17世紀(2)最初の科学的研究「歴史家の義務」

 1697年に『シャルル七世の歴史(Histoire de Charles VII)』が出版された。

 弱冠19歳の青年、ニコラ・ボード・ド・ジュイリーの手によるものだ。

 この著作は、過剰と思えるほどシャルル七世に甘い評価が認められるが、著者の権威のなさゆえに注目されることはなかった。


 メズレの後、注目すべき最初の歴史家はイエズス会のダニエル神父である。

 彼のすばらしい著作は、現在ではほとんど忘れられているが、1713年に出版されてから長い間有名であった。

 新時代の歴史家は、歴史の本質(=歴史に対する真の感覚)とでも呼ぶべきものを大衆に明らかにした。


 これは、フランス史について行われた最初の科学的研究だったといえる。

 ダニエル神父はシャルル七世について次のように評価している。




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 歴史家たちが記録しているこの王の生涯を振り返ってみると、一部の現代人は彼を十分に正当に評価していないように思える。


 彼らはシャルル七世について、「才能も価値も平凡で、無頓着で応用力に欠け、いつも恋のことで頭がいっぱいで、愛人や大臣に絶対的に支配され、国家の功労者を食い物にし、臣下のために寵愛を捧げることを強要された王子」として描いている。


 だが、シャルル七世の治世下でなされた偉大な功績を否定することはできない。


 すると彼らは、「多くの幸福な成功は、評議会の顧問たちの知恵と軍隊の将兵たちの武勇と技量のおかげである」と言って、王から栄光を奪っている。


 シャルル七世というキャラクターには、真実と偽りがある。

 王に欠点があったことを認めなければならない……。しかし同時に、王が心を許した人々に何もかも捧げたというのも真実ではない……。


 父王の死の直後から、シャルル七世は活動休止状態にあったようで、一年中どの時期にも姿を見せなかった。ロワール川の対岸に引きこもって怠惰な生活を送っていたようで、すべては将軍たちが彼抜きで行っていた。

 しかし、この将軍たちは王国でもっとも賢明で経験豊かな人物たちだったので、若きシャルルは何事においても彼らの助言に従うより他になかった。


 将軍たちは「国家の救いはこの王子を守ることだ」と考え、賢明にもシャルルを危険から遠ざけた……。しかし、すでに14〜15歳になっていた後継者を見ると、彼に王位を継がせて、栄光のために働かせた……。


 王が「臣下を見捨てた」という非難は、あまり根拠がない。犠牲となった臣下は、王がまだ君主として行動することを許されていなかった時期に、王の意志に関係なく連れ去られたのだから……。


 それどころか、「王は臣下に身を許しすぎている」と正反対の非難をされることもある。この非難が、少数の政敵の策略によるものだとは、誰も考えなかったのかもしれない……。


 シャルル七世は「政治家として凡庸」とされ、「応用力に欠けていた」と評されているが、彼の治世を揺るがす大事件と相容れない。


 どんなに悪意を持って、すべての功績を幸運のおかげにして王を軽んじようとしても——、王位を追われ、財産の最良の部分を奪われ、宮廷の大物たちの派閥にことごとく裏切られ、金もなく、金を得るための資源もない王子が、多くの障害を克服するために何ができようか?

 その技能アビリティ応用力アプリケーションを駆使して、(王位、財産、宮廷の派閥、金、資源以外の)別のやり方で補わなければ、シャルル七世が到達した偉大さと権力の頂点にたどり着くことはほとんど不可能だ。


 少なくとも、自分に仕えるべき人物を見事に選んだ。

 その優れた見識について、賞賛を否定することはできない。


 しかし、人々はシャルルへの偏見から、王国の諸問題から目を逸らしていたに違いないと考える。そういう人は、シャルル七世の治世に関するコレクションに、この王の詳細な行動が記録されているのを見たことがないに違いない。


 歴史家は、虚偽に反論することでしか真実を知らしめることができない、

 王子の不正確なイメージに基づいて、評判の悪い侮辱的なイメージを描く人々の軽率さを指摘することによってのみ、歴史家の義務が果たされる。


 シャルル七世をフランスの王冠を戴く偉大な王子の一人と見なさないのは、実に不公平である。

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 オーギュスタン・ティエリーが賞賛した、歴史を科学的に研究する方法——、


「常識にとらわれず、ありふれた表現を注意深く避ける。

 歴史家は原典(文献)をまっすぐに見つめ、起こった事実を完全に把握した上で、自論を主張する」


 その最初の成果を、ダニエル神父の著書に見ることができる。


 しかし、シャルル七世に関する限り、この悪しき轍(わだち)はあまりにも深く、抜け出すことはできなかった。



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