第8話
喉の渇きで目が覚める。まだ眠っていたいと仕事を放棄する体を動かしながら、枕元に置いてある時計で時間を確認する。9時を少し過ぎた頃だった。平日だったらもう学校に行っている時間だが今日は土曜日なのでいつもより長く寝られた。カーテンを開けると外からは眩しい日差しが差し込んできて空は雲ひとつない快晴だった。
リビングに降りるとテーブルの上には朝ごはんが置いてあった。朝ごはんを食べていると、洗濯物ものを干していたんだろう母がリビングに戻ってきた。
「空、今日は文化祭に行くの?」
「?」
母に言われて思い出す。今日は小鳥ちゃんの高校で文化祭だった。結局行くかどうか決めていないんだった。
「どうしよっかな。」
「まだ迷ってるの。それなら行ってきたらどう。ついでにお兄ちゃんの通ってる高校の見学してきたら。」
「その辺はどうでもいいんだけど。せっかくだし行くか。昼前くらいに出るよ。」
「友達とは一緒に行かないの?」
小鳥ちゃん意外に友達のいない私は母の質問に無言で返答する。というかいい加減無駄な質問をしないでほしい。もう母も私に友達がいないことはわかっているはずだ。それとも私が隠してるだけでいる可能性に賭けてるのか。この質問を受けるたびに遠回しに友達を作れと言われているようで勘弁してほしい。
「1人で行くのは心配だから私もついていこうかしら。」
そんなことを言いだす母に1人で行くと伝える。朝ごはんを食べ終え自分の部屋に戻りスマホを手に取る。とりあえず小鳥ちゃんに昼前に行くことを伝えよう。
△
今日は私の通う高校の文化祭の日。私のクラスの出し物はお化け屋敷っと言っても私は受付で中で脅かし役をやる訳でもないんだけどね。その受付の当番も午前中に3時間ほどやれば終わるから残りの時間は他のクラスの出し物を自由に周れる。この前空ちゃんを誘ってみたけど、あの感じだと来るかは半々だね。あの子は興味が惹かれないととことん無関心だから。それが人間関係にも及んでいるから少し心配だ。私以外の人と遊んでいるところなんて見るどころか聞いたこともない。兄である陸くんですらあまり遊んでいないらしいから。まあ、年頃の兄と妹ならあまり遊ばなくなるのは珍しくない気はするけど。
そんな今日来るかわからない友達のことを考えながら受付でお客さんが来るのを待っている。
「小鳥、今いいか。」
「陸くん、どうしたの?」
「いや、その小鳥の担当は午前中で終わるだろ。で午後に予定あるのかなあって思って。」
「別に特に決めてないよ。受付が終わったら空いてる友達に合流して周ろっかなぁて思ってたけど。」
「じゃあさ、俺も午前で終わるから一緒に周らないか?」
驚いた。まさか陸くんから誘ってくれるなんて。内心その場で踊りだしたくなる気持ちを抑えて返事をする。
「うん!一緒に周ろ!」
その時、ポケットの中でブブッブブッとスマホが振動した。誰かからメッセージが届いたみたいだ。スマホをポケットから取り出しメッセージを確認する。
「確か当番は小鳥の方が早く終わるから先に周っててもいいよ。12時ごろでどこかで待ち合わせを…」
「あっごめん陸くん。用事ができた。」
「えっ!」
「昼前に空ちゃんが来るって!」
△
小鳥ちゃんの通う高校に着いた。結構人が多い。見たところ制服を着たい人以外にも大人や子供が多く来ている。小鳥ちゃんに連絡したところ校門で待っていてと言われたので待っている。ちなみに兄も一緒に周って良いか聞かれたがいらないと答えておいた。しばらく待っていると私を呼ぶ声が聞こえた。
「空ちゃんお待たせ。」
声の聞こえる方を見ると小鳥ちゃんが向かってきていた。ただ後ろに不機嫌そうな兄もいた。
「小鳥ちゃんおはよう。」
「うん、おはよう。」
「ちなみになんでお兄ちゃんもいるの。さっきいらないって注文したのに」
「別に良いだろ。こっからは着いてかないから。」
「あはは……。」
なんでいるんだろう。なんか不機嫌そうだし。
「あっそうだ。お小遣いちょうだい、お兄ちゃん。今あまりなくて。」
「母さんはくれなかったのか?」
「貰ったけど、追加で。」
「…はあ、ほら。」
少し葛藤したようだが諦めたようにお小遣いをくれた。やったー。小鳥ちゃんは隣で苦笑いしていた。
「小鳥ちゃん行こっ。」
「あんまり小鳥に迷惑かけるなよ。」
「大丈夫だよ陸くん。」
まずはどこに連れて行ってもらおうか。やっぱり最初は小鳥ちゃんのクラスのお化け屋敷かな。
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私(桜空):
結局行くことにした。謀らずとも友達と兄の恋路を邪魔した戦犯。
桜陸:
この前の空の意味深なセリフに影響を受けたようで小鳥を文化祭デートに誘ったが空により断られた。
天宮小鳥:
片想い中の相手に誘われたがその妹を優先した。多分陸よリ空の方が好き。一応空から行かないと連絡がこれば陸を誘う予定だった。
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