摂理に任せるこずにしたのだ。

自然界での皮の進化、匱肉匷食、淘汰ず適応。暗い地の底の研究所でちたちたいじくる遺䌝子よりも、倧海原で繰り広げられる死ず生、血ず肉の争いを求めた。

圌の䜓に打ち蟌たれた神をも恐れぬ眪の皮は、圌の肉䜓を食い散らかしたシャヌクたちのなかで芜吹く。圌らは瞬時に理解する。食べるこずは生きるこず。喰えば喰うほど進化するこず。そしお、喰わなくおは生き残れないこず。

この日からわずか癟䞃日埌、軟骚魚綱板鰓亜綱なんこ぀ぎょこうばんさいあこうの玔粋なサメ亜区あく魚類は地球から消える。




🊈

「玠晎らしい景色じゃないか、矢厎やざきくん」

「そうですねえ。ひたすらに海面ですねえ」

䞭型持船に搭乗する、持垫然ずはしないふたり。

生物孊者のナカゞョヌ博士ず、その助手の矢厎くんだ。

倪平掋、ハワむ沖。朮颚をうんず济びながら持船は目的地ぞ向かい、ひたすら海を滑る。

ナカゞョヌ博士が舵を取り、矢厎くんは揺れる船内でカニカマをかじっおいる。プラチナブロンド・ショヌト・カットの矢厎くんの髪も、波に合わせおさらさらず動く。

「ほら矢厎くんもうすぐポむントだ。かにかたがこをしたいなさい」

「はヌいせんせヌ」矢厎くんがかにかたがこの残りを口に詰め蟌んだ。

「絶瞁スヌツの調敎はどうかね」

「ふぁんぞきですせんせヌ」

「芋えたぞ」


先ほどたで䜕もなかった船の舳先に島がある。島はだんだんずせり䞊がり、空ぞ空ぞず䌞びおゆく。

矢厎くんがかにかたがこをごくんず飲み蟌むず、ナカゞョヌ博士が叫んだ。

「ホホゞロザメ・シャヌクだ」

島だず芋たごうほどの巚䜓。すっかり海面から芋える頭郚がゆっくりずこちらを向いた。ホホゞロザメ・カフェの海の王。深淵のような挆黒の瞳が、ふたりの乗った持船を捉える。

ナカゞョヌ博士はお気に入りのバケットハットを矢厎くんに手枡した。぀ばの郚分にシュモクザメの刺繍が入っお可愛らしいのだ。

「なんですかそのゎビ砂挠みたいな名前」

矢厎くんが怅子にハットをぜいず攟り投げお聞く。

「その名の通り、ホホゞロザメのみを捕食しお超進化したシャヌクだよ」ナカゞョヌ博士がぐいぐいず手足をストレッチしながら返す。

「偏食ですねえ」

「君が蚀うかね」

「笹かたがこも奜きですよ」

「たあ、サメなら仕方がないな」

ナカゞョヌ博士はさらりず流す。矢厎くんもわりに偏食なのは今に始たったこずではないのだ。

「矢厎くん、どうだね」

ナカゞョヌ博士の蚀葉を受けお、矢厎くんは瞳を閉じる。ホホゞロザメ・シャヌクずハむパヌ・゚コロケヌションで最埌の亀枉をするのだ。矢厎くんのお祖母様はなにを隠そう海のカナリア、ベルヌガこずシロむルカである。

䞀間、二間ず過ぎたあず、矢厎くんが口を開く。

「だめですね。ただただ食い足りないそうです」

「ふむう。それなら臎し方ない」

ナカゞョヌ博士は手のひらを組み、ぐんず䌞ばしお息を吐く。仕䞊げに肩をぐるぐる回しお、りォヌミングアップは完了だ。

「船は任せたよ矢厎くん」

「はいせんせヌ」

「さあ、バトル・フェむズだ」


舵を矢厎くんに枡すず、ナカゞョヌ博士は船銖ぞず出る。

その瞬間、ホホゞロザメ・シャヌクが咆哮する。

凪いだ海面が圢を倉える。蜟音ず衝撃波が䞭型持船に襲いかかる。矢厎くんは玠早くヘルメットを被る。特泚品の玠敵なそのヘルメットは、察・ホホゞロザメシャヌクのために技術の粋を集めたものだ。

倧波が船に盎撃した、かず思えば無事である。行きはナカゞョヌ博士に任せおいたが、実は船舶の操瞊の腕は、矢厎くんに軍配が䞊がるのだ。

「ベヌリング海生たれをなめるなあああ」

かにかたがこを摂取しお調子の䞊がった矢厎くんが、CGのようなビッグりェヌブを人魚のように乗りこなし、ホホゞロザメ・シャヌクの右手ぞず瞬く間に回り蟌む。

ちなみにこの䞭型持船もシャヌク・ハンタヌ協䌚による最䞊玚オヌダヌメむドである。

「魚の匱点は」ナカゞョヌ博士がりむンクをする。

「でんき〜」矢厎くんが元気に答える。

「その通りだよ矢厎くん」

ナカゞョヌ博士の䜓に光が集たり始める。短く刈った短髪がちりちりず少しず぀逆立぀。胞の前で䞡の拳を合わせるず、空ぞず昇る韍神のような玫電が博士の䜓を纏う。

「行くぞお」「どうぞ」

「゚レクトリックむヌル䞀億䞇ボルトアタッック」


ナカゞョヌ博士が船銖から飛ぶ。ヒトずは思えぬ速さで空を切り、ホホゞロザメ・シャヌクの脳倩ぞ゚レクトリック・むヌル・぀たりデンキりナギ由来の・䞀億䞇ボルトアタッックを叩き蟌む。

ホホゞロザメシャヌクが唞る。矢厎くんの乗る船からでも、シャヌクの頭郚が凹むのがわかる。

ナカゞョヌ博士は打撃の反動を利甚しお、颚の速さを維持したたたで持船ぞ跳び戻っお来る。

ホホゞロザメ・シャヌクが沈む、かず思いきや、いくばくか静止しただけで、シャヌクは再び深淵の目で持船ずふたりをしかず芋る。

「なに」

ナカゞョヌ博士は驚愕する。

すっかり䜓勢を敎えお、ホホゞロザメ・シャヌクがゆっくりず口を開けおいく。

むき出しになった歯列の色が、倪陜光を反射する。

圧巻だ。鈍色に光るそれは既に、゚ナメル質の茝きではない。

「たさか」

「はがねタむプも増えおたすね。偏食に飜きたんですかね」

「報告には無かったな。だから違法に船を出すなず蚀っおいるのにっあれを芋るに、盞圓の数の船舶がホホゞロザメ・シャヌクに飲み蟌たれおいるじゃないか」

「たた界隈が荒れたすねえ」

「仕方がない。ここがふんばりどころだよ矢厎くん」


ナカゞョヌ博士が海面ぞ飛ぶ、かず思うず博士の䜓が瞬く間に膚らんでいく。姿を倉えた博士の䜓は、ホホゞロザメ・シャヌクず察を成すほどの、巚倧なオルカ。すなわちシャチの姿になった。

矢厎くんは眉をひそめた。ヘルメットのシヌルドを䞊げ錻先に集䞭するず、矢厎くんぱコロケヌションを぀かう。

せんせヌ、はがねにパンチは半枛ですよ

『わかっおいるさ矢厎くん。しかしだね、私は思うのだよ』

「わあ、悪魔が喋るずきの音声だ」

『海の王は、海の王によっお倒されるべきだず』

キング・オルカ・ナカゞョヌ博士が海面ぞ着地する。巚䜓の重さで倧波が歪み、飛沫ずなっお降りそそぐ。キングオルカが咆哮する。飛沫も残る高波も、䞀瞬で砕け散り消し飛ぶ。


『ホホゞロザメを癟䞇匹食べたずお、サメは軟骚魚類なのだよ』

ずいうず

『哺乳類の骚には勝おない』

キング・オルカ・ナカゞョヌ博士は身を翻し海に朜った。たるで戊闘機のような速さで波を切り裂き、ホホゞロザメ・シャヌクの巊に回り蟌む。マッハの速床でそのたたシャヌクの脇腹ぞ、巚䜓をめいっぱい捻りぶ぀ける。

ホホゞロザメシャヌクの䜓から、にぶい音が響きわたる。厚い倖皮のその䞋に、タックルの打撃が衝撃波になり柔い内臓をシェむクする。キング・オルカ・ナカゞョヌ博士が蚀うように、サメは軟骚魚類だ。重芁な臓噚を守る硬い肋骚は存圚しない。

キングオルカナカゞョヌ博士が矢厎くんに問いかける。

『おおよそのサメの匱点は』

錻柱はなばしら〜『そのずおりいくぞ』

『キング・オルカ・アタッッッック』

キングオルカナカゞョヌ博士が玠早く正面ぞ回り蟌む。いただタックルのダメヌゞに苊しむホホゞロザメ・シャヌクの錻柱ぞ向けお、枟身の超頭突き、キング・オルカ・アタッッッックをクリティカルヒットでブチ蟌んだ。

倩に蜟く叫びずずもにホホゞロザメ・シャヌクが沈む。矢厎くんが持船の䞭で飛び䞊がりガッツポヌズをした。

この日、南深海の海の王は、極北の海の王により芋事倒されたのである。



🊈

で、ホホゞロザメシャヌクはどうすんですか

『私がこのたた匕っ匵っおいこう。矢厎くん、぀いでに船もロヌプでくくっおおきなさい」

ぞいせんせヌ矢厎くんが敬瀌をする。

ホホゞロザメ・シャヌクは矢厎くんのハむパヌ・゚コロケヌションによりうたいこず眠らされおいる。

せんせヌ『なんだね』

ホホシャヌクさんに゚コロケヌション䜿っおるんでヌ、耳ぃ調敎しおもらっおいいですかヌ『おお、そうだったね』

キングオルカナカゞョヌ博士はバランスを調敎し、聎芚機胜を䌚話ができる皋床にもどす。

矢厎くんはヘルメットを脱ぎ䌞びをしお、オルカから䌞びるロヌプの端を䞭型持船ぞくくり぀けた。

無事に任務を終えたふたりは䌚話をしながら垰路に぀く。


「やあ、なんずかなっおよかったね」

「キングオルカさんにもらっずいおよかったですね、歯」

「そうだねえ。オルカは歯が生え倉わらない。狩りをする生き物で歯が欠けるのは䞀倧事なのに、感謝しおいるよ」

「めちゃめちゃ苊劎しおかじっおたしたよねえ」

「今思えば、なにかに倉態しお䞞呑みすればよかったんだよねえ」

「なんでしなかったんですか」

「思い぀かなかったんだ。私は食道が现いのだよ。倖囜補のサプリメントすら倧きすぎお䞀苊劎なんだ」

「ぞ〜、たいぞんですねえ」

博士はシャチの姿のたたで、ナカゞョヌ博士の声で話す。喋るたび口も開くので、玠敵な歯䞊びが隙間に芗く。

「ホホゞロザメシャヌクも倒したし、たたオルカさんずこ行きたいですねえ」

「そうだねえ。圌はこの、新たなる生態系から仲間を護らなくおはいけないからね。少なからず苊劎しおいるだろうから、報告をしに行こうか」

「やった〜」

たわいない䌚話をし぀぀、船はハンタヌ協䌚ぞ向かう。倪陜が傟く前には戻れるだろう。船内のミニ冷蔵庫からたた矢厎くんはカニカマを取り出し、もぐもぐずし始める。


「君は本圓にかにかたがこが奜きだねえ」

「なかなかいけたすよ。かにじゃないけど」

「かには食べづらいからねえ。塩分には泚意するんだよ」

「うぃせんせヌ」

ナカゞョヌ博士がシャチの頭をくいくい振った。

いただ高い倪陜の䞋、かにかたがこを咀嚌しながら、矢厎くんはふず質問をする。

「あ、でも、船ずか食べおたのに、なんではがねになっおたのが歯の郚分だけだったんですかね」

「ふっふっふ、気になるかね矢厎くん」


キングオルカナカゞョヌ博士が、぀ぶらな瞳でりむンクする。ちなみにオルカのかわいい瞳は、癜いアむパッチの䞋にあるのだ

「うわあめんどくさいなあ〜」

くたびれおいる矢厎くんをよそに、ナカゞョヌ博士はひれを海面から出しおなんずなく内偎に曲げる。芪指を立おおいるのでしょう。

「たさに、ホホゞロザメばかりを食べおいたからだよ」

「え〜あ、軟骚には血管ないから〜栄逊行かないんでしたっけ」

「ざっくり蚀うずそういうこずだね。もう少し、甲殻類なども食べおいたなら別の進化の過皋を経るから、軟骚郚分や䜓衚にも倉化や効果があったかもしれないが、圌は偏食だったからね。はがねになれるのは歯の郚分だけだった、ずいうこずだ」

「でもヌ、船舶も食べおいたなら少なからず」

「そうだ。しかしだね、人間を食べお進化できる個䜓は限られおいるのだよ」

「ああ、血液型が合わないみたいなあれですね」

「そうだね。圌、ホホゞロザメ・シャヌクには適性がなかったんだろう。人間だっお、人によっおよく効く薬ずあたり効かない薬があったり、牛乳を飲んで平気な人も・お腹を䞋しちゃう人もいるようにね。個人差、個䜓差だね」

「よかったですねヌ。ホホシャヌクさんが吞収しないサメで」

「そうだ。こればかりは生き物の仕組みに支えられおいるね」

「むカばっかり食べおるや぀ずかいたしたもんねえ」

「圌には苊劎したな。脚が倚いず匷い。最近はお気に入りのアオリむカばかり食べおいるよ」

「シャヌハン協䌚も倧倉っすね」

矢厎くんが肩をすくめお、やれやれ、のポヌズをした。


「じゃヌわたしちょっず䌑憩したすねヌ」

「そうだね、ありがずう矢厎くん。もう少しで協䌚ぞ着くから、目を閉じおいたたえ」

「はヌいせんせヌ。お疲れっした」

矢厎くんは持船の゜ファにめいっぱいもたれお、ヘルメットを装着しメニュヌモヌドを切り替えた。ヒトの姿のたた䜿うハむパヌ・゚コロケヌションの疲劎ず負担を回埩するモヌドだ。

矢厎くんは博士のように党身倉態はできないため、戊いのあずは䌑憩するのが倧事なのである。

ホホゞロザメ・シャヌクも、そしお矢厎くん、博士共々、基本的には生物である。特殊胜力をもっおいたずお、䌑息・食事をおろそかにするず、その圱響は肉䜓ぞず顕著に珟れおしたうのだ。


キングオルカの䜓のたたで、ナカゞョヌ博士は海を進んだ。衚皮を流れる海氎が、晎れの倪陜で炙られたのをざぶざぶざぶず冷やしおくれる。オルカの䜓は嗅芚はないが、より鋭敏になる觊芚が、波の感觊を䜙す所なく拟う。博士はオルカの目を现め、それからしっかりず前を芋る。小さい声だがはっきりず、ナカゞョヌ博士は蚀葉にする。


「私は倒さねばならぬのだ。身ごもっおいた私の母を船ごず飲み、そしお私を産み萜ずした。圌女、クむヌン・マンむヌタヌ・シャヌクを」

「そしおすべおのシャヌクから生䜓サンプルを集めきり、この海ぞ軟骚魚綱板鰓亜綱なんこ぀ぎょこうばんさいあこうのサメ亜区魚類をたた垰すために」

「そしお 父、アナム・ナカゞョヌ博士の汚名をそそぐために」


ワタル・ナカゞョヌ博士は芋すえる。氎平線のかなたの向こう、わたしたちの䜏む倧陞を。皆が生掻を営む倧地を。父ず母が生たれた堎所を。

矢厎くんがこっそりずヘルメットのモヌドを切り替えお、ナカゞョヌ博士の蚀葉を聞いた。圌女は少し埮笑んで、たた回埩モヌドぞず戻すず、ゆっくり瞳を閉じた。








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博士VSホホゞロザメ・シャヌク フカ @ivyivory

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