11話 始まり

ーーい、


ーー起きてください!


「ミコトさん!起きてください!」


「ふぁ〜ふぅ、、おはよ、エリシア」

眠い目を擦り愛しい彼女に擦り寄る。

彼女は既に何か着ており、かっちりとした肌触りだった。


「んもう!遅れてしまいます!」

可愛いですが、起きてくれないと困ります!


そんな、、未だ大丈夫だよ。


彼女の腰を抱く。

新品の制服の匂い。


エリシアの匂いじゃない。


むぅ、、、なんだかヤです。


これで目が冴えたのも嫌なのでムクっと起きればエリシアの顔を両手で抱き寄せる。

流れる様に深くキスをする。


甘い。


そして、何よりエリシアの匂いがする。


でも、直ぐに離されてしまってショックです。


「う、嬉しいですが!まず!着替えて!食堂へ急ぎますよ!」


不満はすこし残ったがさっきほどではないので起き上がり制服を身に纏う。


私がこれを着ると制服に着させられている感が否めないがエリシアだとしっかりと御していてしっかりと制服をしていた。


「似合ってますね」

にこやかに言われて仕舞えばこれも悪くないなと思う。

「エリシアのは良いですね。似合ってます。」


二人の制服は決定的にデザインが異なる。

これは平民と貴族を分ける意味合いがあるらしい。元は差別なくを校訓として建てられた。

しかし、差別派の貴族に年々押されて今では平等の“び”の字もありません。

試験の際も差別派の貴族とそうでない者は半々くらいだったしあまり良い傾向ではないかもしれない。


「本当はミコトさんと同じが良かったです。」


むむっ、嬉しいですが、、


「ミコトです。」


「ええ、はい」


「ですから!ミコト“さん”ではないです!」


「あ、そ、そうですよね、も、もうあんなことしたのに敬称があると距離ありますものね、、、」

照れる彼女を見て私は満足する。

彼女の手を取り食堂へ向かう。



食堂に行くと、、、


人で溢れていた。昨日までこんなに人が居たなんて、、、


気付きもしなかった。


カウンターまでエリシアと手を繋いで行く。

少し、、並んだが何とかおばちゃんの前まで来れた。


其処で彼女が何時も食べてる物を二人分注文し、席をとり座る。皆平民と貴族が共にいるのが珍しいのか視線を感じる。

しかし、彼女は気にする事なく


「さ、食べましょう?」


「うん!」


時間も限られているので談笑は控えめにささっと食べる。

彼女が寮に来てから、朝に食べてると言う料理は何というかフランスの朝食?

みたいな感じで新鮮だった。



「「ごちそうさまでした」」


二人は食べ終えてエリシアの分のトレーや食器を重ねて持つ。


「ミコト、はしたないですよ!」

困った様に言う彼女。

こういった点は世界が違うと再確認させられる。ただ、貴族と平民での違いかもしれないが。


「良いんです、お嬢様の御手を煩わせる訳には行きませんので!」

使用人風に言うと彼女はムッとして席を立つ。

何がダメだってんでしょう?

カウンターの方へ行く彼女を追いかけてトレーを戻す。お礼を伝えてから彼女の所へ急ぐ。


「エリシア、待って下さい!」

彼女の手を掴んで歩く速度を落とす。


「、、、。」プイッ


完全にヘソを曲げてしまいました。

どうしましょう。


「エリシア?どうしました?」

「、、。」フンッ 顔を逸らす。


逸らされた顔を此方に向けてキスをする。

周りに人は居たが関係ない。

エリシアの方が大切だから。


「エリシア、何で怒るんですか?」

再度聞いてみる。

視線は下を向き彼女の表情は見えなかったが耳は赤くなっていた。


「だって、使用人みたいに急に距離を空けるから、、、」

声は小さかったがまぁ、何とも可愛らしい理由だった事に安心して手を繋ぎ直す。


「エリシア、大丈夫です。使用人とはあのような事しませんし、こうやって手も繋ぎません。」

ただの冗談です。と優しく声を掛ければコクンと頷く。


私より背が高くてかっこいいエリシアが小さい子供の様に思えて何だか微笑ましく思えた。


それから、荷物を取りに部屋に戻ってキスをしてから学校へ急いだ。


(キスの所為でギリギリになった。)




そこから、学校前に貼り出された教室の割り当てを見る。


私達は同じ教室だった。


二人で喜びながら教室へ行き、席に着く。

教室には試験で見た顔がチラホラと見受けられた。


あ、イルミアニスもいる!


何てやっていたらエリシアはまた拗ねてしまったので先生が来るまでは挨拶に行くのをやめて彼女を宥めていた。

面倒だと思うのかも知れないが惚れた弱みか、全てが可愛い見えて更に愛おしさが増した。

(流石に教室内でキスはできなかった。)






先生が教室に入って来た。

どうやら担任となるのは試験官をしていた先生らしい。


教壇の前に立つ。


「初めましての方は初めて、知っている方はまた会いましたね。これより入学式があります。一人一人の自己紹介は後にしましょうか。」

では、なるべく列になって私について来て下さい。


ドアを開けて廊下に出る。

ただ、誰も出て行かないのでエリシアの手を引いて先に出た。

「ちょっと!ミコト!」

「照れてないで行きますよ!」

廊下にいた先生の後ろに追いつく。

それから流れる様に後から人が続く。

「あら、あなた達が1番早かったわね。」

“達”とは付けてるが私の方は見ない。

それはそうだろう。

試験の際に泥を塗ったようなものなのだ。

あんな顔もされたし、、、

少し喋ってからまた前を向いて歩き出した。


何かこうまでされると少しばかり不快感が募る。


ーー!?


其れを察してか握る手に優しくも力が込められた。彼女の顔を見やればニコッと笑うだけ。

それだけが、とても心地よかった。


また前を向き、先生の、、、えっと?カヨ?

だったっけ?の後ろから千里眼で覗く。


千里眼は真正面からだとあらゆる物が見られるが後ろからだとその背景しか見れない。

つまり、過去しか見れない。


だが、、、


この人の過去はダメだった。

今は騒ぎになる。

今後にあの人と一緒に始末する事にした。


未来は見えなくてもエリシアに害を及ぼす可能性が少しでもあれば消す。

この国が消えても良い。この学校ももう要らない。


ただ、エリシアさえいれば、、何も要らない。



歩くその背中によかったね未だ少し生きられるねと思いながらついて行く。





入学式、特に面白い事はない。

消す対象が近くにいるのに素直に楽しめない。


ただ、実力試験の結果的に私が一番だったのにイルミアニスが入学主席として挨拶をしていた。


これに関してはどうでも良かったが、挨拶してる本人は少し不満そうでした。



挨拶を終えて、その後も滞りなく進み、退場して教室へ戻る。


そこから一人一人の自己紹介と目標と何か好きな魔法を言うとのこと。


平民から順に


「私の名前はアルガナ。目標はコウタ様の様に剣と魔法を自在に扱えるようになる事です。好きな魔法はーーー」


どんどんと進んで行き


「えーと、私はミールス。目標は素晴らしい魔道具を作ること。好きな魔法はーーー」




「私はルーミアって言います〜。目標は誰かを守れるくらい強くなる事で〜、好きな魔法はーーー」


そして順番は進んで行き、、、


「私はミコト。目標は、、、」

エリシアの肩に手を乗せて、少しだけ勇気をもらう。人は殺せるのに発表とかは全然ダメで少し緊張する。


「目標は一人、不老不死にする事。好きな魔法は、解析/鑑定の魔法式。以上です。」


目標を言った際の反応はまちまちだったが彼女が微笑んでくれたのでもう、周りはどうでも良かった。

好きな魔法に関しては昔、、、いつかは分からないけどいつの間にか知ってたもので、凄く思い入れがある?物なのです。


それから少し騒つくことがあったが、それでも止まることはなく貴族の順となった。


「私はエリシア=エルクレンと言います。目標はある人の隣に立てるくらい強くなる事。好きな魔法は火で花を作る魔法です。」


知らなかった。けど、知らない彼女を知れて良かった。

席に着けば直ぐに手を握ってくれた。

こう言うダメな事をしている感じがしてドキドキした。



次は


「わたくしはイルミアニス=ガイスフィアと申します。此処では王族でも貴族でもありません。ですので気軽にお呼び下さい。目標は、、、魔法の更なる可能性の模索?でしょうか。好きな魔法は生活魔法全般ですわ。」


何だか此方を見て来た気がする。


エリシアの手も強く、、、ちょっと痛いかも知れないけど敢えて気にしない。


其処から貴族も順に発表していき、、、


「名前はアズライト=トアルスと言いますの。目標は、、、そうですわね、試験時の不正を暴くことかしら?」


明らかに視線を感じる。

いや、誰ですか貴女!


エリシアの手がいたたたたたたた、、、


どうどう、抑えて下さい。


あの程度輩は何の影響もない。

だから無視すれば良い。


だから、、、


「エリシア、耐えてね?」小声で囁く。

急に耳で囁かれ肩を跳ねさせたが此方を見て不満そうに頷く。


もう、どうでも良かったが彼女の自己紹介?は演説のように長かった。


「ーーですから!わたくし、見ちゃいましたのあの!黒い髪をした平民が!エルクレンの者と結託ーーー」


流石に口が過ぎてる。


私がこの程度距離で殺せない人はいない。

だけど、、、殺してはエリシアが悲しむ。


だからあの薄汚い口を封じるべく彼女の顔面を机に叩きつけた。


急な出来事。


皆が、、、と言うよりこのゴミが静かになった事で教室は正しい静音となる。


ゴミの頭を掴んで


「ねぇ?私の事は何言っても良いよ?寛大な心で許してやる。けどさ、お前如きクズが人の形を取っただけの魔獣如きがエリシアを騙る事は許されないよ?ねぇ?聞いてる?」


いつもは控えていた。

でも、抑えられない。

感情に突き動かされる、口調も行動も。

ただ、彼女の名を尊厳を穢されたのだ。本来なら生かすべきじゃない。


でも、、、


「其処までにしときましょう?ねえ?」

彼女から言われてしまったのだから無視するわけに行かなかった。


ゴミの頭を離してキズを消す。(これ以上大事にしたく無いので)

そして、手を拭いてから彼女と席についた。


其処からは一旦止まるも、、、キズを完全に消した事や彼女の言動で私のお咎めは無く、不満たらたらなゴミを置いて次へと進んだ。


名前?そんなの知りません!


「え、えと私はアニティア=ガルランデウスと、言います。も、目標はーーー」


もう聞く気にもなれず途中からエリシアの肩を借りて眠ることにした。


エリシアも其れを受け入れてくれて、、、


何と!膝枕をしてくれた。


近くの人からの視線は痛いがもう、どうでも良かった。








「ミコト、起きて下さい。」


未だ眠い〜エリしぁ〜、、、


「ダーメ、起きなきゃ、、、」


ーーー舌入れちゃいますよ?


いれてぇ〜


「っ!?、、、しょ、しょうがないですね、、」


んちゅ、、れろ、、っん、、く、、ちゅ、、


あ、甘い〜



、、、、




、、、、、、、?




???



部屋だったっけ?



教室で寝てから、、、、




?教室、、、、、?






バッ!!


眼を開ける。


視界にはエリシアだけ、


背に残ってる感覚は板のような椅子のような、、、


「〜〜〜っ!!」

エリシアの肩あたりを叩く。


すると、れろぉっと舌を抜き取った彼女が恥ずかしそうに、けどイタズラな顔をしてニヤリとしてる。



っっっ!!! (えっちだ!!)


幸い??


教室の私たちの席の周りには人は居らず、キスの現場は見られてはいなかった。


エリシアはと言うと、、


「ん〜甘い」少し惚けていた。


今日は初日で授業はない筈だ。

こんなえっちな子を他の人に見せられないので、手を引いて学校を後にした。





当の教室では、、、


「何やってんのよ!!」イルミアニスの声

顔が真っ赤になりながら後にした彼女達に叫んでいたという、、、、


後にしっかりとバレていた事を知る。












それを知らない2人は

「え、えエリシア〜!きょ、教室ではダメです〜!!」


「だって起きてくださらなかったですから」

其れに貴女が言ったんですよ?


と、きゃっきゃしてました。
















某所にて、、、


あの子中々やるのね、、、。


あの使用人じゃあダメね。


私でも見えなかった。

アレが全力なら未だ良かったが、見た感じだとそうでは無さそう。


目的の為とはいえ骨が折れそうだわ


でも、、


エリシア=エルクレン。


彼女の名前が出た瞬間のアレ。

人質に取れれば此方の賭けに軍配があがる。


試合に勝てなくてもいいの。勝負にすらならなくても良いの。


最後に私が居ればそれで、、、、


取り敢えず使用人に追加で魔力渡してそれからまあ、観察しましょうか。



「待ってて下さいね。康太君。」


誰もいない部屋。

何も無い所。

ねっとりと囁かれる愛の言葉。



それはただ一つの目的の為に、、、、、。














あとがきーーーー


読んで頂きありがとう!


まあまあ何と公衆の面前でやっちまいましたね。貴族と平民であれば平民側が不利になるかと思いますが。

今回はクラスのメンツに姫様がいたり、状況が大勢が確認していて明らかに貴族を貶めていたのでこの様な結果になりました。


それは、それ、


皆の前でキスしちゃうんはダメでしょ。

しかも、ディープなやつ、、、、。


え?2人はこの路線なのかって?


知りませんよ!最初の設定忘れましたけど!!


断じてこんな感じではなかったです!


【プチ解説】

extraに描写された命と本編ミコト何か違くない?(extra0.00…1では無いやつ)


それはですね、、、


簡単に言うと。


本物だけどそれと同じくらい偽物だからと言うのが回答になります。


人の心臓を入れ替えて動いたとき、死体が動いたのか生き返ったのか



まあ、その矛盾そこが今のミコトと本来の命の違いです。(この設定は最初からあります。何かこう言うのめっちゃ好きなんですよー)


かと言ってその気持ちが偽物と言うわけでも無いので其処は留意して楽しんで下さい。

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