最終話
恐るべき敵を討った寛二は、伊織を乗せてパトカーを走らせた。途中、燃やされた防風林を確認に寄ったが、すでに消火済みだった。林の面積が小さく、周囲に可燃物が少なかったことから、大事に至る前に鎮火できたのだろう。もちろん、消火に出向いたであろう島の消防団には感謝しかない。
「伊織、母さんもお前の顔見たいと思うぞ」
「えー、ボクってやっぱ人気者?」
運転中だから、後部座席の息子の表情はわからない。けど、いつもの如くおどけた風に笑っているんだろう。
「お前な……ところで、こっちにはいつまでいるんだ?」
「一週間後の船で帰る予定なんだけど、それまではタダ飯食べさせてもらおっかなー。あっ、そうだ、お土産も渡さなきゃね」
「お土産?」
「そ。マレーシアで買ったサソリ酒でさ。父さんなら気に入ると思うよー?」
「ゲッ、サソリがまんま漬かってるヤツかそれ」
「そうだけど、ダメ?」
「そのまんま虫が漬かってるのはなぁ……グロテスクそうっていうか」
「あー、そういえば家でゴキ出たときビビってたね」
昔っから脚のいっぱいある生き物苦手なんだよ、と、寛二は笑いながら言った。
ペトロ・シャーク ~~原油怪獣とイルカロボ~~ 武州人也 @hagachi-hm
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