最終話 最後の戦い!
「最近奇妙な出来事が起こってな」
牢屋に放り込まれていた囚人が死に、土葬した。そして数日後に掘られて中身がなくなっていた。囚人の墓荒らしなんて誰がと思い穴を埋める。まさか復活したのかと考え他の囚人の墓を掘り起こしてみる。しかし骨はある。
「近くを凶暴な野生生物が通ったという報告があるからおそらくは彼の仕業だろう」
この世界では死者は土葬の習慣、棺桶に入れずに土に直接埋める。そのため鼻がいい野生動物が死肉を見つけ墓を荒らすことがあるとか。それから囚人が多数一気に死んだそうだ。こちらは流行り病。この国史上最も囚人の死者が出たとか。
「まあ墓掘りも流行り病も珍しいが昔からある。偶然が重なっただけだろう。そんな事が話題にのぼるくらい平和になったんじゃないかな」
ゴーレム兵団以来、争いごとは全く聞かなくなった。平和なのはいいことさ、このまま寿命まで平和であってもらいたいね。十日後。
「魔女ソフィアが世界に対し宣戦布告を」
盛大に転けそうになる。人間とは争いの歴史だな。ゴーレムと戦った土地に隕石を落とし、甚大な被害を。従わぬ国には容赦なく隕石を落とすと世界を脅す。隕石の規模からして本来の一位の人のようだ。隕石以外も強力な魔法を扱うという。一位確定だな。ソフィア戦はエルの活躍もありあっという間に片付いた。タイマンでソフィアを倒すとはな、強い。戦いを終え、国へ帰る。それから平和の日々が続く。半年ほど経過。
「サークさんが行方不明だそうだ。最近まで強者探しをしていたようなんだ」
平和で時間が出来たからとウィリアムさんのような強者を探していたとか。俺の能力から計算するとまだまだいるはずだからね。もしかしたら強者とぶつかり死んだ可能性もと語るルーラーさん。サークさんの性格から殺し合いになる可能性もゼロじゃないか。しかしサークさんだからな、ただどこかに遊びに行っているって線も考えられる。まあしばらくしたら帰ってくるだろうと俺達は楽観視していた。それから三十日後。
「各地で魔人の目撃情報があるって」
うーむ、全滅したと思ったが。しかし隕石を落としただけだからな、元々他の地で活動していて生き延びた魔人がいたとしてもおかしくはない。数もそんなにいないだろう。見かけたってのは同じ魔人じゃないかな。一応警戒しよう。拠点に手紙が届く、俺宛のようだ。差出人の名前がない、誰からだろう。
「久しぶりだな、ハジメ君、イデオだ。お陰で大変な恥をかき、人生も滅茶苦茶だよ。だけど縁あってね、第二の人生を今歩みだしたところなんだ、一緒に祝ってくれるよな? 魔人の平原へ来てくれ」
この内容は。手紙を読んだ後に思考が停止する、奴は死んだはずでは。イタズラか? 一体誰がこんな得しないことをするんだ。ルーラーさんが慌てて俺達の拠点へ。
「ハジメ、おかしな手紙が多数の人達に届いているそうだ」
どうやら俺だけではないらしい、世界の有力な人達に手紙を出しているようだ。指定された日時までにはまだ余裕がある。墓を掘り返すが骨はあった。偽物の可能性が高い。もしかしたら親族かもしれないな。話し合った結果、ある程度の戦力を用意することにした。あいつは危険な思考の持ち主だった。その遺伝子を受け継いでいるとしたら危ないやつなのは間違いない。こうして人を集め、約束の日時に魔人平原へ。そこには多数の強化魔人と強化魔獣達が待ち構えていた。
「これはこれは。前回はお手紙を出してもほとんどの方が来られませんでしたが、今回は呼んでもない人までおいでなさっているとは」
笑いながら魔人が流暢に話しをしている。内容的には前回参加していそうだな。それにしても声に聞き覚えがある、顔もどこかで。嫌な予感が脳裏をよぎる。
「感のいい人間は気が付いたようだな。そうだ、イデオだ」
戦士達がどよめく。イデオは魔人になったという。強化魔獣が何を食べているのか気になった、そして思いつく、人間を強化できないかと。召喚すると腐った肉が召喚された。それを食した時、一度イデオは死ぬ。時間が経ち、蘇る。その時身体が変化し魔人となっていた。念の為に墓には別人の骨を埋めておく。あの遺体はイデオではなかったのか。後日、虫や動物、魔獣がこの腐った肉を食べると強化魔獣に変化。イデオは彼らと同じものを食べ魔人に。何でも召喚できるわけだからな、強力なレアスキルを持っている。
「前回失敗したのはぶっつけ本番だったからだ。突然の出来事に対応できなかった、よくあることだよ。ということで今回は準備をしてきた」
巨大な魔獣が空から降ってくる。美しい水晶のような大きな宝石がいくつも埋め込まれている魔獣、よく見ると中には人が入っている。あれはサークさん!? だけではない、ウィリアムさん、サウザンドさんも水晶の中に。他にも水晶に人が入っている。この人達はまさか。
「この魔獣は吸収した相手のスキルを使用できる、際限なくな。召喚魔法で呼んだ。クリスタルに入っている者は皆その道の達人。この最強の魔獣を貴様らは倒せるかな?」
やはりそうか。サークさんはコイツらに捕らえられたわけか。
「さあ、宴を始めよう。皆血を見たいとお待ちかねだ」
戦闘が始まる。全員強化魔人に強化魔獣。こちらも精鋭だがかなり押されている。俺達やロミカくらいか、勝っているのは。きつそうなところには補助に入ったりする。イデオが動き出す、魔獣が俺を襲ってきた。分断され俺一人に。
「まずは貴様からだ! 死ね!」
フルスラッシュが俺を襲う。サウザンドさんの威力がそのまま出力されている。クイックステップを使いかわす。
「あれをかわすだと!?」
驚きながらも次々に攻撃を仕掛ける。しかし全ては俺には届かない。
「こうなったら!」
「メテオフォール!」
隕石を呼び寄せる魔獣。この地域ごと俺達をふっとばすつもりか。
「メテオフォール!」
こちらもメテオを放つ。相手のメテオを破壊したが俺のメテオがまだ生きている。あらら、相殺出来なかったか。飛び上がりスキルを使ってメテオを破壊した。
「そんな馬鹿なことが!」
大きく口を開け狼狽しているイデオ。魔獣を片付けてしまおう、高速で駆け回り翻弄、飛び上がり魔獣の首の付近へ。
「ウインドブレイド!」
風の刃が魔獣の首を狩る。そして下に落下、魔獣は動かなくなる。
「お、おのれぇ!」
俺に襲いかかってくるイデオ。カウンターのパンチを食らわせ後方へ吹っ飛んでいく。
「くく、ははは! そうか、そうだよな! 俺のスキルは間違っていなかった!」
「当時から俺はそこそこ強かったよ」
魔獣が力を失うのを見て、他の魔人達がイデオに飛びかかり張り付く。そして黒の爆弾を起動した。
「俺達を魔人にしやがって!」
「離せ!」
見覚えがある人物もいる。あの魔人は墓を調べた人だ。他にも魔法の国のおえらいさんも混じっているな。そうか、イデオが魔人を作っていたのか。動けなくなるイデオ。魔人達が集まり黒い塊に。こうして爆発、あっけなくイデオは爆死した。ルーラーさんが俺の近くへ来て肩を叩く。
「悪党の最後なんてあんなもんさ」
「そう、ですね」
水晶内部にいる人達を確認、よく見る中で呼吸をしている。良かった皆生きている。
「手伝ってくれ!」
協力して魔獣の死骸から彼らを引きずり出す。中は羊水のようになっており、水分で満たされた奇妙な空間だった。
「ごほっ、ふうっ、生きていたか」
水を吐き出し、意識を取り戻すサークさん。助け出された人が続々と意識を取り戻す。水晶を取り除かれた魔獣の死骸横たわっている。どこかで見た気が、そうだ。この魔獣はゲームで戦った魔神王に似ている気がする。あいつは様々な形態を持っていた。ストーリーに何度も登場、何度倒しても復活してくる本当にしぶといやつだった。その点は魔神王とイデオが重なるところがあるな。俺がいなければ神になっていたかもしれない。奴の能力はそのくらい強力、そしてしつこかった。戦いが終わり仲間達のもとへ。
「世の中平和だねー」
あれから半年、世界は平和だった。やつがラスボスだったのかな。しかし俺は異世界に残ったまま。帰宅しそうな気配もない。帰ることは出来ないかもな。
「ぼーっとしちゃってどうしたの?」
「いや」
色々あったな。過去のことを少し思い出していた。
「昼食の時間ですよ」
仲間とともに過ごす時間はかけがえのないものだ、楽しく暮らしている。
「手紙だよ」
拠点に手紙が届く。
「仕事を頼みたいのだが。厄介なことがあってな」
そうこなくっちゃね。仲間と共にまた戦いの中へ。こうして俺達の物語は続いていく。
スキル世界一位を手に入れた俺は異世界で無双する 保戸火喰 @hotkaku
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