第13話 一番の課題
7月7日 午前2時頃 緊急国際会場
休憩をしてから6時間後、会議は続き世界中では、逃げ場所の確保 食料と設備の準備や点検を各国政府組織主体で進められていた。
しかし、何もかもが圧倒的に足りない。このままでは、人類の3割も2週間以上生き続けられない。これが人類の限界だった。
「あらかたの地域の区分や避難の準備は済んだな。次は情報の広め方と伝え方か。」
ひと段落ついた所でそんな独り言が何処からか聞こえた。
広め方はいくつかある。最も効率が良いのはやはりインターネットやテレビを使った方法だろう。
しかし、問題はその内容だ。伝え方を間違えればパニックだけを引き起こして今までの14時間以上かけた会議と準備が無駄になり助かる命が一気に減る。
当然、この問題もそれぞれ意見を出し合い最適解を探すのだが、議論は難航していた。
「さて、広げ方はインターネットやテレビでいいだろう。しかし、内容はどうする?」
「一番難しい所だな…伝えすぎても伝えなさすぎても必要以上に不安を煽ってしまう。」
「大事な要点だけ伝えればいいだろう?あの生物のことと、逃げる理由と、逃げ場所だけを。」
「それもいいが、誰にでも分かるよう伝えなければいけないぞ?それに、このことを信じてもらえなければなんの意味もない。」
「なら、海上やパプアニューギニアの動画を見せればいいではないか。」
「ダメだ!あんなの見せたら余計パニックになる。もし見せるとしても全てを伝えたあとだ!」
「多少のパニックは仕方ないだろう、あれを知ってパニックにならない奴はいない。」
「だいたいあんなの伝えてどーする?北極や南極、シェルターや高い山の山頂付近などは面積も食料も限られてるんだぞ!」
「例えそうでも、私は私の国民に伝えたい。最後に大切な人と一緒に居たいと私は思います。だから、私は私と同じ考えの国民の為に伝えるべきだと思います!」
「俺も同意見だ。もしこのまま何も伝えなければ助かる命まで犠牲にしてしまうんだ。
それに、人間は生きようとする力が強い。我々の予想を超えてもっと多くの命が2週間後地上にあるかも知れないぜ?だから俺は、人間の力を信じたい。」
「その考えは素晴らしいよ。私もそうであって欲しい。しかし、もしそうなったとしたら、多くの人間は何も無い地球で餓死しなくてはいけなくなる。つまり我々に残された道は「滅びる」これだけだよ、それならいっそこのまま…」
「何弱音吐いてんだ!俺たちはまだ生きてるんだ!それに、何かする時間だってあるはず、考えることをやめるな!」
「なら何が出来ると言うんだ?あれが人類の実力なんだよ。精神力で解決できるのは、全力が通じる問題だけなんだよ。現実を見ろ!」
人類の全力が通じない問題?確かに全人類を救うならこの問題は解決しない。
しかし、もし数人なら?
道徳を尊重するなら全人類を平等に救うべきだが、人類の絶滅を防ぎより良い人類の未来を山頂するなら、優秀な人間を選別して設備の整ったシェルターに2週間住まわすのが正しい。
もし地上が生き物の住めない場所になってしまったとしても人類の全力を集結すれば一生地下のシェルターで生かすこともできる。
方法はこうだ。シェルター内の空気は、食料にも使えるサトウキビやトウモロコシを使えば常に酸素で満たしてくれる。
魚と野菜は前回話したように一緒に育てればいい。
動物性タンパク質や必須アミノ酸などを同時に取るため蚕(カイコ)の幼虫を育てストックしておく。
これだけあれば食料はシェルター内で地産地消できる。
施設内の電気は太陽光や風力発電でまかなえばいい。
しかし、一番大きな問題は水分をどおするかだ。植物を育てるにも、魚を育てるにも、蚕を育てるにも水がいる。そして何より人がそれを飲まないと死んでしまう。
地球が正常なら川から取ればいいがいまの地球は謎の生物に汚染されていて汲み出せない。新鮮な水をどうやって確保するか?
2週間だけなら水を保管しておけば良い。
しかし、2週間後の地球は安全なのだろうか?
もしダメだったら?何ヶ月や数年避難しておかないといけなかったら?液体水素と液体酸素を使って水を作り出す?それか、北極や南極で暮らす?
助ける人数を制御すればそれも可能だろう。
しかし、人間には情がある、家族もいる、第一、人が一番助けたいのは自分たちやその周りである。
そんな状態で優秀な人間だけを選別して、その人たちだけを集つめシェルターに入れることが本当に出来るだろうか?
選ばれた人たちはきっと家族や恋人を一緒に連れて行きたいと言う。そうなれば生き残れる優秀な人が減ってしまう。
だから全人類を救うのだ!だって本当は優秀な人間より家族を救いたい、ついでにあの人も、それが無理ならせめてあの人達だけでも。それが全員の願い。
それを叶えたいから協力している。だから人類全てが対象になった。
もし、1人でも抜け駆けしたら大切なあの人を救えないから。
会場中の全ての人に大切な人がいる。その人のために協力した。頑張った。でも分かったのはこの現実そして、人類の限界。
全ての人が諦めかけた時、ある男達が動きだした。
永命 菊千代 @Tyabutyabu
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