竜の化石

雨世界

1 僕たちは友達だよね。

 竜の化石


 僕たちは友達だよね。


 どうしたの? 大丈夫?


 幻想上の生き物であるはずの伝説の竜の化石が日本の東北地方にある山奥で見つかったのは、去年の夏のことだった。それは世界史上に置いても、もっとも重要で偉大な発見であり、その竜の化石が偽物ではなく、(今までのいろんな伝説上の生き物が偽物であったように、その竜の化石も偽物であるという人はたくさんいた)本物であるということが正式に発表されると、世界はあっという間にその『竜』の話題で持ちきりになった。

 その本物の竜の化石は一年の研究のあとで、たくさんの要望により、東京にある国立博物館に展示物として展示されることになった。(もちろん、研究をしながらだけど、本物の竜の化石を見たいという人たちの要望があまりにも強かったので、一年という短期間で展示されることになったのだ)

 その日も、国立博物館には長蛇の列ができていた。(まるで世界中で有名なテーマパークの人気のアトラクションの列に並んでいるみたいだった)

 国立博物館の周囲にはその観客をターゲットにしていろんな移動式のお店が出ていたし、(まるで夏の日のお祭りのようだった)小学五年生の男の子むーも家族と一緒に列に並んでいる間、そのお店の一つであるわたあめを買って食べた。

「竜の化石、見るの楽しみだね」

 むーの隣でむーと一緒に買ったりんご飴を美味しそうに食べているむーと同じ都立見晴らし小学校に通っている小さいころからの友達の小学校五年生の女の子くーがむーにいった。

「うん。すごく楽しみ」

 にっこりと笑ってむーはいった。

 むーはこの日を本当に楽しみにしていた。

 恐竜が大好きで、古代の時代が大好きで、将来は考古学者になりたいという夢をひっそりと隠し持っていたむーは、竜の化石が見つかって、しかもそれが本物であると正式に国から発表されると(むーもたくさんの人たちと同じように、その化石は話題作りのためか、お金儲けのための偽物だと思っていた)むーは本当に、その竜の化石に(あるいは竜という生き物に)熱中した。

 夜眠るときも、いつも竜の夢を見た。

 その夢の中でむーは大きな竜と友達になって、その竜の背中に乗って、よく青色の空の中を飛んでいた。

 それは本当にわくわくするような、(まるで恐竜の姿を図鑑で初めて見たときのように)本当に楽しい夢だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る