変な痴漢
おもながゆりこ
第1話
昔、使っている駅で電車を待っていた時の事。
ホームに、若い割に、髪を変な分け方(てっぺんの頭皮を隠す為に横の髪を伸ばし、貼り付けるようにしている)をした男がいるのが、何となく視界に入りました。
電車に乗ってしばらくすると、私の背中に何か熱いものが当たっています。
最初、誰かの作りたてのお弁当が当たっているのかな、と思ったのです。
なんとなく振り返ると、その髪を変な分け方した若い男が、自分の手の甲を私の背中にじっと押し当てていました。
なんやコイツ、とキッと睨むと、その男は自分が持っていたリュックを、まるで子犬でも撫でるかのようにナデナデしています。
自分はそんな事(チカン)をしないというアピールに見えました。
次の停車駅で車両を変わり、さあこれで安心、と思ったら、また背中に熱いものが当たります。
え、まさか、と思い振り返ると、なんとその男がまた私の背中に自分の手の甲を押し当てていたのです。
物凄くびっくりして、唖然としました。
その男はまた自分のリュックを子犬のようにナデナデしています。
自分はチカンなどしない、とアピールしているのです。
コイツ本物の変態だ、と恐ろしくなり、また次の停車駅で車両を変わろうとした所、
その男も車両を降り、私の方に、ととと、と走って来るのが見えました。
テメェ、とキッと睨むと、私から逃げるように別の車両にポンと飛び乗りました。
ああ気が弱いんだな、と思いながら別の車両に乗り、しばらくしてから何となく後ろを見て驚愕しました。
何と、その男がまた私の真後ろにいたのです。
手を押し付けてはいなかったものの。
私が呆然と見ていると、また自分のリュックを子犬のようにナデナデしています。
もはや車両を変わっても無駄だと思い、かと言って触られていないからチカンですと声を上げる訳にもいかず、
目的駅まで、ただただあきれて見ておりました。
痴漢はみんな変だけど、その男は特別に、格別に、理解不能なくらい変でした。
私はそれから電車を使う時、必ず凛々しく、いかにも強そうに、キリリとした佇まいで乗るようになりました。
私は強いのよ。痴漢なんてしようものならただじゃ済まなくってよ、というアピールです。
痴漢って結局気が弱いんですよね。
ぼーっとしている時にはやられるけど、強そうにしているとやられませんから。
痴漢も相手を見ているのでしょう。
それからはそういう不快な思いをする事はなくなりました。
めでたし、めでたし。
皆さんも試してみてくださいね。
変な痴漢 おもながゆりこ @omonaga
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ブーブー娘/おもながゆりこ
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます