第2話 逃げ切りました(現実逃避)

「これは…何かな?」

「?えっ?退職願ですが?」

「…却下で」

「パワハラッッッッ!?」


俺はあれから無事に現場と言う地獄から逃避出来たのだった!奇跡的に!


んで、警視庁公安部の警備部に駆け込んだ。

スマホで打ち込んだ退職願をコンビニのプリンターで出してATMの封筒に丁寧に織り込んで封入した。


ひゅー、良い仕事した。

便利な世の中だよね。


…だが、その努力は無碍に却下されてしまった。


間違いなくパワハラ案件である。

やっぱり退職届で出した方が良かったか?


「ちなみに退職届は上司が認可した書類でしか出せないからな?」

…俺の心が読まれた?

読心スキルかよっ?!


「ちなみに読心術は使っていない、そもそも…そんな能力無いからな」

「嘘だっ!スキルでなければ超能力…うぎゃっ!」

「黙れ」

俺は脳天に衝撃を受けた…チョップである。

体罰は何ハラ?


「混乱するなよ。ちなみに暴力はパワハラな」

「なんで心を読むんですかっ!」

「いや、顔に出てるからな」


顔に出てる…頬やオデコに字でも浮かび上がってるんだろうか?

「顔に書いてあるわけないだろが。まぁいい、とにかく辞職はさせないからな」

「ええっ?なんでですか?俺使えない部下ですよ!」

「いや、自分から使えないって言う奴初めてだわ。って違う違う。それよりも報告が先だろ」


あれ?話を擦り違えられた?

「報告はメールでしましたが」

さっきのコンビニでついでに書類も起こして退職願と一緒に出したけど。


「お前な、報告書類は社外秘扱いなんだからコンビニのプリンターに残すなよ」

「ちゃんとデータは消しましたよ。ビープ音が出てバイトの子を困らせちゃったけど」


セキュリティ音を事前に消すの忘れて言い訳が大変だったのは内緒だ。


「ホント無駄に能力高いのってはた迷惑だな。そんなことより神⚪︎川県警の裏どりは取れたようだな。よくやった。…個人データに性癖や浮気相手の情報まで要らないだが」

「全部裏どりしろって言ったの課長ですよ。なんならネット動画のサルベージもしてますよ?」

「要らんわっ!そんな事よりも派遣の斡旋元は警察本部長も関わっていたのは…三人か。二度目の不祥事だな。はぁ…」

「ドンマイ課長。監察官よりマシですから!」


慰めにもならないが、マジで課長には階級を上げてもらって…俺を首にしてほしい。

「首にはしないからな。それと次の仕事も決まってるぞ」

「えェェェェェェッッッッ」

「うるさいッッッッ!…次は大⚪︎府警の生活安全課な。私も特務官として同日配属するからな、よろしく頼むぞ」

「…喉渇いたので売店行ってきます」


とりあえず逃げ出した…警友会の売店だけど。



…さよなら、ニート志望な俺。

警視正が見張についちゃいました。


「…逃さんぞっ…次で堕とす」

閉じかけた扉の向こうから不安な声がした。


ヒヤリと背中が冷たくなった。



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