第3話 逃げたかったのに逃げられません。
俺こと東望先はいわゆる叩き上げである。
…カッコつけました。
高卒警察官です。
だけど最速で巡査長になったからな(ドヤ顔)。
大卒は2年でなるが俺も2年でなりました!
警察学校出てからいきなり地域課でパトカー運転して、違反切符切りまくって一目置かれた…無免許とか飲酒運転とか薬物使用運転とか声掛けしたらほぼ100%犯罪者だった件。
真面目にやり過ぎた俺は有給フルに使って休んだ。
馬鹿正直に休めば閑職に回されるはず…だいたいいきなり繰越分まで使う新人はいなかったので当時の上司は苛立ったくらいだ。
そしたら休み明け早々、人事異動でテロ対策本部に勤務させられた。
あれこれテキトーに意見した。
気づけば本部長に特任されて階級試験に合格。
アラサーよりかなり手前で機動隊分隊長になってしまった。
早く警部補になって無線指示出ししてー(良さげな椅子にふんぞりかえって)、そんな時期もありました(笑)。
だが突然の本庁の警備部、新人警部様にヘッドハンティングされ( ; ; )有無を言わさずに特務の特撰業務に着かされました。
巡査部長がいきなりのペーペー扱い…内勤扱いのはずが当然の如く外回りアンド潜伏捜査。
そんな指示を出した上司が現在隣にいる。
「東、貴様まさか私と一緒なのが不服か?」
「…めっそーもごさいません。感服の至りです」
「何の間だ?しかも言葉選びがおかしいぞ」
関西に向かう新幹線の車内でワンカップ片手に俺を睨む課長…もとい特務官。
亜麻色の髪を無造作にポニーテールにしながらも色気のある頸と上着を脱いだノースリーブの肩口はほのかに赤く…吐息代わりのゲップが台無しにする。
ベッコウ柄の伊達メガネからでも分かる鋭い視線にドキドキしながら俺は声を上げた。
「特務官、新幹線に乗って秒でワンカップ呑み干すの辞めてくれませんか?」
しかもすでに三杯目である…駆けつけ三杯は俺に対するアルハラですか?
「呑まずにはいられんのだ。なんだ?酔った私に何を期待してるのだ?」
だいぶ話が飛ぶな。なんの期待をさせたいんだよ。
もう酔ったのか?
「もう酔いましたか。後ろに誰も居ないのでシートを倒しましょう、そうしましょう」
暗に早く寝ろ、と俺は行動に移す。
だがしかし、俺の手はガシリと掴まれてしまった…何その握力、スゲェ痛いんですけど。
「何のために三人座れるシートを二人で抑えたのだ。我は膝枕を所望じゃ」
どこの殿様だ?しかも普通膝枕って男性が女性に求めたりするイベントじゃね?肘掛け上げんなや。横なるの早すぎ。太ももサワサワすんなや、くすぐったい。
すやすや…
「寝るの早くね?」
サワサワしてきた手を握ったら安心したかのように静かになってしまった。
あと二時間で目的である駅に到着する。
すでに不安しかない。
逃げることだって正義だった 火猫 @kiraralove
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