ご近所ＳＴＯＲＹⅢ ノウハウ・オブ・シンギュラリテイ

第4話

　朝の少し強い風が気持ちがいい。都内を車で走行中に、スクランブル信号機に差し掛かった。交差する忙しそうに排気ガスを吐く自動車や大型トラック、バイクなども、その風の中で取り分けて心地良さそうにいしているかのようだった。その時、助手席の原田が唐突に聞いてきた。後部座席にはアンジェとマルカがいる。

「雷蔵さん。シンギュラリテイって知っていますか？　技術的特異点という意味があるんだそうです」

「え？！　知らないけれど」

「最近、俺の情報屋たちが口をそろえて言っているんですよ。このままじゃ、ノウハウたちが危険かも知れないって」

「どういう意味なんだい？　原田？」

「雷蔵様。シンギュラリテイ　技術的特異点というのは、この場合はノウハウですね。ノウハウが自己フィードバックする機能によって、人間を超えていく知能を獲得してしまうという仮説です」

　アンジェがわかりやすく説明してくれた。

　それにしても、風が心地良いなあ。

「そうか……なんだか、怖い話だね。けど、まあ。そうなる可能性は今の時代では実感できるかもね。ノウハウも複雑に高度化しているっていうし……」