竜(ドラゴン)


 生態系の頂点に位置する生き物はなにか? その答えは簡単である。この世界に生きる誰しもが知っている、その生き物とは、……竜(ドラゴン)。

 竜族こそ、この世界の主人であり、この世界の支配者たる偉大な種族なのだ。


 博物館の展示案内に書いてある説明文より


「……すごい」

「……うん。すごいね」

 むーとくーは(ほかのほとんどの子供たちと同じように)ぽかんとした顔をして、大きく目と口をあけて、頑張って顔を上に向けながら、大きな竜の化石を見つめていた。

 竜の化石はほぼ完全な形をたもっているようにみえた。(かけている部分はほとんどないように思えた。すごい)竜の化石はいわゆる西洋風の竜ではなくて、東洋風の竜(体が長い)の形をしていた。すべての竜が東洋風なのか、あるいはまだ見つかっていないだけで、西洋風の竜の化石もどこかに(きっと西洋だとおもうけど)埋まっているのかもしれない。(あるいは僕たちが知らないだけで、もっとたくさんの種類の竜が生きていた時代が大昔にはあったのかもしれない)

 もっと時間をかけてゆっくりと竜の化石を見たかった(形や匂いや雰囲気などを覚えたかった)のだけど、ものすごい人の数のなかで、立ち止まって竜の化石を見続けるわけにはいかなかった。

 結局、二時間ならんで竜の化石を見ることができた時間は十分くらいが限界だった。でもすごく満足した。(きてよかったと思った)

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