第7話
夏の暑さがなりを潜め涼しくなってきた頃、小鳥ちゃんと一緒に宿題をやっていた。ある程度終えたところで休憩ついでに喋っていると
「そういえば今月末にうちの高校で文化祭があるけど、空ちゃんも来る?」
文化祭へのお誘いがきた。
「文化祭っていってもいいの?」
「うちのは一般の人も自由に来場できるよ。それに開催日は土日だから小学校も休みでしょ。」
「そうなんだ。小鳥ちゃんは何やるの?」
「私は受付かな。クラスでお化け屋敷やるんだけど空ちゃんこういうの興味ない?ちなみに陸くんはお化け役やるみたいだよ。」
「そっか。」
文化祭か…。小鳥ちゃんが言うなら行ってもいいかなと思うが、小鳥ちゃんとずっと周れるわけじゃないだろうし。人混みは嫌だからなぁ。
「気が向いたら行くよ。」
「じゃあ、気が向いたら教えてね。」
そこで一旦おしゃべりをやめて宿題の続きをする。それにしても文化祭といえばラブコメではかなり重大なイベントのはず。文化祭当日だけでなくそれまでの準備で主人公の中でヒロインたちの好感度が大きく変動しているイメージがある。小鳥ちゃんもこのイベントで兄に何かアプローチを仕掛けるのだろうか?それに他の兄を狙っている人たちもこのイベントで好感度を上げに行くかもしれない。案外告白まで行ったりするかもしれないな。
「小鳥ちゃんっていつお兄ちゃんに告白するの?」
「急にどうしたの?」
小鳥ちゃんが驚いたようにキョトンとしていた。
「いや、文化祭と言うイベントに乗じて告白しないのかなと思って。」
「特に考えてはいないけど。まあ確かにこういうイベントになるとカップルが増えるとは聞くけど、私はしないかな。」
「いい加減してもいいと思うけど。まだしないの。」
「ま、まだ時期尚早というか何というか……。」
小鳥ちゃんの声がか細くなっていく。
「すでに長い付き合いだから今すぐに告白しようが、これから時間をかけようが変わらない気がするけどね。それどころか他の人に取られるリスクが上がるだけだと思うよ。」
「そうは言ってもちょっと決心が…。」
「あれから告白してくることなんてないだろうし。まあ正直他の人に取られても小鳥ちゃんにはもっと良い優良物件が見つかると思うから私はどっちでも良いんだけどね。」
「そこはもっと応援してほしいなあ。あと陸くんはお兄ちゃんなんだからあれとか言わない。」
「何年も応援してたからもう飽きてきちゃったよ。」
「ごめんねええ。」
そう言って小鳥ちゃんが抱きついてくる。この会話も多分何十回と繰り返しているだろう。せめて今年中には何かしらの結末を迎えてほしいと思う、良い悪いどちらにせよ。
それから小鳥ちゃんが帰るのを見送り、リビングでテレビを見て晩御飯ができるのを待っていた。
「ただいま。」
小鳥ちゃんを家まで送っていた兄が帰ってきた。「おかえり」と声をかけ兄の顔を見る。兄は今、誰か好きな人はいるのだろうか?いっそ兄に直球で聞いてみるのも良いかもしれないと思ったが、いないと言われたらうんざりだし、いたとしてもそれが小鳥ちゃんじゃない場合いたたまれないのでこの案は無しにした。ただ一個だけ思いついたことがあった、意味があるかはわからないけど。
「ねえお兄ちゃん。」
「なんだ。」
「さっさと告白したら、誰かに取られる前に。」
兄は目を丸くしていた。兄の説明を求める声を無視して晩御飯の席につく。今日はカレーか。そろそろマンネリして飽きてきたところだ、これで少しは早く終わるといいな。そんなことを思いながらカレーを一口食べた。
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私(桜空):
そろそろ小鳥ちゃんの片想いに飽きてきた。文化祭には気が向いたら行く。
桜陸:
桜の兄。
空から唐突に告白しろと言われ絶賛困惑中。
天宮小鳥:
空の友達。陸の幼馴染。
文化祭に空を誘う。気が向いたら来るだろうなと思っている。
いまだに告白する決心がつかない。実は陸から告白されたいとひっそりと思っている。
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