永久機関博物館展示物目録

@Spirits90ABV

第1話

 かつて世界が生まれた頃、青色はこれ一色であり、宇宙も空も海もそれだけで塗られてた。そのため、空と海と宇宙の区別はこの時代には存在しなかった。

 星々の間を鯨が行き、鳥は川の底で歌い、雲の間でいるかが泳ぐ、そんな世界だった。

 そんな世界に一匹のペントレスラーム(ペントレスラームがいかなるものであるか、当館において調査中)がいた。そのペントレスラームは青色が一つしかないことに不満を持った。他の色は、たとえば同じ『赤』でも炎の赤や血液の赤など、実に様々なバリエーションを持っていた。

 なぜ青だけが一つしかなかったのかというと、それは青が孤高と孤立と孤独を愛する性格であったからである。

見学者諸兄も周知の通り、色は他の色と混じり合うことで、そのバリエーションを増やしていく。

 ペントレスラームは、他の色と混じり合うよう青を説得することにした。ペントレスラームは青に比較的近しい紫や緑に青を説得するよう頼んだ。紫は答えた。

「わしはもう何度も青と混じり合うよう、説得してきたがあやつは答えてくれなんだ」

緑も言った「青は、ボクの言うことなんか聞いてくれなかったよ」

緑や紫は、青と混ざろうと試みたことが何度もあった。しかしそのたびに断られたのだ。ペントレスラームは赤やオレンジやピンクらにも同じことを頼んでみた。

彼らは快く承知し、青を説得した。 青はそれを拒絶しなかった。無視したのだ。

 ペントレスラームは青を説得することをあきらめかけた。そしてこれで最後にしようと、黄色に説得をたのむことにした。

「いやっほい!、ペンネトレスラームの旦那!。そんなことならちょっとおいらにまかせてくんな!。じゃ、ちょっといってくるぜい!」

 黄色は全ての色の中でもっとも陽気で社交的であり、青とは正反対の性格に思えた。そのためペントレスラームは黄色に説得を頼むのを一番最後にしたのだ。


以下数ページに渡り記録消滅。


 そして、たくさんの青が生まれ、空の青、海の青、宇宙の青は別な色で塗られることとなった。今では空と宇宙と海は区別される。

星々の間でいるかの歌を聴くことは無く、海の底で鳥の歌を聴くことは無く、雲の中で鯨の歌を聴くことは無い。

 しかし、みなそれなりに満足している。


追記


当館には孤独、孤高、孤立の『純粋な青色』がいまも残されている。

時として、この青色に助けられる者もいる。





 悪魔

 どこか異次元の知的生物。彼らは通常不死身であり、万が一滅ぶようなことがあるとその肉体は崩壊・消滅する。そのため、展示品として悪魔の剥製を作成する際、我々は非常な苦労を要した。

 当館は悪魔を生かしたまま剥製にすることで展示に成功した。この剥製は常に『aksdhfhisdhfnvour!』

と叫びをあげており、最近当館のスタッフがその翻訳に成功した。『悪魔め!』





アンテナ

 どこかからのシグナルを受けるための道具。最近では人間の脳にも装備されている。


追記

 うどん魔人の脳に接続されたアンテナは、そりゃあもう・・・。


追記2

 見学者諸兄の脳に接続されたアンテナときたら、なんてったって・・・。


追記3

 アンテナの普及率は確実に上昇中。





 人間型種族が直立したとき、頭部の方角。通常『下』と対になる。


追記

 当館では『上』を展示するべく計画を立てた。そのためには、全世界の人間型種族の頭部を同じ方角に向けなければならない。当館では、展示の実行のため、まず、人類捕獲計画を・・・。


追記2

 とりあえず、惑星の半分の連中に逆立ちしてもらうという手段も検討に値すると・・・






 永久機関駆動型自動人形

 かつて『永遠』にとりつかれた錬金術師が永久機関で作動する自動人形を作成した。

その人形は永遠の動力を持っており、自分の意志を持っていた。

 錬金術師は人形の完成と同時に息を引き取り、人形は自由の身となった。

人形は全く動かなかった。

人形はこう考えた『急ぐことはない。時は無限にあるのだから』

 そして、月日がたち、永久機関の歯車はさびてすり減り、動かなくなった。

人形は、壊れなにもなしえなくなってから、当館の展示物として初めて意味を持った。






 ある種族により生み出された最大の発明品。全ての問題を解決しあらゆる疑問に答える。

まさに全知全能といえる。神については以下のような話が…

(何者かによる超自然現象により当館学芸員うどん魔人は消滅)


―うどん魔人は先ほどの何者かにより改造再生―


うどん魔人 Ver.2

聖なるかな!聖なるかな!聖なるかな!昔いまし、今いまし、のち来たりたもうたる主、世にも尊きその…


追記


当館ではうどん魔人を再改造






キーボード

 キーが配列されている板、主にコンピュータへの文字入力に使用される。

かつて、あらゆる記号を網羅したキーボートが存在した。

このキーボートを用いれば、いかなる記号もキー一つ押すだけで入力できるのである。

そして、このキーボートの記号はその一つ々々が、世界のあらゆる概念や事象や物体一つ々々に対応しているのだ。

 このキーボートを用いてあらゆる場面を完璧に記述しようとした作家がいた。彼は最初の一語を打つべく、キーを探してキーボートの上へと旅だち、その後彼の姿を見た者はいない。


追記

 とても大きいので、当館では展示できなかった。





 黄ペン

 校正作業で修正済の部分にマークするために使用されるペン。

遥かな過去、魔力を備えた黄ペンが存在した。その黄ペンで、未修正部分をマークすると誰もそれを修正しようと考えなくなるのである。

 この黄ペンは天地創造の際にアダムとエヴァに使用された。


追記 当博物館ではこの黄ペンを展示するべく捜索中。いまだに世界のあちこちで威力を発揮していることは疑いようがない。






究極兵器

かつて、激しい争いを繰り広げていた、2つの種族が存在した。

彼らは互いを打ち破るべく研究を続け、その武器は日々進歩を続けていった。

そして遂に一方の種族が、いかなる防御も無効な究極の兵器を創り出した。

その兵器は、いかなるものでも瞬時に消滅させることができたのだ。

しかしもう一方の種族は、この究極兵器に対抗するすべを見出した。

それは、兵器が使用される直前の状態を記録し、瞬時に再創造するというものだった。

兵器を開発した種族は、その威力をあげることに総力を傾注し、一方の種族も対抗手段の強化に全力を注いだ。

結果、究極兵器は1秒間に数億回とも数京回ともつかないサイクルで世界を消滅させ続け、そのたびに世界は再創造されているのである。


追記

世界が再創造される際に発生するミスにより、本来ありえざる事象がおこることがある。これは時と場合により、奇跡・怪奇などと呼称されている。






狂気誘発装置

 かつて当館に展示されていたが、取りやめた。珍しくないので。





恐怖の大王

 当館ではこれを捕獲し展示物にすべく・・・


追記

 1999年8月、さまざまなメディアより、いろんな団体のメッセージ。

『我が神の慈悲により破滅は避けられました』

『教祖様の神通力により終末は延長となりました』

『プレアデス星団からの緊急連絡によると・・・』

『さきほど、聖書予言の新解釈法が発見され、それによれば・・・』

etc・・・


追記2

 もちろん当館がこれの捕獲に成功したからである。見学者諸兄は一生恩に着るように





 クリップ

 書類を束ねるため、使用される金属片。

かつて、生産されたクリップの中で、『クリップ オブ ザ クリップ』と称される、究極のクリップが存在した。

 このクリップを使用すると、いかなる分厚い書類も、紙数枚程度の厚さに収まってしまうのである。

このクリップは、宇宙史上最大の官僚国家として知られた、第1次銀河帝国において開発された。

第1次銀河帝国は、広大な領土に関する全てを紙の書類で記録していたのである。

(第1次銀河帝国にはコンピュータの類は存在しなかった。彼らは、生まれつきスーパーコンピューターをしのぐ計算力を持っていたのだ)

時の皇帝、『ラーホソウ1世』は、帝国首都宙域、数十立方天文単位にわたって堆積していた書類をすべて、一つのクリップで束ねた。

その結果、途方もない質量の書類が、圧縮され、重力崩壊をおこし、ブラックホールと化したのである。

この事件により帝国首脳部は消滅し、銀河帝国は滅亡したのである。


追記

 この手の、無限容量収納器具はいろいろな文明で開発されたが、みなブラックホールを残して消滅してしまった。





 コーヒー

刺激性の強い飲料で眠け覚ましに愛飲される。

かつて、究極のブレンドを求める男がいた。

彼は世界中を周り、ついに究極ブレンドのレシピを手に入れたのである。

その至高のコーヒーを飲んだ結果、彼の眠りは妨げられ、それから数百年たった今も 彼は一睡もしていない。


追記

彼が究極ブレンドを見つけた場所は現在、ハイチと呼ばれているそうだ。






 ゴミ箱

 不要なものを一時的に収納するための容器。

かつて、意志を持ったゴミ箱があった。

そのゴミ箱はひどいペシミストでパラノイアである。彼は全宇宙のすべてを不要なものと考えた。

そしてゴミ箱は自分の存在意義である、不要物の格納を遂行すべく全宇宙を吸い込んだのである。すべてを吸い込んだ後、ゴミ箱は自分の存在意義がなくなってしまったことに気がついた。ゴミ箱は悩み抜いたあげくに、「不要に思える存在も自分に存在意義を与えるために必要なのだ」と考えた。ゴミ箱は非常に自己中心的である。

 そしてゴミ箱は今まで吸い込んだすべてのものを一挙に吐き出したのである。

それからゴミ箱は自分の存在理由を示すため、再び宇宙の吸い込みを始めた。

ゴミ箱の吸い込みと吐き出しは、賢人たちによりビッグバン、ビッグクランチとよばれるようになった。





 酒

アルコールを含んだ飲料。


 追記

当館に展示してある酒は、全て色つきの水に化けてしまった。






 時間犯罪者

「この混沌とした世界に我が理想のもとに秩序を!」と考える個体は、どの世界の知的種族にも存在するらしい。

当館の調査では、何らかの手段で過去を修正し、それを成し遂げようとした試みの数は、既存の宇宙平均で20.25*10^20のオーダーに達する。

統計ではそれらの試みの内、実に42.5%が意図されたとおりの改変に成功。

未然に防がれた0.2%の試みを除き、失敗に終わった57.3%の試みも何らかの形で過去を変革することとなった。

そのかいあって、ほとんどの世界はかくも混沌としているのである。


追記


時間警察の設立を考えるものがいなかったわけではないのだが、そもそも正しい歴史がどのようなものなのか誰にもわからない。






自殺誘発装置

別名、真実の鏡


追記 当館に展示するまでもなくどこにでもあるのだが、きちんと展示しておかない限りきわめて巧みに無視される。






 自殺誘発装置・2

自殺誘発装置として知られる鏡には『真実の鏡』のほか、この『もしも~だったらの鏡』が知られている。


追記

『真実の鏡』と違い、この鏡をじっと見つめる者は多い。





純粋痴性体

 純粋知性体の一種で、記憶と経験を食料とする精神生命体。

空腹時の彼らが真っ先に食べるのは、自分自身の、自分に都合の悪い記憶である。

二番目の好物は他人の楽しい経験。

ときたま人間に受肉するらしい。

追記

 当館では、純粋痴性体の捕獲に成功し、さっそく館内でも一番目立つスペースに展示した。

しかし、精神だけの存在なので誰にも見ることができなかった。






白・黒

 特別な色と誤解されることがしばしばあるが、実は灰色の一種にすぎない。


追記

 この2つのみを特別視することにより生じた弊害と、それにまつわる遺物の展示は、残念だが当館の能力を越える。






 定規

 空間中の二つの位置の距離を測る道具。

かつて、野心に燃える定規があらゆる長さを測ろうと夢見たことがあった。定規は苦しい修行を重ね、どんなに長い距離でも、素粒子一つ分の狂いもなく計れるようになった。 しかし、定規の夢は果たせなかった。自分の厚さや幅、長さをはかることがどうしてもできなかったのだ。

 夢破れた定規は、当博物館の展示物として余生を送っている。





ジン

 不滅にして全知、かつ奇跡で願いを叶える力を持った大精霊。ただし己の望みにその力を持ちうることはできない。

当館ではジンを展示物とすべく調査したが、判明したのは以下のような事実である。

あるところに、大変慈悲深い人がいた。その人の前にジンが現れ『おまえの素晴らしい心に免じ、ただ一つだけ願いをかなえよう』

『あなたの望みが叶いますよう』

その瞬間ジンは世界から消滅した。

以上の理由により、当館にはジンは展示されていない。


追記

 スーフィーの寓話には、世界は完璧なものであったのだか、奇跡が人の願いを叶えるうちにそれが損なわれていったという話がある。件の人はそれを知っていたのだろうかは分からない。


追記2

 上記の寓話はうどん魔人の捏造。






 生化学的仮想現実薬

 まだ開発されていないこの薬品は人間を言葉に対して非常に敏感にし、自分の思考と現実の区別ができなくなるまでに想像力を増大させる。

この薬品を服用したものが本を読むと、主人公の体験を完全に自分のものとすることができる。

これから、これを服用し古今東西のあらゆる聖典を読破する人間が現れ、彼はすべてを読み終えた後、救世主として人類を導くと誰かが予言した。予言には、この薬品の開発者のメモが当館に展示されるという記述がある。そのため、一応目録に記載した。






世界征服学概論

かつて出版された書物のタイトル。いつか誰かが、この本を参考に実際に世界を征服した、もしくはする。当博物館に原稿が展示されている。

この場では序文と目次のみを紹介する。


 世界征服学概論


はじめに


 『世界征服』この大きな目標に歴史上たくさんの誇大妄想狂たちが挑んた。そしてよく知られているように彼らはすべて失敗したのである。また、歴史に残っていない、世界征服を望んだ者たちの数はどれほどに多くの者となるだろうか。

 見果てぬ夢、決してかなわぬ夢であるはずの『世界征服』、それを追究する世界征服学になんの意味があるのか疑問に思う者も多いであろう。

率直に言えば世界征服学にはさしたる意義はない。それはシャーロッキアンやアニメ・ゲームの謎本著述と同様の『遊び』である。世界征服学を学ぶためには特別な予備知識も長い時間も必要ない。あなたもこの見果てぬ夢を追いかける奥深い遊技に参加してみようではないか!


目次

理論編

第一章 世界征服の動機

     世界征服者に似合う不幸な過去パターンの分類

     自己陶酔的な世界征服者の動機パターンの分類

     自己破滅型の世界征服者の動機パターンの分類

     精神病質者のカテゴリー不明なパターンの分析

第二章 世界征服の美学

     世界征服者は独自の美学を持たねばならない

     世界征服者にふさわしい美学の例

     自分なりの美学を作るために

     特殊な美学の例

第三章 世界征服達成後の展望

     単純に宇宙征覇を目指すべきか?

     万人のためのユートピア実現 道は険しい、実現できたらあなたは神様

     エリートのためのユートピア実現 ヒトラーの夢が今!あなたの手で

     人類駆逐とポスト人類 他種族もしくは新人類、エイリアンetc

     絶対君主制の世界国家 ついに究極の権力者へ

     人類滅亡と自然の回復 ガイアをむしばむガン細胞の駆除

     世界滅亡 バクテリアすらいない大地

実践編

第一章 世界征服の資金調達法

     犯罪組織運営

     企業運営

     国家運営

     錬金術概論

     世界の埋蔵・沈没財宝リスト

第二章 世界征服の組織構成

     構成員がすべて世界征服を自覚して働いている組織

     構成員のかなりの部分が何も知らないで働く組織

     大幹部の適切な称号と人数

     大幹部にふさわしい特殊能力

     悪の組織の階級制度考察

第三章 世界征服の秘密基地作成

     地下基地

     大都市内のビル

     空中要塞

     海底要塞

     移動する基地

第四章 世界征服の超兵器

     直接破壊兵器

     テロ兵器

     洗脳兵器

第五章 世界征服の具体的なパターン

     武力征服

     金銭・脅迫その他による政府要員買収

     洗脳による全人類奴隷化

     その他

巻末資料 ある世界征服者(志望)の一日

     世界支配計画をもつ団体リスト

     某秘密結社の組織構成と運営

     超兵器スペック表






 中毒

 なんらかの化学物質への依存と耽溺。ほとんどの人間は以下に示す物質の中毒患者である。

○空気

○水

○食物

この深刻な事態を早急に解決するため・・・


-うどん魔人-

『人工無能うどん魔人ダミー?誰だ、こんなプログラム走らせたのは』

クリック音





電卓

 本来は電子卓上計算機の略であるが、当館において電卓と呼称されるものは電子戦仕様宇宙航行機能装備麻雀卓のみである。

この電卓は、往年の名作アニメ映画『戦え!麻雀男』の主人公メカであるが、それを熱心なファンが実際に作成したものである。

彼の手による電卓はアニメそのままのスペックを持っており、補給なしで300年間宇宙航行が可能・惑星破壊砲2門・超光速ドライブを装備しオプションの麻雀牌を追加することにより更なるパワーアップが可能。すべての麻雀牌をそろえると、恒星系破壊装置アルティメット・ウルトラ・スーパーカリフラジリスティック・アブリリュート・ディスラプターが使用可能となる。

彼は電卓作成資金の捻出のため法に触れ、現在は官憲に追われる身である。彼は今、ほかのアニメのファンとなっており、庇護と引き換えに電卓を当館へと寄贈した。

追記

当館の電卓はいつでも使用可能。





  墓

死体に聖性を持たせるためのアイテム。


追記

憎い奴も愛したまえ。今すぐ、聖なる物にしてやろうではないか!。


追記2

当館の裏庭にいる聖者達は何人だったかな・・・。






死体を収納するための容器。


 追記

うどん魔人のベット。





ピリオド

 文章の最後を示す記号。ピリオドについては次のような話がある。

かつて、ある一人の科学者がいた。彼は、これ以上分解できない究極の素粒子について研究した。そして、それが何者かによって書かれた文のピリオドであることを発見した彼は・・・。


-うどん魔人-

『一体、この超・人工無能うどん魔人ダミーって誰が動かしてるの?』

クリック音。






貧乏神

 信念や思想、嗜好により自分からこれを飼育すると、清貧として尊ばれ、一方的に付きまとわれると赤貧とよばれるペット。


追記

 展示物としてではないが、当館員うどん魔人が個人的に一匹飼っている。






 不当生存者

 昔、とある人物により生み出された概念。

彼は自分の気に入らない人間に対し、この呼称を用いたとされる。

彼の著作によれば不当生存者は以下のような特質を持つという。


1 不当呼吸。

 彼によれば、世界の酸素を不当に浪費する恐ろしい犯罪行為らしい。

2 不当飲食。

 世界の水と食料を不当に浪費するおぞましい行為だということだ。

3 不当会話。

 他者の人生の有限な時間を不当に浪費する卑劣な行為。

4 不当空間占拠。

 有限な宇宙の空間の一部を不当に占領する許し難い行為。

5 不当原子使用。

 有限個しかない原子を、己の肉体を構築するため不当に用いるという、絶対黙認してはならない行為。


 この概念を生み出した人物は不当生存者を殲滅するためと称して自殺したらしい。





平凡

 全く変わりばえのないこと。 当館の学芸員の一人が『平凡』を展示物にしようと世界中を旅して回ったことがある。

どこに行っても、そこに住む人々は言った。「『平凡』?そんなんどこにでもあるじゃん」

しかし、当館の学芸員は彼らの言う物が『平凡』だとは思えなかった。  収集に命を掛けている学芸員は、さらに世界を回ったがとうとう『平凡』を見いだすことができなかった。

 当館では『平凡』を世界中の人間が共通して持っている妄想の一種であると結論し、展示をあきらめることとなった。

追記


 当館では『非凡』を展示しようと探し求めたがやはり見つからなかった。






 マクスウェルの悪魔

 本来であれば、永久機関に棲みつくグレムリンの一種である。

概念だけで実在しないものと考えられていたが、意外な場所でその実在が確認されている。

金、権力etc。残念ながら物理法則においてその存在は確認されていない。


追記

 当館学芸員うどん魔人は個人的な理由でこいつを捜し求めたらしい。

絶対に縁はないと思うが。





迷宮

 侵入者を迷わすものと、内部の存在を幽閉するための物と二通りある。が、構造はあまり変わらない。

我々の世界が迷宮であることは広く知られているが、用途がどちらなのかは知られていない。


追記

 当館の出口はどこ・・?





命名

 何かを抽象化する行為。この過程でたくさんの何かが失われる。もっとも損失が多い例として『神』『宇宙』などが挙げられる。


追記

 この行為に似たものとして『肩書きをつける』と言うものがある。この過程で何かを失った人間の数は・・・。


追記2

 しかし、うどん魔人が『永久機関博物館学芸員』の肩書きにより失ったものはない







眼鏡

視力矯正器具。

 かつて、ある世界に真実が見える眼鏡が存在していた。その眼鏡を掛けると物事の本当の姿を見ることができるのである。その眼鏡を、一人の盲人がかけた。『なにもみえない・・・』次の瞬間、その世界は消滅した。


 追記

その眼鏡とかけた人物だけは、残ったので話しを記録できたのである。






メドウサの首

 見ると石になる珍しい代物。当館にも一つ展示したから遠慮なく見ていってください。

おや?どうしました?


追記

 館内での投石はご遠慮ください・・・





幽霊

 かつて幽霊は生者とほとんど違わなかった。幽霊たちは食事もするし、子供まで作ってしまうのだ。幽霊と生者の違いは、「死んだことがあるかないか」「幽霊は死ぬ代わりに成仏して消える」の2点のみだった。

 あるところに進取の気風に富んだ幽霊がいた。

「おれは幽霊だが生者どもと全然かわらん。こんなことじゃいかん!幽霊の幽霊たるを世間の人間に思い知らし、おれが幽霊になる理由となった、うらみをはらさねば!」

彼は生前、とても自己顕示欲が強かったが無名のまま死んだので、その恨みにより幽霊となったのだ。彼は修行に修行を重ね、数十年後、壁抜け空飛び飲食不要など、現在幽霊の持ち芸となっている様々な技を身につけた。

 それを見た他の幽霊たちは彼が数十年かけて会得した技を易々と身につけてしまった。幽霊たちが生者と変わらなかったのは、単に生前の習慣を引きずっていたためだった。だが彼は幽霊たちの思いこみをうち消してしまったのだ。

 彼はそのようなことには思い及ばず、ひたすら悔しがり続けたあげく憤死した。そしてあまりの悔しさに本当に幽霊になって現れた。本人も周りも気がつかなかったが、彼は実は生者だったのである。

 それほど、かつて生者と幽霊の区別は付きにくかったのだ。


追記


 当博物館では幽霊を展示しようと試みたことがある。壁抜けをする幽霊をとらえておくために、特別なお札、呪文その他を用意し幽霊の意識を失わせた。意識を喪失した幽霊は重力に引かれ、床をすり抜け地面を抜けて、どこまでも落下していった。





履歴書

 経歴を書いた書類。

当館では『就職の決まる履歴書』を売って運営資金にするという計画が・・・


追記

 実行はしなかったから白い目で見ないように。





惑星脱出競技

 完全不老不死者の間で行われる競技。

ルールは単純であり、競技者たちは身一つでどこかの惑星に送られる。

そこで、宇宙船を建造して、ゴールとなる宙域に最初に到達したものが勝利者である。

惑星脱出競技には複数の難易度がある。参考のために記しておこう。


レベル0(初心者レベル・現在は禁止)


 知的生物の存在する惑星に送られる。競技者たちは神として原住生物を技術文明に導き、宇宙船を建造させるのがセオリーである。他の競技者たちを妨害するため、他者の導く種族に戦争を仕掛けることも多かった。

この戦争は後に『ぽぴゅらす』とよばれる独立した競技となったがメラタデ197770555年に倫理的理由で禁止された。レベル0自体はメラタデ197771000年に禁止。


レベル1(初・中級者レベル)


 競技者が送られる惑星はランダムに選出される。

ゴールは数万光年ほど離れた場所に設定され、競技者は超光速ドライブをそなえた宇宙船を建造する必要がある。

平均脱出期間は約4万年。


レベル2(上級者レベル)


   競技者は科学的な知識をすべて消去される。

競技者はそれを発見することから始めなければならない。

平均脱出期間は約5万年。


レベル3(最上級者レベル)


 競技者はアメーバに退化した状態で惑星に送られ、まず、知的生物に進化する必要がある。

最上級者レベル競技の第1回目は約一億年ほど前に開始されたが未だ決着が付いていない。現在トップの競技者は二足歩行型のは虫類へ進化。知性獲得まであと数百万年と推定される。

最後尾の競技者はウイルスへ退化。巻き返しのために自分が感染した多細胞生物を操る能力を身に付けようと進化を続けている模様。

現在より競技終了までの推定期間は約七千万年。

惑星脱出競技について詳しく知りたい方は既知宇宙惑星脱出競技委員会事務局まで。


追記 当館に展示されている剥製の中に確かレベル3競技の参加者がいたような…






忘れる話(開館時、当館にて採取)

 かつて二人の文豪がいた。彼らはあるとき読者を永遠に虜にする作品を書こうと考えた。そして自作を互いに見せあったのである。

「僕の話はどうだい?」

「え、ワシ読んでないぞ」

「やった!読むとすぐ内容を忘れる小説を書くことに成功したぞ。これならいくら読んでも絶対に飽きるということがない。やっぱり僕は天才だ。ところで君の話を見せてくれたまえ」

「さっき読んだだろ」


追記 当館にはこの原稿が展示されている。私はそれを読んだのかどうか…

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