異能を持たない俺から異能しか無いどこかの悪魔へ

@lkm67

第1話 始まり

俺の名前はルガ。もうすぐ16才だ。この世界については自分でもよく分からない。随時空中に変な形をした機械が飛び交い、終わりがなさそうな高さの建物が建ち並んでいる。


いきなりだが、俺は生まれつき異能が無い。異能の種類はたくさんあって、毒を生み出せたり、水中での活動ができたりすることはもちろん、火を操れたり、空だって飛べたりする。持っている異能は人それぞれだけど。


そんな中、俺は何一つとして誇れるものが無い。異能も持っていなければ、それをカバーできる程の頭の良さも運動神経も誰かに自慢できるほどの物じゃない。


元々、異能は必ず人には生まれつきあって、俺は史上初の例外だと言われた事がある。史上初なんて聞こえはいいが全く良いものじゃない。


俺は異能が無かったせいで幼少期から周りの同年代には冷やかされ、時には虐められ、大人達からは哀れみを込めた目で見られることだってある。 本心じゃないくせに。


両親もそうだった。思い出すだけで嫌になるが、両親は生まれつき異能が俺にない事を知った途端、俺を放置した。周りの大人達にはあの子は失敗だった、あの子は私達の恥だとか言ってた気がする。


もうマジで嫌いだ。大人なんて、子供なんて。確かに、良い大人や子供も居るのは知ってる。ただ、俺の覚えている限りは見たことが無い。だから、俺はずっと小さな頃から他人の言う事が信じれなかったし異能を持った全ての奴らが大嫌いだった。


そんなゴミみたいな思い出が蘇る中、俺は図書館へ歩いていた。いつも俺の周りには人なんていなかったからずっと本しか読んでいなかった。何なら人の顔より本のタイトルのほうが覚えているかもしれない。


今は4000年の初めの方だが、まだ図書館は現在まで残っており、(でもそれも街にたった一つの図書館しかないのだが)そこには電子辞書、紙で出来た本まである。確か地球……?だったかの星から生み出されたものらしい。


やがて図書館に着いた。相変わらずやばいな。この棚と本の量。一体何冊あるのか検討がつかないくらいの本の数と、どこまでも上に続く螺旋階段と本棚。塔と言っても過言ではなさそう。木の匂いが溢れかえる図書館はここだけ中世ヨーロッパにだったようだった。


俺は過去に何度も図書館に来ていた。だが、まだほんの一部にも到達していないだろう。


俺は今まで行ったことないくらいの上まで階段を登ってみた。上の階に行けば行くほど昔の本になっていくらしい。俺は最上階あたりまで来た。何気なく近くの棚を見ると異能について書かれた本がいっぱいある。


そこで俺は目を止めた。異能を他人に渡した悪魔についてと書かれた本を見つけたからだ。どうせ大した事書いてないんだろうと思いつつも手に取り開く。


俺は目を見開いた。本当に悪魔が写真に映り載っていた。そこには魔法を操っているであろう悪魔がいた。


………それでも俺はまだ疑いを拭えなかった。


でもそこには変な暗号とメモが挟んであった。……これガチのやつなのか?


椅子に座り分厚いその本を1から読む。

悪魔は今でも存在し、世界の何処か、森の奥深くにある城に住んでいるという。このメモと暗号は城に辿り着くための地図みたいなものだと言う。


心臓がバクバクしているのが分かる。

もしかしたら、今までずっと悩み、これからも一人で生きていくしかないと諦めていた事が解決できるかもしれない。そう思うともう止まらなかった。


俺は読み終わるとその本を借り、家に持ち帰る。

両親はとっくの昔に家を出ていった。


メモにはこう書かれていた。


・これの地図は神に誓って本物だ。この悪魔は、縦と横が重なる森に住んでいる。


・そこに行くには深い谷や広大な山があり、行く者達を遮るだろう。そのため、迂回ルートを記しておく。


8と3を描いた時、共通点を辿れば迂回できる。


・最後に来た道を思い出せば悪魔の召喚方法が分かるだろう。


俺は意味が分からなかった。まずは縦と横が重なる点を考えていく。


…………縦と横……


緯線と経線の事か?


それでも緯線と経線が交わっているところなんていっぱいある。


8と3の共通点……。


8と3を重ねたら8の半分だけが重なる。

その重なった道を進めば迂回できるのだろう。


………なら、それに合った地形があるところは?

この世界はそんなに広くない。大きな山と谷があり、緯線と経線が交わっているところ……。


一つだけ思い当たる場所があった。というか大きな山なんてこの世界には数か所しか無い。


俺はすぐに世界地図を探し見る。確かに一つだけ合った。ここよりずっと西に3000kmくらい進んだところに山と谷がある。そしてその近くには森が書かれていた。



……迷いはなかった。俺はそこに行く。

そう決意し、俺は立ちあがった。


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