extra 断ち紡ぐ気持ちと道

『貴女は、、、殺さないといけない。』


私の胸に剣を突き刺して抜かれる。

正確に心臓を貫かれておりもう助からないだろう。


私はこの国の王女。


刺した者は外套を深く被っており顔は見えない。

声はまだ幼さなさがあり手は細い。

コレだけでも少女だと分かる。


ただ、刺された理由は分からない。


胸を抑える。


抑える意味はなく血は止めどなく流れ、身体から体温がなくなって行く感覚がある。


息は荒く視界はボヤける。


其れを観ていた彼女は剣を捨てて近づき抱き寄せてきた。


身長が低いから彼女の頭は丁度私の胸の辺り。

血に塗れても抱く腕は緩めてくれない。


「何で?」


意味が分からなかった。

刺された理由。

抱き締められた理由。


『貴女は、、、この先に世界、、をほ、滅ぼす。可能性、、だけなら、、殺しはしなかった。』

声は震えていた。


彼女は其れでも続ける。


『でも、、、貴女の未来は全て、、、私が、、、打つ事で、、、終わる。』

其れはどれを掴んでも世界が滅ぶ。

貴女にある魔王の因子が発芽前の種の今、

殺せば世界が維持され救われる。


『だから、、、ごめんなさい。、、』


驚いた。


私が世界を滅ぼすと、そう彼女は言った。

どの道を辿っても結果は同じ。

なら、その前にこうして彼女が殺すのだと言う。


私には何があったのだろう。


刺した彼女を憎めば良いのか、刺し返せば良いのか意識が朦朧としてきた。


目の前の少女がボヤける。


不意に彼女の顔が、表情が見たくなった。

思い腕を彼女の頬に添え優しく上にあげる。


、、、、、。



観られた彼女は絶望感を漂わせていた。

私はこの顔、表情をいつか観た事がある。

私は、、、、あの子に、、、、わ、、す、、、


彼女の方へ倒れる。


彼女は抵抗する事なく倒れた。

彼女の胸は温かく、心地良かった。


「あぁ、ミコト、、ひ、さしぶり、、、ね、、」


彼女の肩が揺れる。

嗚咽を上げただ泣きながら抱き締められる。


何故久しぶりと言ったのか、


何故私は彼女に会えて嬉しいと感じてるのか、


何故、貴女の名前を知っていたのか、、、



「っ、、はぁ、、、ミコトって言うのよね?」


彼女は此方を観ないが頷く。


「ぅぐっ、、、は、、貴女をに、憎んだりしないわ、、、止めてくれ、、」


ありがとう。


、、、


、、、、、



、、、、、、、



、、、、、、、、、あぁ、彼女ともっと、、、、











夢を観た。


其れはいつかの終わり。


私の最期。


悲しいと思う。

其れは私ではなく刺した彼女が


彼女はきっと知っていたのだ。私が旧知の仲であると、


彼女は探したのだろう私の生きる道を。


その上での行動なら私は貴女に愛おしさすら覚える。

彼女の手で終える事が出来たのだから。

あそこまで優しい殺され方は無いだろう。

刺されても痛くない様に魔法が掛けられており、感覚すら無かった。


そして、最期まで抱きしめてくれて、また好きになった。


おかしいかな?


ふふ、きっとおかしいのでしょうね。

でも、試験のあの日から私は、、、、



だからこそ、エリシアさんが羨ましいわ。



私はこの夢が現実になっても構わない。

しかし、彼女の泣く顔は見たくない。


ならば、、、


引き出しから日記を取り出す。

一番奥のページに夢の内容を書く。

刺された時の事を鮮明に。

彼女の様相も詳しく。


夢は見ても大抵直ぐ忘れてしまう。

けれど、この夢は未だ忘れさせてはくれないかの様に頭に残る。


書き記した物をしまう。


これはきっと彼女からの悲鳴。

辿り着けなかった彼女の、、、


ならば私はこの未来を覆す。

私がやれば出来るかもしれない。



私は貴女を、、、お慕えするミコトが幸せになれる様に


私もそうなれる様に



朝早い寮の一室。

窓の外を見る。


今日は天気も良く少し肌寒い様です。

羽織る物を取り着込む。

外の庭に2人。


ミコトとエリシアさん。

何やら運動をしてる様です。


ミコトがエリシアさんに何かを教えている。

その二人はとても幸せそう。


ーーチクン


胸に痛みが走ります。

何故私では無いのか。


良い朝だったのに見ただけで落ち込んでしまう。


会って間もない。


食堂で少し話すだけ、


其れでもあの試験で見た魔法。


食堂で話す彼女の顔。

揶揄ったときのあの表情。


全てが私の理想。


そんな理想の彼女と居るエリシア。

突然嫉妬もします。


けれど、あれほどぴったりな二人もいないでしょう。


この二つの気持ちは両立出来そうにありません。


其れに、先日の教室でのキス。


其れを見た途端に胸が抉られた様に痛かった、

あの様に深いキスをする仲になったのだろう。


そうでなくても、自己紹介の時の騒動でエリシアが貶められそうになった時の行動。


羨ましい。


同じ部屋でキスをするだけとも思えません。


先日のベッドの件から発展していて身体を重ねていてもおかしくない。


ああ、何故私ではないの?


胸にどろっとした黒いモノが溜まる感覚。

これは良くないモノ、でも止める方法はない。



一体どうすれば、、、。


夢の事もある。彼女の予想を越える道を探しながらこの気持ちとも過ごさなければいけないのか。



辛い。



私だって貴女を思っているのに、


貴女と深く交わりたいと


ずっと側に居たいと


好意を向けて欲しいと


思っているのに、、、、。




庭で二人を見つめている。



私は、、、


どうすれば良いのでしょうか。

様々な葛藤。

嫉妬に独占欲と黒い感情が渦巻きながら思案する。



其れでも私が幸せになれる道は無さそうだった。


見つめる彼女を想って、夢に見た彼女を思って今日がまた始まる。


憂鬱だが、彼女達に嫉妬して、胸がチクチクして、夢の件も探さないと行けなくて


私も貴女に思われたくて


また揶揄って彼女との時間を私にも彼女にも刻み込んで忘れさせない様にしたい。


"まだ"口に出せませんが



ーーお慕いしておりますミコト。


せめて、心の中ではそう言いたい。



ーーコンコン


使用人が来たみたい。

顔の状態をささっと直して応答する。



学校の支度を整えてもらって私は気持ちを切り替えた。


彼女に振り向いてもらう為。


深呼吸し、精神を整えてから部屋を後にした。






あとがきーーーー


読んでくれてありがとう!

今回はお姫様の感情の揺れ動きや夢の謎等を駆け足で書きました。

何で予知夢の様な物が見えたのか?

そしてその内容は追々深掘りしていこうと思う。


【プチ解説】

光属性と闇属性について。

この両属性は他の属性と異なり、代償が伴う。

例えばキズの手当てで光魔法のヒールを使った場合。自分の生命力と魔力を用いて相手に行使する。キズが酷ければその分使用する生命力が多くなる。攻撃の場合も然りである。


生命力を使用すると言うものは元が500の時に誰かを回復させて480になりました。

と、なった場合、無くなった20は回復する事は無い。(レベルによる生命力の増加はあれど失った20が元に戻る事があるのでは無い。)


闇の場合も同じである。


しかし、勇者や聖女、魔王のスキルを持つ者は代償を受ける事なく行使できる。


偽物は代償を跳ね返す事は出来ない。

代償を受けてもミコトが平気なのは単に生命力が元々無いから。ミコトの光、闇の属性は基本的に他者に劣る。しかし、魔力を千倍以上使って補い、他者の物より良く見せている。


生命力を魔力換算すると


生命力=魔力

  1 =1000

生命力+魔力=ヒール

 10 +200 =発動可能

0 +10200=発動可能

この様に凄くコスパが悪くなる。

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愚者のワスレモノ 偏人 @ksrg_076

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