19世紀半ば(5)アカデミーの歴史家——ミニエ、オーザンヌ

 フランソワ=オーギュスト・ミニエのキャリアが『シャルル七世への賛辞』から始まったことはすでに書いた。


▼19世紀初頭(1)ミニエの熱烈な『賛辞』

https://kakuyomu.jp/works/16818093075033117831/episodes/16818093075158609834



 20年以上を経て、ミニエは新たにな視点から「シャルル七世の治世がもたらした結果」について驚くべき評価をしている。


 1843年、五大アカデミーのひとつ、フランス人文院(道徳政治科学アカデミー、Académie des sciences morales et politiques)で発表した、『フランスにおける領土形成と政治(Formation territoriale et politique de la France)』に関する回顧録から引用する。




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 イングランドとの戦争(英仏百年戦争)第二期において、シャルル七世は第一期で祖父シャルル五世と同じ役割を果たした……。


 シャルル七世はその手腕と軍事的成功によって、アジャンクールの惨敗と、それ以上に悲惨な結果をもたらしたトロワ条約を修復した。


 彼はイングランドに奪われた王国を再征服し、「イングランド王によるフランス征服」か、「フランス王によるイングランドの大陸追放か」という、過去300年近く繰り広げられてきた領土問題に終止符を打ったのである……。


 シャルル七世時代の王政は、ブルゴーニュ派とイングランド派が試みた二重の反抗(政治的・領土的な意味を含む)を克服し、国家体制を強化しなければならなかった。


 実際、シャルル七世は、聖王ルイが創設した司法秩序を発展させ、14世紀に創設した財政制度を完成させた。恒久的な人頭タイユ税の制度化によって、フランス王政の優位は決定的なものとなった。


 そして最後に、新たな王政にふさわしい軍事組織(常備軍)が誕生し、これまでの封建的な軍事組織に取って代わった。

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 1846年、アカデミーの学長や大学の学務総監などを勤めたジョルジュ・オーザンヌが全二巻の概説書を出版した。彼の評価もまた無視できない。




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 1422年当時、無思慮で無頓着、王国から追放され、国家的な法律から拒絶され、すべての資源を奪われ、町から町へと放浪し、心を奮い立たせるようなものは何もなく、愛想の良さと単純な善意しか持ち合わせていない、この19歳の王に何ができるだろうかと、誰が考えたであろうか……。


 彼は、武力によって父祖の王位を回復し、民衆の愛によって王位を守り、英知によってフランスの悪を修復し、これまでの優れた制度を統合し、これからの改良を準備することによって、現代と中世を結びつけた。39年統治した後、キリスト教国でもっとも強力な君主制を息子に遺すだろう……!


 長い間、若くて無頓着で、自分の仕事でも他人の仕事でもないこの大衆的なムーブメントに惑わされていたシャルル七世は、やがてその動きを感じ取り、それに加わり、みずから指揮を執るようになった。


 その後、彼は偉大な王になった。天意に選ばれた者、大地に選ばれた者であり、自分の使命に立ち向かい、その果たし方を知っていた。


 私生活では欠点もあった。大衆向けの伝説が、シャルル七世の記憶とアニエス・ソレルの名前を結びつけてしまったのは残念なことだ……。


 一部の歴史家の思い込みに基づいて、シャルル七世が突然優れた人物になったきっかけを特定しないように注意しよう。同じく、アニエス・ソレルの言葉からこの奇跡が生まれたと信じさせるようなロマンティックな伝説を受け入れないように。


 なぜなら、国家の統治者を導く教訓は、さらに遠くからやってくる。

 彼らを鼓舞する声は、さらに高いところから降りてくるのだから。

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(※)ジャンヌ・ダルクが「大天使の」に導かれていた話は有名ですが、シャルル七世もまた「何らかの」を聞いていた……という話をたまに見かけます。

真相はともかく、二人とも、他人には理解されない能力持ちだったと解釈するのもおもしろいですね!



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