逃げることだって正義だった
火猫
第1話 とりあえず逃げます
ピロン♪
「…ちっ、またかよ」
舌打ちをしながらもメールの内容を熟読する。
「馬鹿なんか?コイツら、ニュースぐらい見ろよな」
メールの内容は、金持ちの一軒家を3人ずつのグループで襲撃すると言うガバガバな指示だった。
つい先日、神⚪︎川でやらかした事案と似たような内容でつい言葉が漏れる。
「指示役が馬鹿だと派遣バイトがグダる典型的なパターンだな」
神⚪︎川県警は馬鹿の集まりだが、国家権力下では無類のチカラを発揮する組織である(笑)。
神⚪︎川でヤラカシタ連中はトリプルブッキングと言うアホなパターンで一斉検挙された…主に他県の県警による手柄であるが。
仮にAと言うグループが居るとしよう。
Aは犯罪組織では一二を争う優秀なグループであった。
だがしかし、Bと言うグループが偶々同じ派遣会社の資料からAと同じ資産家に目をつけた。
もちろん双方に繋がりはまったく無い。
無いからこそ、まさか同じ日にその資産家宅に襲撃を重ねる事になるとは思いもよらず。
トドメだったのは、Cと言う半グレ集団の介入であり…八人のクズ供が徒党を組んで徒歩で現地に現れた。
元々その介入の兆しはあった、のだが。
神⚪︎川の刑事部では「馬鹿が集まって騒いでるだけ」と言う謎の見解でスルー。
代わりに別件で越境捜査していた千⚪︎県警の刑事が半グレ集団を尾行しており。
その場で指名手配されていた半グレの一人が取り押さえられて現場はパニック。
公安が内偵調査していた神⚪︎川総務課が事前に千⚪︎県警からの報告を受け、機動捜査隊を警視庁捜査三課からの指示で動員。
一挙に捕縛された事件であった。
結果オーライである。
刑事ドラマばりの設定で解決したその事案は内々で処理されて一部情報だけがマスコミにリークされた。
馬鹿正直に報道したマスコミはその後の警視庁公安部の口止めを聞かずに暴走。
半グレ集団のとばっちりを受けてその後の報道が管制された。
だからほんの一部しか知らない内容である。
「ん?なんか騒がしいな」
明け方未明の時間帯にドヤドヤした声が聞こえる。
当然朝の散歩をする現地人には異様な雰囲気だったろう。
なんせ犯罪者(予備軍含む)があちこちから集まって来たのだから。
俺はと言うと…目的の資産家宅の手前の交差点まで来ていた。
「こら、騒ぐな。…散歩サボれば良かった」
キャンキャン騒ぐ犬を叱る現地人。
すれ違った人の独り言をスルーしながらスマホを確認する。
現場監督と言う立場の俺はいつでもトンズラ出来る位置で指示役に連絡する。
アホな指示役はうむうむと人の話を流し聞き、ゴーサインを出した。
俺はダッシュで現場から立ち去る。
巻き込まれたく無いからだ。
何故か?
俺は公安部特務課のおとり捜査官だからだ。
「逃げるんだよー!」
なんか楽しくなってきた。
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