第5話

顔合わせが始まると、親達は別で会話をして、ルーク達は3人で机を囲んでいた。


「あの、ルーク様、私の話は退屈ですか?」


「いえ、そんな事はないのですが……」


リーゼロッテの話はちゃんと聞いているのだが、それは貴族の茶会のような当たり障りのない会話だ。

ルークはそれよりも、ずっと睨んでくるセレスティアが気になっていた。


「あの、何か御用でしょうか?」


「なんでもないわ!」


なんでもない。と言いながらもその後もジッとルークを睨んでくるセレスティアにルークは苦笑いだ。


「セレスティア様は綺麗なルーク様のお顔に見惚れていらっしゃるのね」


「な、ち、違うわよ!」


リーゼロッテの言葉を慌てて否定するセレスティアはワタワタと狼狽えている。


ルークの顔は母親譲りで、男前というよりも綺麗という言葉が似合う顔立ち。しかもまだ第二次性徴期が始まっていないようで、髭や骨格のゴツさも出ていない。

貴族には容姿端麗な物が多いので、ルークはそこまで突出してはいないが、甘いマスクである事に変わりはない。


しかし、セレスティアの視線は見惚れていたのではなく、明らかに睨んでいた。


「リ、リーゼロッテは納得しているの? こんな卑怯なヤツに嫁入りなんて! 私達は素晴らしいスキルを授かって国のために戦場で活躍するはずだったのよ?」


「セレスティア様、ならばこの結婚も国のためですよ。私達はルーク様が魔法を使わないための褒美なのですから。ね、ルーク様?」


セレスティアの意見を否定したリーゼロッテがルークの方を見て微笑む。

ルークがどうしたものかと国王達の方をチラリと見ると、国王と宰相が試すように、しかし面白そうにルークを見ていた。マークだけは心配そうな表情でルークを見ている。


ルークはため息を溢したいのをグッと堪える。


この結婚は国王と宰相からお願いされたものだがルークは男爵の子である。

国として、国王として守らなければいけない体裁というものがある。


真実は国王達からのお願いなのだが、表向きはルークの我儘な要求なのであった。


「ええ。だから仲良くして下さいね、セレスティア様?」


「な……この、エッチ! スケベ! 変態! 色欲魔〜!」


ルークの言葉にセレスティアは顔を真っ赤に染めながらそう叫んだ。


「あらあら、セレスティア様は何を想像したのかしら? ねえ、ルーク様?」


「は、ははは……」


国王達の体裁をルークが受け入れているのは、前世で長い間会社の上下関係を学んだという以外にも理由がある。

それはこの体裁がルークを守るための盾にもなっているからだ。


《究極神聖魔法》と《誤爆》のスキルを併せ持つルークは懐に持った爆弾であり、貴族達からは処刑を求める声が多く上がった。

しかし、《究極神聖魔法》を封じられる枷など無く、捕える時や処刑の時などにルークが抵抗して魔法が発動し、誤爆によって国が滅ぶならば、ルークを懐柔して魔法を使わせないのが最善であると国王が貴族達を説得したのであった。


セレスティアとリーゼロッテはルークを懐柔するための褒美という程だ。

もともと王女は国交のために他国に嫁ぐ事もある。それは戦争を起こさないための程のいい人質でもあるのだ。


しかしセレスティアは王女でありながら《聖剣》という他とは違う強力なスキルを持つため他国に嫁ぐことはできない。

ならばここが使い時である。というのが国王の言い分であった。


もちろん国王の本心は娘を戦場に出したくない親心なのだが、それは言えない話。


「セレスティア様、そんなに怒っては可愛い顔が台無しですよ?」


恥ずかしそうに暴言を吐くセレスティアを宥めるために、ルークは貴族らしい言葉で宥めたつもりであった。


貴族の女性なら言われ慣れているだろうと思って発した言葉であったが、実は箱入りで、男の子の参加する茶会やパーティーに参加したことがないセレスティアは更に顔を赤く染め上げる。


「う、うるさいうるさいうるさーい! この、すけこましぃ!」


そう言ってセレスティアがソファのクッションをルークに投げつける。


「危ないじゃないですか、セレスティア様」


「キャッチするんじゃないわよ、バカー!」


「そんな無茶苦茶な!」


ルークとセレスティアのやり取りをリーゼロッテは手で口元を隠しながらクスクスと笑い、その子供達の様子を国王と宰相は微笑ましく見守る。

ただ1人マークだけはハンカチで額の汗を拭きながら心配そうにしていた。

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誤爆の大魔法使い〜魔法禁止から始まるハーレムライフ?〜 シュガースプーン。 @shugashuga

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