もののふ令嬢、血煙に舞う
「参りましょう」
寄り添ったエフェット殿が、静かにわしの手を取る。坊には
幼いながらも
「
「お任せください」
初めて
思った以上の傑物じゃの。齢の数を超える敵を屠ったとなれば、肝も据わるか。
公爵邸の前で、巨大な
「起動するのは、
坊はそういって、
「ときに坊、ぬし
「
“だけ”といいつつ、その身に満ち
いや、己を縛っていた
「イデア嬢。ここから先は、目当ての者だけを?」
「立ちふさがる者すべてをじゃ」
「はいッ♪」
目を輝かせた坊を懐で横抱きにして、わしは公爵邸の柵をひょいと越える。高さは三
「とまれ!」
わしはエフェット殿を下ろすと、警告を無視して歩み寄る。
迎撃用の魔法陣こそ止めたが、身を隠しもせず正面から乗り込んでは見つかるのも当然。そんなものは承知の上じゃ。
「敵襲!」
ぞろぞろと庭先に集まってきたのは、軽甲冑を着込んだ魔導兵たち。青黒く鈍い光は帝国製の聖銀鋼か。手には戦闘用の
その数、七。相手にとって不足はないが、邸内にいるであろう使者に逃げる
「わたしは左を」
「うむ」
短くいって身を沈めた瞬間、視界の隅から坊の姿が消えた。
ゴゴ、ゴイイィンッ!
鐘でも打つような連続音がしたかと思えば、左におった魔導兵三名が血反吐を吐いて崩れ落ちる。ひしゃげておるのは甲冑だけではない。転がったまま動かんところを見ると中身もじゃな。
呆気に取られたわしの隙を狙って、右手の集団が
「ふ、びゅッ」
秘剣“無刀”の刃を受け、残る魔導兵たちがバラバラに切り刻まれて転がる。そのまま屋敷の玄関までくると、なかで駆け回る気配がした。
窓に明かりが灯り、いくつかの場所で魔力が高まる。
「帝国の
あの魔法、北部の戦場で見た“【
「仕留めましょうか」
懐の
自分が先にとわしに断り、エフェット殿が扉へと向かう。武器を片手に飛び出してきた男たちは次々に殴りつけられ、右へ左へと跳ね飛ばされて転がる。
開いたままの扉から、わしらは邸内に入った。吹き抜けの上階で、隠れながら身構えている気配がある。
「辺境伯家長子、イデア・シンティリオ。逆賊カプリチオに、宣戦を布告いたす!」
「クオーレ・ぺスカ・マジーアの子、エフェット。
一度しんと静まり返った後で、上階から耳障りな金切り音が響いてきた。あまりにも場違いなそれを聞いて、わしとエフェット殿は思わず顔を見合わせる。
「……ふむ。あれは……」
「楽器、でしょうか?」
もののふ令嬢、王子を娶る! ――魔法無能者と虐げられていた少年王子は、魔法王国の至宝でした―― 石和¥「ブラックマーケットでした」 @surfista
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