妖怪警察事件簿の為の設定と幾つかのプロット案

とみき ウィズ

第1話

近未来の世界。

妖怪の存在が公式に認められ、人間が妖怪に起こした犯罪と妖怪が人間に起こした犯罪(Y事案と呼ばれる)を取り締まる為に各都道府県警察に人間と妖怪合同の特捜班が設立された。


正式名称はY事案特別捜査課となっているが、人々は「妖怪警察」と呼んだ。

彼らは通常の警察装備のほかに妖怪から提供された特殊装備を持ち、その使用法に熟知した人間の捜査官と同数の妖怪から編成された捜査チームである。


彼らの取り扱う事件の異常さと、Y事案特別捜査課発足当時の異常な捜査員の死亡率の高さ、Y事案に関しての全面的な特権を持つゆえに人々は彼らを忌み嫌い、警察内部でも「化け物課」と影で呼ばれている。


したがってそこに配置される人間の捜査官も優秀だが、あくが強く組織からはみ出した輩が集まるようになった。



Y事案特捜課内には、一種の鑑識と装備開発を兼任する部門がある。

妖怪側から提供された物を利用して人間が利用する為の装備を作ったりする。

例 実体化手袋 妖怪の体を実体として捕らえる手袋、これを装着すると妖怪の体を掴んだりぶん殴ったり出来る。


妖怪は「化け物」と呼ばれると激怒する。

日本人に「ジャップ」いやアフリカ系アメリカ人に「ニガァア」と言うくらい怒る。


警視庁ではY事案捜査課に適性のある警官を常に調べていて、見つかると有無を言わさずに強制的に配置するがその適性の根拠がいまいち頼り無く、往々にして見当違いであることが多い。

従って配置早々に発狂したり自殺する新人が多い。


岡田圭介 28歳  元地域課の巡査 怖い話が大の苦手


勤務中にいきなり呼び出されて泣き叫んで抵抗するのを無理やり配属される。

美人だがむちゃくちゃ冷酷な片桐小枝子警部補(33歳)率いるチームで日々、泣き叫びながらY事案に立ち向かう。


『岡田の初仕事』


深夜に初出動、ある陰気な屋敷。

片桐と熊夜叉(307歳、野獣系統の妖怪)と現場に行った岡田。


苦笑を浮かべた片桐が通報した女に言う。


「奥さん、安心してください。

 これは妖怪ではなく、幽霊です。」


女がヒステリックに叫んだ。


「妖怪だろうが幽霊だろうが化け物には変わりないでしょ!何とかしてください!」


熊夜叉が「化け物」と言う言葉に反応してムッとし、凶悪な笑顔で女に凄んだ。


「奥さん、幽霊は最低100年経たないと妖怪にはならないんですよ。」


牙をむき出してにやりとした熊夜叉。

その顔の恐ろしさに立ったまま気絶する女だった。


片桐が車からスプレー缶を取り出すと岡田に渡して屋敷に顎をしゃくった。


「岡田、ちょろいもんだ、やってこい。」


岡田は顔をこわばらせた。


「えっ、じっ自分ひとりでですか?」


片桐は煙草に火を点けながら答えた。


「幽霊なんてその昇天スプレーで成仏するからな。

 ガキでもできる仕事だ。

 行って来いよ。」

「…でっでも…。」

「小僧!やってこいってんだよ!」


片桐に蹴りを入れられ、一人屋敷に突入する岡田だった。

幽霊が出て来て岡田が悲鳴を上げながら昇天スプレーをかけると恐ろしい形相でのた打ち回るが途中でスプレーが無くなる。

スプレーでべとついた幽霊が岡田に抱きつき、くっつき苦しげにのた打ち回る。

岡田の顔のすぐ横に苦痛に顔を歪める幽霊の顔があった。

半狂乱になる岡田で会った。

屋敷から飛び出て来た岡田を見て腹を抱えて笑う片桐と熊夜叉。

幽霊がスプレーで岡田に張り付いたまま固まった。


熊夜叉がぐふぐふ笑いながら言った。


「しばらくしたら成仏して消滅するから我慢しろ。」

「…しばらくってどれくらいですか?」


岡田、左の肩越しに自分の顔を睨みつけながら固まった幽霊を横目で見ながら訊いた。


「まぁ、3時間くらいだな。」


片桐の返事に岡田失神。



かわいそうな岡田。



『片桐捜査班のメンバー』


岡田の加入によって片桐の捜査班は定員に達した。

岡田が疑問に思う。

(人間と妖怪同数のはずだろ?)

新巻鮭が詰まった木箱を開ける夜叉熊に尋ねる岡田。


「夜叉熊さん、聞いても良いですか?人間とばけ…(夜叉熊がじろりと睨む)あ…妖怪が同数でひとつの班ですよね?

もういっぴ…(夜叉熊が牙をむき出してじろりと睨んだ)あ…あやややもう一人は誰なんですか?」


夜叉熊はにやりと笑い、銃の手入れをしている片桐に顎をしゃくった。


「奴に聞いてみろよ。」


岡田が片桐に近づいてゆくのを横目で見ながら夜叉熊は新巻鮭をバリバリと食った。


「あの、片桐警部補。」

「んっなんだ?」

「確か一個班は人間と妖怪が2人ずつの編成ですよね?」

「そうだ、お前が入って定員となったな。」

「もういっ…(夜叉熊が不機嫌な唸り声をあげて新巻鮭を机に叩きつける)ひぃ!いや、もう一人はどこですか?」


片桐はにやりと淫靡にも見える笑みを浮かべ、岡田の手をとると奥の仮眠室に連れて行った。

仮眠室のドアを閉めて片桐がジャケットを脱ぎ、意味ありげに岡田を見ながらブラウスのボタンをはずし始めた。


「声を上げるなよ。

 よく見ておけ。」


片桐が岡田に言った。


「なっなっななな…。」


岡田は考えても見ない展開に固まった。

片桐がブラウスを脱ぎ捨て、ブラをはずし、手で胸を隠して岡田に近づいた。

健康な男子であれば誰もが前かがみになり脳貧血を起こすほどある部分に血液が集中するほどに美しい裸身だ。

岡田は声も出ずに片桐の裸身に見入った。

そして岡田の顔は引き込まれるように片桐の胸に近づいた。


「もう一人は…ここだ。」


片桐が岡田に背を向けた。

片桐の肩甲骨の間に直径40センチほどの醜悪極まりない老人の顔が張り付いていた。

呆気に取られた岡田の顔の数センチ前で老人の目が開きにたぁーと笑った。


「お前が岡田か…頼りなさそうな顔だな…俺は人面爺だ、よろしくな。」



「きゃー!きゃー!きゃあああああああ!いやああああああああ!」



岡田はクラスで一番嫌いな男子にキャンタマ袋で顔面を往復びんたをされた女子高生のような悲鳴を上げた。


仮眠室から聞こえる岡田の悲鳴を聞きながら夜叉熊が新巻鮭を頬張りながらぐふぐふと笑った。


「人面相といってな、人に寄生しなきゃ存在できんのだ。

だから私が背中を貸してやっている…岡田?」


片桐が振り向くと岡田は泡を吹いて倒れていた。


「大丈夫かこんな奴で…。」


片桐の背中の人面爺が呟いた。


「適性はA-2クラスなんだがな…まぁ、あのテストは今一信頼置けないからな。」


片桐がブラをつけながら呟いた。



片桐は人面爺の分も栄養を取らなくてはならないのでやたらに物を食う、食う、食いまくる、しかし全然太らないのだ。

食う為の経費は全て公費で落ちるから金の心配は無い。



…素敵。



『謎の連続笑死体事件』


明け方の銀座の街に顔を引きつらせて腹を抱えて硬直した女性の死体が見つかる。

検死の結果は笑いすぎによる心筋梗塞。

同様の事件が頻発する。

明け方の街に転がる笑死体。


警視庁はY事案と認定し片桐班の出番が来る。

犯人は人間を笑わせてその波動をすいとる妖怪「腹皮捩り(はらかわよじり)」と判明するが本来人間が死ぬまで笑わせる力のない妖怪だ。


おかしい。


片桐班はオブザーバーとして「ふさぎ童子」(人間をふさぎこませる、暗い顔つきの子供の姿をした妖怪。「腹皮捩り」のお笑いを中和するその言葉はネガティブに満ちていてどんなに爆笑している人間でも即座にふさぎ込ませてしまう)を班に加えて捜査をする。


「腹皮捩り」はまだ売れていないがギャグセンス抜群の若手お笑い芸人に取り付いている事が判明した。

若手芸人の「売れたい!人を笑わせたい!」と言う狂おしいほどの欲望が「腹皮捩り」の力を増幅しているのだ。


電車内で片桐達の尾行に気付いた「腹皮捩り」と売れない若手芸人は電車内で超強力なお笑いを振りまく。

車内は腹を抱えて失禁脱糞嘔吐をしながら笑い転げる人たちの笑い地獄になる。

間一髪で失禁も脱糞も嘔吐もせずに車内から脱出した片桐班は車内の人たちの救出を「ふさぎ童子」に任せて「腹皮捩り」と売れない若手芸人を追う。


ある演芸場に飛び込んだ「腹皮捩り」と売れない若手芸人。

たちまち演芸場は阿鼻叫喚の笑い地獄と化す。

機動隊が周囲を固め、「ふさぎ童子」と共に片桐班が突入する。

舞台の上で対決する「ふさぎ童子」と「腹皮捩り」。


あっという間に「ふさぎ童子」が敗北する。

腹を抱えて爆笑しながら舞台袖に転落する「ふさぎ童子」。

片桐の背中の人面爺が叫ぶ。


「おかしい!相手が強すぎる!人間に憑依しただけであれだけの笑いの威力とは!

 そもそも人が死ぬほどに笑わす威力は無いはずなのじゃが!」

「人面爺!どうすればいいのだ!」

「むぅ、笑いには笑いをぶつけるしかない!

 お前らも何か面白い事をやるのじゃ!でないと奴の笑いの波に飲み込まれてしまうぞ!」


岡田と熊夜叉が顔を見合わせ困惑する。


「面白い事っていっても…。」

「僕だって面白い事なんか…。」


躊躇する2人を片桐が叱り飛ばした。


「お前ら笑い死にしたいか!

 とにかく何かやれ!」


片桐が率先して懐かしのエド・はるみの真似などを始めるが、いかんせん片桐のギャグセンスは人間界でも底辺の部類だった。

熊夜叉や岡田も色々なにやらするが、いかんせんお笑いの威力が段違いだ。


世界のナベアツの最高潮時のお笑いの威力が1ナベアツ(覚えている人いる?)だとすると、若手芸人に憑依した「腹皮捩り」のお笑いの威力はゆうに、14320ナベアツを突破している。


徐々に「はらわた捩り」と売れない若手芸人のお笑いの波が浸透してきてげらげら笑い、口から涎をたなびかせながらも必死にお笑いを発信して戦う片桐班であった。

岡田などは失禁してしまう。

もはや勝負は付いたかのようだ。


その時、舞台袖に落ちた「ふさぎ童子」がぜいぜい言いながら「腹皮捩り」の背後に回りこみ、その背中に取り付いているもう一人の妖怪を「腹皮捩り」から引き剥がした。

「腹皮捩り」に取り付いていたのは妖怪「後押し爺(あとおしじじい。自分自体はとてもひ弱いが、取り付かれた妖怪や人間のやる気などを異常に向上させて本来の数百倍の力を引き出す。昔は豊臣秀吉、最近では松岡修造や中山きんに君などに憑いていた。)


「腹皮捩り」の威力が弱まり制圧に成功する片桐班。

片桐たちが笑いながら「ふさぎ童子」に尋ねる。


「ふひゃひゃひゃ!何だその小汚い奴は?ひゃひー!」

「こいつは妖怪「後押し爺」だこいつが「腹皮捩り」に取り付き更に若手芸人に取り付いたので、あの信じられない力になったのだ。」

「ひゃひー!それは…それは…面白いじゃないか!にゃひゃひゃひゃ!」


片桐は涎を垂らして笑いながら制圧した「はらわた捩り」と「後押し爺」に妖怪拘束手錠をかけた。

「むひゅー!片桐警部補よだれよだれ!」

「にゃひー!岡田!お前の馬鹿面何とかならんかぁあひゃひゃひゃはあー!」

「げひー!熊夜叉!股間に新巻鮭はさむのやめるのじゃー!うひひひひいいいい!」


片桐班全員が重度の笑い症に罹り全治2ヶ月と診断されて、その間まったく使い物にならなくなった。



以上。

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