私は悪魔でメイドですから。私は親友を守る悪魔になった。

典陽(てんよう)

私はあなたの悪魔でメイドです。

これは小学校6年生の時の話である。


当時、『黒執事』という漫画がマイブームであった。


この漫画は主人公が悪魔と魂の譲渡を引き換えに契約し、悪魔が執事として主人公の契約内容、命令を実行するというものだ。


私はこの悪魔に強い関心を持った。

整った顔、魔法のような術を使い、主人を守る。

特に惹かれたのは両手を後ろに挙げ、高速で主人の元へ駆けつけることだ。


小学生の私は厨二心がくすぐられた。


当時、私には大親友がいた。

Sちゃんだ。学校では友達がいなかったが、塾で仲良くしていた唯一の大親友である。

私はSちゃんの執事、、、

いや、女の子だからメイドとして彼女を守る!

そして、私は悪魔だ。私には底知れぬ力がある。守り切り、彼女の魂は私の物にする!

と心に誓った。


私が通っていた塾は小学校から遠い塾で近所ではSちゃんと会うことは無かった。


それが私の厨二心を暴走させたのかもしれない。

私は学校が終わると家まで両手を後ろに上げ、全力疾走し、

「今すぐ向かいます。ご安心ください。」

「あなたには私の声が聞こえているんでしょ?」

などと大声で言いながら下校していた。


塾で週に2回は会っていたSちゃんにはメイドらしく一歩下がり、護衛するような形で振る舞っていた。


Sちゃん「腕組んで帰ろ〜!」


私「そんな、、、。まだそのレベルにはなっておりません。」


Sちゃん「何で敬語?嫌いになった?」


私「いや、寧ろ好きでたまりません(ペロリ)」


Sちゃん「なら良かった〜!」


のような不思議な会話が繰り広げられていた。



そんな日々が続き、いつもの様に腕を後ろに挙げ、主人に対しての言葉を言いながら全力疾走していると、


道路の向かいに下校する2つの影が見えた。


そんなものどうでも良い。

私には主人を守る使命がある。

走らなければ!


と思っていると、後ろから大声で私を呼ぶ声がした。

ハッと我に帰り、いつもの学校での振る舞いで後ろを見ると、Sちゃんとクラスメイト(Aちゃんとする)が居た。


呼ばれたので、横断歩道を渡り、2人に近づいた。


私「Sちゃん何してるの?」


クラスメイトも居た為、学校モードで話しかけた。


Sちゃん「Aちゃんの家に遊びに行くの〜!典陽ちゃんもどう?Aちゃんいいかな?」


Aちゃん「、、、。」


Sちゃん「どうしたの?」


Aちゃん「いや、Sちゃんと遊びたいな。」


Sちゃん「なんで?典陽ちゃんもいいじゃん!」


Aちゃん「だって典陽ちゃん怖いんだもん。帰る時いつも腕上げて何か言って走ってるし。国語のノートに星(五芒星)書いて中にSって書いてたりしてるんだよ?怖いから嫌だ。」


Sちゃん「え、、、?典陽ちゃん何してるの?」


私「いや、私スイミングしてるし練習!星書いたりしてるのもお守り!Sちゃん大事な友達だから、悪い事起こりませんようにって!」


Sちゃん「私大丈夫だよ!ありがとう!」


Aちゃん「典陽ちゃんはまた今度遊ぼう。」


Sちゃん「典陽ちゃん、また塾で会おうね!」


それから私はSちゃんと腕を組んで帰るようになった。







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私は悪魔でメイドですから。私は親友を守る悪魔になった。 典陽(てんよう) @tenchan_1536

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