兆し
化け物と相対する僕とギアの二人。
「ちぃっ!?」
その戦いは僕たち二人であっても楽なものではなかった。
「ずいぶんと多い」
化け物から伸びてくる大量の触手を前に眉をひそめながら僕は自身の手にある二丁の魔法銃にドローンを駆使して敵の触手を打ち落としていく。
「……それに硬い」
そんな僕の横で、渾身の魔法を発動して敵へと苛烈な攻め立てをしているギアが自分に続いて声を上げる。
まったくもってその通りであった。
ギアが圧倒的な火力で化け物を叩いているというのに、化け物はこれっぽちも効いたような様子を見せていなかった。
「どうすればいいんだが」
既に戦闘開始から一時間ほど。
自分の周りには援軍に駆け付けたものの戦いについていけなそうで呆然としている学園の教師だったり、騎士だったりが集まっている。
「んー、どうしようね」
「どうしよっかー」
そんな中で、僕とギアは互いに頭を悩ませながら化け物と相対し続ける。
駆けつけてくれた面々の中で、一人でも何か情報を持っている人がいないかと期待していたのだけど……今のところ、誰もいなさそうだ。
「……うーん」
僕はありとあらゆる機材、ありとあらゆる魔法を駆使して化け物を観察しながら頭を悩まし続ける。
非常に、非常に難しい難題だ。
「っとと」
……。
…………。
暴れている化け物と戦いながら観察するの、マジでむずいってぇ!
本当に、ちょっと嫌になってくるんだけど。
「……んっ?」
そんなことを思いながら戦っていた中。
僕は自分の視界の端にとあるものが映り、思わず足を止める。
「ちょっ!?」
そんな風にうっかりと足を止めてしまった僕。
「……ぁ」
これまで僕はずっと魔物と向かいあい、触手を打ち落とすと共に、それでも打ち落としきれなかった触手は足でよけていた。
そんな中で僕が足を止めてしまえば。
「ぎゃふんっ!?」
化け物からの触手をよけることが出来なくなってしまう。
思わず足を止めたすきを狙った振るわれた化け物の触手を食らい、僕はそのまま吹き飛ばされてしまうのだった。
劣等紋の天才魔法使い、自身を見下す周りを見返してざまぁしながら最強へと至る リヒト @ninnjyasuraimu
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