第9話
「ありがとうございました〜。」
受付の人の元気な声を後に、廊下を歩く。
「どうだった空ちゃん?」
小鳥ちゃんのクラスのお化け屋敷から出てきた私に小鳥ちゃんが感想を聞いてくる。
「思ったよりは良かったかも。」
「そうなんだ。廊下からは驚いた声とか一切聞こえなかったから、つまらなかったかと思った。」
「正直不気味な感じで怖がらせるタイプじゃなくて、びっくりさせる感じだったのは残念だったけど、まあ楽しめた。」
「良かった。」
本音を言うと特に期待していなかったが、中の雰囲気などのクオリティは結構良かったと思う。特に最後の8人もの脅かし役が樽から順番に飛び出して来るのは面白かった。7番目と8番目の間に2個ほどダミーの樽を置いてあったのもポイント高かった。
「小鳥ちゃんも入れば良かったのに。」
「私は怖いのはちょっとね〜。次はどこに行こっか?」
「お腹空いたから何か食べよ。」
「じゃあ、タコス出してるところがあるからそこに行ってみよっか。」
△
それから小鳥ちゃんとタコスやりんご飴、焼きそばとか食べてからまたいろんなクラスの出し物を見て周った。射的で遊んだり、演劇を見て楽しんだ。その途中で天文部の部室を見つけた。
「ここは天文部だね。せっかくだし寄っていく?」
「あ〜そうだね。」
天文部といえば確か兄が所属していた部活だ。天文部の部屋のドアは空いていたが遮光カーテンが入り口を覆っていた。何をしてるんだろう?天体観測の結果で発表しているのだろうか。そんな疑問とともに遮光カーテンをくぐり部屋に入ると中は薄暗く椅子がいくつか並んでおりそこに数人座っていた。その人たちはみんな上を見ていたので私も見上げていると天井にたくさんの光の点があった。ああ、なるほどプラネタリウムになってるのか。と納得と関心をした。
「綺麗だね。」
「そうだね。」
小鳥ちゃんはその光景に目を光らせて見ていた。
「気に入ってもらえたかな。」
空いている椅子に座って天井を眺めていると、誰かに話しかけられた。誰だ?
「お邪魔してます、落合先輩。」
「こんにちは。」
「やあ、こんにちは。空ちゃんは久しぶりだね。バーベキュー以来かな。」
バーベキュー……!あの先輩か。そういえばこん感じの人だった気がする。
「天文部はプラネタリウムをやっているですね。」
「兼休憩所という感じかな。」
「あの装置って自作なの?」
「ああそうだよ。と言っても作ったのはもう卒業した先輩方なんだけどね。それを毎年使い回しているんだよ。おかげさまで準備がとても楽だよ。」
すごいなあ。あれ自作なのか。
先輩は少し話して「ゆっくり楽しんでいってくれ。」と言って離れていった。そのまま天井の星を眺めているとふと思い出した。小鳥ちゃん、兄を誘わなくて良いのだろうか、せっかくの文化祭なのに。それとも文化祭は2日あるらしいから、2日目に約束しているのだろうか?しまったな、さっきいらないとか言わずに着いて来させれば良かったな。
「ねえ、小鳥ちゃん。」
「どうしたの?次のところに行く?」
「お兄ちゃんとは周らなくて良いの?さっきお兄ちゃんはいらないって言った私がいうのもなんだけど。今からでも呼ぶ?」
「あ〜大丈夫だよ。今は空ちゃんと文化祭を楽しんでるから気にしなくていいよ。それより次はどこに行こっか?そろそろ体育館で軽音部が演奏するみたいだから行ってみよっか。」
うーん流石に気を使わせちゃったのかな。ちょっと申し訳ない。今度何かしらで埋め合わせできるように頑張るよ。心の中でそう決意しながら小鳥ちゃんと体育館に向かう。
△
軽音部の演奏を楽しんだ後、体育館から出ると空が赤く塗られ始めていた。
「そろそろ帰るよ。」
「そうだね、文化祭もそろそろ終わる時間だしね。明日も来る?」
「明日は家でのんびりしてるよ。小鳥ちゃん、今日はありがとう。またね。」
「またね。車に気をつけてね。」
小鳥ちゃんに手を振り、帰り道を歩く。今日は楽しかったが流石に疲れた。明日はのんびりしよう。
△
家に帰ってからリビングでテレビを見ながら晩御飯を待っていると、兄が帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいま。」
兄がなぜかじっと見つめてきた。なんだろう。
「文化祭楽しかったか?」
「うん、楽しかったよ。」
「そっか……。」
文化祭の感想を聞いた兄は、まだ何か言いたげだったが何も言わず自分の部屋に戻って行った。
なんだったんだ?
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私(桜空):
文化祭を楽しんだ。
桜陸:
空の兄。
帰宅後、空によって小鳥にデートを断られたことを文句を言おうとしたが、文化祭を楽しんだ空を前に言えなくなってしまった。2日目には一緒に周れた。
天宮小鳥:
空の友達。陸の幼馴染。
文化祭を楽しんだ。空が2日目も来るかもしれないと思い予定を開けていたが家でおんびりすると言っていたので陸と周った。
兄の幼馴染がなかなか告白しない 隹京 @Kei_Furutori
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