最終話


 5月。


 大学生になってから、私と章一くんとのやり取りはSNSだけで細々と続いていた。

 退院した彼は、まだ実家で休養中。記憶は早く戻ってくれないと困るけど、趣味三昧の暮らしは失いたくない……とかなんとか、先週くらいに呟いていたっけ。


 午後の講義を終えると、私は図書館に寄るからと言って友達と別れた。

 緑が多いキャンパスは、風が吹くと爽やかな香りがする。


 “ピロン”とスマホの着信音が鳴る。どうせサークルの事務連絡だろう。

 面倒だなと思いつつ、ちらりと横目で通知を確認する。


 その瞬間。

 息が止まり、心臓が跳ねて、私は勢いよく走り出した。


 スマホを握りしめ、ダッシュで駅に向かう。

 今ならどこまででも走れそうだ。


 返事なんてしない。直接伝えたいから。

「友達とはいえ女子を誘うなら、もっと違う場所があるだろバカ」、って。




『今度の週末、オレメロのイベント一緒に行かない?』




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初恋のやりなおし @Tsuduki-S

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