スフィア

夢月みつき

第1話「フレア城のプリンセス」

 ☆登場人物紹介☆


 スフィア=フレア

 フレア王国のプリンセスで主人公。幼い頃から、同じ悪夢を見続けている。


 スフィアAIイメージイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093074704857810


 アルラ

 幼い頃からのスフィア付きの女性の側仕え。


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 フードを深くかぶった一人の女性が黒くまがまがしい男達に追われている。

 腕には、赤ん坊がしっかりと抱かれていた。ここからこの物語は始まる。

 しかし女性は、黒き男に連れ去られ、母親から、引き離された赤ん坊は哀れにもその場に置き去りにされた。赤ん坊が火の付いたように泣いている。






 ☆☆





 そのまがまがしく、切ない悪夢から、逃れるように少女は目を開け、ベッドから飛び起きた。

 天蓋てんがい付きのベッドに、様々な家具に囲まれたフレア城の内部にある広い部屋。



 レースとフリルの付いた、水色のナイトドレスに長い薄紫の髪、大きなアーモンド型の丸い緑色の瞳。

 唇は、艶やかでふっくらとしていて、まるで桜の花びらのよう、可憐な彼女は短く浅い息を何度も吐き、目尻には涙がたくさん溜まっていた。



 その時、大きな木製のドアが外側からノックされた。

 彼女がドアの方を見ると、外側から声が掛かった。

「姫様、スフィア様、おはようございます。入ってもよろしいでしょうか?」

 女性側仕えのアルラの落ち着いた声がする。



「いいわよ、アルラ入って」

 アルラがドアを開けて、部屋の中へ入って来た。

 黒のメイド服を着ているアルラは、スフィアの不安そうな顔を見て、眉尻を下げて心配している。



「また、あの悪夢を見られたのですか……」

「うん、そうなの。最近また、みるようになって」

「うん……スフィア姫様が十歳の御歳おんとしから、見られるようになって。十六歳の今まで続いている。これは、夢占い師に一度、視て頂いた方が良いかもしれませんね」



 その時、突如城内の兵士達がざわつき始めた。

「城の入り口に行き倒れていた、旅の青年が運び込まれたぞ!」

 


 アルラは、スフィアに言う。

「姫様は、お部屋にいらしてください。私が見て参ります」

「いいえ、私も行くわ!私だって、この城の姫なんだから」

 スフィアとアルラは、青年が運び込まれたと思われる医務室いむしつへと向かった。

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