第17話 

結果的に言うと俺の結婚相手が増えた。


翌日の結婚式では本来の結婚相手であるレイナと追加の結婚相手であるシャーディとも結婚することになった。


王様としては「ここで魔王軍との友好を確かなものにしたい」ということで王女との結婚を許したらしい。


結婚式を終えた俺はスイレンを連れて会議室へと帰ってきていた。


こいつは魔族なので俺が好き放題に殴った傷も当日の夜くらいには治っていた。


まぁ、魔族の回復力も計算して殴っていたので予想のうちなんだが。


そんなスイレンを椅子に縛り付けるとスイレンが口を開いた。


「私のことをそんなに独り占めしたいの?えへ、えへへへ、ぐへへへ。そんなことしなくても逃げないよ」

「何を言ってるんだお前は」

「殴ってもいいんだよ?」


(無視)


俺は魔王ちゃんにこれまでのことを話した。


人間の国であったことのすべてを。


「というわけで、休暇を終えてきたよ」

「話は聞きましたが……それは休暇なのですか?私は心配なのです。タクト兄様が過労死しないか」


首を傾げていた魔王ちゃん。


どこからどう見ても休暇だと思うんだけど。


「魔王ちゃんに仕える時間以外は休暇だよ」


俺はスイレンに目を向けた。


「私の顔をそんなに見たい?」

「魔王ちゃんに言うことのひとつでもないのかと思ってな」


蔑むような目を向けてやった。


「もっと、もっとその目で見て……ブルッ」


「お前は魔王ちゃんの会議を無断で欠席した。その事についてなにか話したいことのひとつや2つあるだろ?」

「ない(キッパリ)」


(そっかぁ)


バキッ。


顔を殴りつけてやったらすっ飛んで行った。


椅子に縛り付けられたままの状態で壁に頭からめり込んでいた。


「タクト様。その辺にしておいてくれませんか?」


オッサムが話しかけてきた。


手にはコンクリートが入ったバケツやブラシみたいなのを持ってた。


「あなたが幹部を殴って吹っ飛ばして壁にめり込ませ、穴を開ける度に修復しているのが誰だと思っているのですか」


「勝手に直ってるんだろう?魔王城だからそういう機能があるんだろ?」


「ひどいっ!勝手には直りませんよ?!」


俺はオッサムからコンクリートの入ったバケツを奪い取った。


「なにをなさるつもりですか?」


「あの恥知らずがもう裏切れないように壁に固定する」


「ふがっ……」


大きく口を開けているオッサム。


「ワシより酷い目に会うやつがいるとは……思いもよらんかったな」


ブツブツ呟いているオッサム。


スイレンの体は腰くらいまで壁にめり込んでいた。


壁と腰が密着している部分をコンクリートで埋めていく。


「そこで反省していろスイレン。気が向いたら取り出してやる」

「タクト様ぁ……」

「なんだ?」

「私の腰の上の壁に【タクト様専用】と書いた札を用意しておいてくださいませ♡」


無視してコンクリートを【加速魔法】で固めた。


コンコン。


壁を叩いてみたがきっちり固まっていた。


「よし。そこで反省しているがいい」


俺は魔王ちゃんの傍まで戻った。


「魔王ちゃん、次の会議、するんだよね?」


「う〜ん」


悩んでた。


てっきり会議をするものだと思っていたのだが……。


「会議は……しましょうか、うん」


魔王ちゃんは会議室にいる全員に目を向けた。


「皆さん今の話を聞いていたと思いますが、タクト兄様は休んでいたと思いますか?私にはとてもそうは思えないのですが」


オッサムも頷いていた。


「たしかに、それは休暇とは言えませんな。ベータ、お前はどう見る?」


メガネ、クイッ。


ベータが口を開いた。


「僕のデータによると彼の中のストレスは限界を超えているように見える」


アリシアが頷いてた。


「たしかに。私もそう思う。この執事はストレスが溜まりに溜まってるんだと思う」


「うんうん、ストレスは美容の大敵よ、タクトちゃん」


オカーマもそんなことを言っている。


次にゴクアークも口を開いた。


「この執事。偉大なワシの肖像画を踏んで蹴って膝打ちして粉々にしておった。よっぽどストレスが溜まっているのだろう」


魔王ちゃんが咳払いした。


「えー、こほん。私はここで皆さんと話し合いたいと思うのです」


魔王ちゃんはとんでもないことを言った。


「タクト兄様に癒しの時間を与えたいのですが、どう思いますか?兄様はかなりストレスが溜まっちゃってると私も思います」


「でも、具体的に癒しの時間ってなんなのさ?魔王ちゃん。この執事が癒される時間ってなに?」


「それを私たちで考えるのです」


魔王ちゃんが俺を見てきた。


「私たちはサプライズがしたいのです。兄様は今からの会議を休んで貰えますか?」


俺は頷いた。


「なら、先に休ませてもらうよ」


俺はアリシアの後ろを通りがかったときにボソッと囁いた。


「魔王ちゃんの言うことだ。俺は反対派しないがかえってストレスがたまらないようにがんばれよ?」

「は、はひぃ……」


部屋から出ていこうとする時に俺はホワイトボードの例の数字を書き換えた。


現在、会議参加者

7(+部外者2)/13(+2)




そのとき、壁から声が聞こえてくる。


「タクト様。私はどうやって会議に参加したらいいの?」


スイレンの声。


「壁に埋まってても頑張って声を出せ。それくらいはできるだろ?」







【補足】


一区切りついたので不定期更新です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不当な理由で妹系魔王ちゃんが幹部連中に裏切られて泣いたので、執事の俺が全員フルボッコにして魔王ちゃんの前に連れていくことにした。 にこん @nicon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ