また今度ね

(募集中)

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起きると、雨粒の優しく窓をたたく音が耳に入って来た。


今日はたまたま2人とも休みで、最近は随分あたたかくなってきたしピクニックでも行けたらいいね、なんて言っていたのに。


「あれ?雨なの……?」

布団が蠢いて、後ろから声がかかった。

「おはよう、残念ながら雨だねぇ」

振り返ると愛らしい恋人が布団の中でくすくすと笑っている。

「流石きみは雨男だね。誕生日まで雨降らすんだ」

窓の外と俺の顔を見比べては楽しそうに笑う。


「でもこの雨じゃ出かけたくなくなるねぇ」

「久々にゆっくりデート出来ると思ったのに……」

「お出かけはまた今度だね」

「そう、だね……」


少し前までだと、この人はそんなにも俺との終わりを迎えたいのかと言いたくなるほど俺たち2人の未来に卑屈になっていた。いつ別れるのかも分からないし、なんてよく聞いたものだ。それが今となっては、

"また今度行けばいい"

さり気ない一言、それでも俺は嬉しく思う。この人の未来に自然と俺が存在していることが。


「じゃあ今日は…ほら、きみもお布団入って、ニ度寝しちゃお」

いたずらっ子みたいな顔で俺の服の裾を引っ張る。

「お昼もピザか何か頼んでさぁ、ぐぅたらしちゃうのもいいよねー」

楽しそうに提案してくる恋人に頬が緩むのを堪えられない。


甘い誘いに乗ってあたたかい布団に戻る。

「そうだなぁ、俺お昼は寿司がいいな。お誕生日なんで!」

「あははっ寿司の出前取る?なにきみはお誕生日と言えば寿司なの?」

「豪華でしょ?」

「豪華=寿司なの?テンプレートな脳みそだなぁ」

「いいでしょー別にー」

「はいはい、じゃあお寿司ね」

「やったー!」

「子供か……!!」


肌寒い雨の日の朝に恋人と分かち合うぬくもりは至福で、何にも代えがたい。

ひとつの布団の中で笑い合って、お昼の算段をする。これ以上ないと思える幸せに心も温かくなる。


「ねぇ……」

「うん?」

「今年はさぁお互い忙しくて遠出も出来なかったけど、来年はどっか田舎の温泉にでも行こうね」

「……はい」


未来の話をしてくれること、ふたりの話をしてくれること。

いつまでもここに居ていいと感じさせてくれる話し方。

今ちょっと、泣きそうになった。


「ねぇ」

「うん?」

「お誕生日おめでとう」

「ありがとう」


これからもずっと、今度の誕生日もずっと

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