18世紀(2)ヴィラレ神父の『フランス史』

 ベリー大修道院長の後継者であるヴィラレ神父による『フランス史(Histoire de France)』が一時期よく読まれたが、17世紀のダニエル神父ほどの批評的センスは持ち合わせていなかった。


(ダニエル神父の科学的研究に基づくシャルル七世評:https://kakuyomu.jp/works/16818093075033117831/episodes/16818093075062864021


 1765年に出版された復刻版の16巻に、シャルル七世についての記述がある。



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 シャルル七世については、常人より長生きしたと言えるかもしれない……。


 逆境の中で、絶え間ない戦いを強いられ、敵からも家族からも迫害を受け、ほとんど常に反論され、もっとも残酷で絶望的な極限状態にしばしば追い込まれ、障害を克服してもまた新たな障害に遭遇し、剣を突きつけて初めて成功を収める。


 このような苦悩に満ちた職務が、シャルル七世の運命だった。


 長い失脚、数々の戦い、血なまぐさい勝利、統治という困難な仕事、職務に神経質な君主にとって計り知れない重荷だ。不滅の栄光を背負いながら、多くの困難と危険がシャルルの人生の泉(活力)を使い果たしてしまった。


 控えるべき快楽(plaisirs)への過度な嗜好が、彼の人生を終わらせた。

 歴史の真実が隠すことを許さないこの欠点は、おそらくこの偉大な王子を非難できる唯一の汚点だろう。特にその治世の最後の年は、はばかることなく享楽に耽った。


 シャルル七世は、王の仕事における苦悩・重圧と、一時的な情熱の酩酊を行き来することで、つねに容赦なく彼をむしばむ悲しみから逃れられると想像した。

 しかし、この「つかの間の錯覚」は、悲しみをいっそう引き立たせるだけだった。


 シャルル七世は不幸を克服して、祖先の玉座を強化し、王政を復活させ、民衆を幸福にした。彼は臣民の中に、心からの感謝の念を抱いた大勢の子供たちしか見ていなかった。

 ここに誇張はない、フランスは彼を崇拝している……。


 私たちは、シャルル七世の偉大な資質である「勇敢さ」に価値を見出していない。歴代国王の中で勇敢だと思える者はあまりいない。戦士にはめったに見られないことだが、シャルル七世は流血が日常茶飯事でも残忍ではなかった……。


 彼は高慢を克服する術を心得ており、フランスでは長い間無視されてきたことだが、兵士たちに「敵とだけ戦い、同胞を尊重するように」と教えた。


 我がフランス軍の規律は、シャルル七世のおかげなのだ。


 王が、いままで誰も想像すらしなかった改革を導入した状況を思い起こせば、これらのプロジェクトが偉大な人物の業績であることに同意するだろう……。


 シャルル七世の英雄的な活躍は、弔辞のほんの一部にすぎない。

 彼が残した足跡が賞賛され、大切にされるべきものであるとすれば、それは主に、彼が王政にもたらした知恵と優しさに対してである。


 シャルル七世は、フランスの法律を生き返らせて、新しい法律を追加した。


 正義(司法)の分配について、守るべき秩序を改革するために公布したすばらしい勅令を参照するだけでいい。

 無政府状態だった半世紀の間に、ほぼ壊れていた司法機能を、さまざまな場所で調和を回復するために制定された、賢明な規則の数々よ。慎重さと誠実さが認められた裁判官にのみ委ねられた法の権威よ……。


 シャルル七世は、王位に必要な条件をすべて備えていた。

 周囲を取り巻く人々は、もっと王をコントロールできないかと企んでいただろう。しかし、取り巻きに操られていたという非難は、治世初期の数年間だけだ。


 王は、欲深い家臣たちに騙されても、彼らを寵臣ではなく友人だと信じていた。しかし、経験を経て、シャルル七世はついに幻滅し、そのとき真の王になったと言える。


 シャルル七世はのんびりとした性格で、朴訥さと優しさがあり、その人間性は、その他の美徳に新たな輝きを与えた。

 彼は簡単に許したが、この寛容さは無神経さの表れではなかった。

 彼は侮辱を忘れる術を心得ており、決して奉仕などしなかった。


 シャルル七世は臣民のことを、自分の偉大さの土台を固めるために「財産と生命を惜しみなくつぎ込む運命にある大勢の奴隷」とは考えなかった。

 王は臣民に対して、もっとも優しい愛情を注いだ。

 自分の子供たちにこれほど愛情を注いだ父親はいないだろう。

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