眼鏡の理由

告白を受け入れた俺は、一つだけ足立に約束してもらった…学校では、今までと同じように接してもらう事。

まさか、疑われる事は無いだろうが、足立が俺なんかを好きなんてバレた日には、女子から確実に抹殺される…

これは、間違い無い…考えただけで震える。

そう伝えると

「七瀬の事はオレが守るから、バレても全然構わないんだけどなぁ…」

なんて言いながらも、渋々承諾してくれた足立。


「じゃ、2人きりの時は良いって事?」

何が良いのかは、返答に困ったが…よく分からないままに、頷いた。

だから、同じクラスだけど、俺たちは、別々のグループで過ごし、時々交わすのは簡単な会話だけ。

表面的には、少しだけ仲良くなったクラスメイトな感じ。

まさか、キスまでしているとは、誰も思うまい…


たまに、足立からの視線は感じるが、俺は変わらない生活に、少しホッとして過ごしていると、授業中にスマホが振動した。

【好き】

【大好き】

【触れたい】

連投で送られてきた足立からのLINE。

サッとポケットにしまうと、赤面した顔を教科書で隠す。

耐性の無い俺に、イキナリの猛攻撃をしかけてくるとは…イケメンめぇ!足立には、宣言通りだろうけど。

攻撃の一つ一つに、オロオロする俺。


放課後、足立が1人になったトコを捕まえ、階段下へとグイグイ引っ張っていく。


「あのLINE、やめてくれよぉ…授業中、先生の言ってる事が全く頭に入らなかったじゃんか~」

「そんなに意識してくれた?勉強なら、教えるから大丈夫だって」

俺のクレームを全く気にする様子も無く、シレッとしている…

これが、経験値の差か?

人の足音が聞こえ、離れようとする俺の手を引っ張ると…耳元で「照れてるのも可愛いな」と言われた。

そして足立は甘い言葉だけ残して走り去った。


結局、翻弄されているのは、俺だけで。どういう意味で好きかどうか、ハッキリしないと言った俺の言葉なんて、亡きものにする勢いで、まぁ〜ガンガンに押してくる。


その日、困らせたお詫びに、勉強教えてあげるから…って言われ、俺は足立の部屋に来ていた

「あれ?いい匂い、シャワー浴びてきた?オレ、誘われてんのかなぁ…」

俺の首筋に鼻を擦らせた後、クスクスと、余裕の笑みの彼を睨みつける

「もうっ!俺、本当にそういうの経験が無いんだからっ!恥ずかしいって!」

知ってる…って逆に凄く嬉しそうにされる。

学校では、俺が望んだように、距離を取ってくれてる代わりに、2人きりになった時の糖度の高さが、ヤバい。

糖度5割増…砂糖ドバドバ…

俺が溶けたらどうしてくれんだよっ!



甘い空気の中、それでも、ちゃんと勉強は教えてくれ、しかも分かりやすくて、俺が賢くなったかと錯覚を覚える程に、スラスラと問題が解けた。メガネをかけ、真剣に教えてくれる姿は、ちょっとカッコイイとも思った。


「なぁ、今日もメガネだけど…そんなしょっちゅう、コンタクト切らすのか?」

笑いながら揶揄う。


「あー、コレな。実は度がイマイチ合ってないんだよ…七瀬を直視しちゃうと、色々と我慢出来なくなるから…」

メガネを外すと、ブラブラさせてから、かけ直した。

今言われた言葉を頭で反芻した

「我慢…ってさ、あのさぁ…俺に何したいの?」

「言っても良いけど…それ聞いたら…叶えてくれる?」

聞くんじゃなかった!

え、何?そんな色々…ってなに?…

構えながらも、怖いもの見たさで続きを促した俺は、結構チャレンジャー?


「とりあえず…触りたい、かな」

熱い瞳で俺を捕え、彼は指先を向けると、俺の全身を巡った。

男の…しかも、俺の身体なんか、触って楽しいのかなぁ…って思いながらも、ふと浮かんだのは、もしかして、俺も、足立にされる事が…良いって思えたら…自分の気持ちもハッキリ分かるんじゃないかって。

だって普通、友達とかに、触られたりしても、そもそも反応しないと思うし、むしろ、気持ち悪いかも。


俺は、真正直にも、そのまま思った事を伝える。

「もしかしたら…とか、良いの?こんな感じで。試すの嫌じゃない?あと、ストップ!って言ったら止めてよ?」

「あー、んー?嬉しいかな。むしろ、七瀬は止めないかもよ?」

おい待て、大丈夫か、俺。

この美丈夫かつ、恋の玄人さん相手に…ちょっと、お試しなんて言った事を後悔するんじゃないか?

本当に嬉しそうに、じゃ…まぁOKって事だよな!って、自分の脚の間をトントンって叩く。ここに座れって事か…

仕方ない…こうなったら、お任せしてみよう。

ちょこんと、座る…お邪魔しますと言いながら。


後ろから抱きしめられたかと思うと、彼の手のひらは、俺の指先を包み込む。


「怖がらないで…嫌ならちゃんと止めるから」

ジワリジワリと指先から肩、背中…胸に回ったかと思うと…脇腹を滑り…腿へと。ヒャッと声が出た。

合わさる背中から伝わる鼓動が速く、時々耳にかかる吐息は熱く…

彼が、俺に欲情しているのが分かり、つられて熱くなって、欲情がシンクロする。

平静で居られると思っていたのは、最初だけ。

いつの間にか、全身に這う彼の手を受け入れ、なんなら、もっと…って求めている。

身体の奥底から痛みのように上がる切情の訳が分かったのは、自身の下腹部に視線を感じた時。

そう…柔らかなスエットを押し上げる部分が見られている。

こんな、ピッタリとしたスボンを履いてきた事を軽く後悔した。足立の手が…滑り込む…

しかも、イキナリ直に触られ、身体が飛び跳ねた。

止めるタイミングなど無く、あっという間に足立のペースが事が運ぶ。

緩く握られ、上下される動きが布越しに見え、それがまた、なんとも煽情的で、堪らず…甘い声を発してしまう。

嫌悪感どころか、彼の腕に巻きついて握り締め、快楽に堕ちかける俺は、尻臀に当たる足立の滾る物を意識した。


「まっ、待ってっ!」

ビクリと足立の動きが止まった。

「嫌だった?」

熱い息が籠る足立の声。

違う、足立もそのままだとキツイだろうと…男だからこそ、熱く燃えたままで、吐き出す先の無い、この状態は耐え難いと気付いたのだ。


「嫌じゃない…違う。足立のも…ソレ、ツライだろ?」

って、声を振り絞って伝えると。

七瀬は優しいな…って言うと、軽々と俺の身体を反転させた。

向かい合わせになった俺は、足立が汗を滲ませ、淫欲に耐えていたのを知った。


ズボンを押し上げていた場所を足立が解放し、剥き出しになった彼の物を見て、俺は率直にその造形の美しさに見蕩れた。

スウェットは下着と共にズラされ、2人の自身が触れた。

ピタリとくっつけられ更に、足立の大きな手で包み込まれ、擦り合わされる。

どちらのだか分からない雫は溢れ、無音だった室内には、水音が響き渡る。

その音を耳にしてしまうと余計に煽られ身体が震えた。


呆気なく果てた俺に続き、俺の腹の上に、足立も解き放つ。

端正な顔が満足そうに、2人の白濁を混ぜながら、ティッシュで拭き取るのを…俺は、ただ放心状態で見ていた。

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足立と七瀬、オレと俺の物語。 あさぎ いろ @asagibyaku

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